世界的音楽家・坂本龍一の若き日の姿を捉えたドキュメンタリー『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』4Kレストア版の公開を記念し、2月8日、109シネマズプレミアム新宿にて上映後トークイベントが開催された。登壇したのは音楽家の岡村靖幸、音楽プロデューサーの藤原ヒロシ。80年代から現在まで“東京”のカルチャーを牽引してきた二人が、本作と坂本龍一の魅力について熱く語った。

本作は、1980年代の東京を舞台に、当時32歳だった坂本龍一の創作、思想、そして日常を記録した貴重なドキュメンタリー。幼少期の記憶、変わりゆく社会と文化、音楽への哲学などが語られ、約40年の時を経て4Kレストア版として蘇った。
イベントで岡村は本作について「すごく貴重な映像」と語り、かつてDVD版で鑑賞した経験を振り返りながら、「レコーディング風景や当時の東京の空気が生々しく残っていて、今だったらOKが出るのかなと思うような瞬間まで映っている。昔から面白いと思っていました」とコメント。坂本の音楽や日常がそのままフィルムに刻まれている点に強い魅力を感じたという。
さらに岡村は、坂本の創作哲学にも言及。「坂本さんは、予想される部分と、それを裏切る部分のバランスで音楽ができていると語っていた。その言葉は本当に深い。分かりやすさと難しさ、その絶妙なバランスを考えるのは、物を作る人なら誰もが向き合うこと」と語り、坂本の音楽に宿る革新性と普遍性を称えた。
また、テクノロジーと音楽の関係についても議論が展開され、岡村は「フェアライトとか、最新のテクノロジーとか。ああいうコンピューターにいつも目を光らせていた坂本さんが、今の時代に生きていたら、どういう風にAIと対決していたのか、と考えると興味深いです」と発言。「坂本さんは、進化する技術の中で生まれるエラーやノイズにこそ創造の可能性を見ていた。その考え方は今の時代にも通じる」と語った。
さらに坂本の人間的魅力について岡村は「一貫して思うのは“ルックスがいい”ということ。耽美的な表現も似合い、実験的なこともできる。カッコよさと革新性を兼ね備えた存在だった」と独自の視点で語り、会場を沸かせた。
作品の見どころについて岡村は「坂本さんは映画の中で重要な言葉をたくさん残している。何度も観ることで、その言葉の意味や時代背景が浮かび上がってくる」とコメント。「坂本さんの言葉を追いながら観ると、当時の時代や心境が見えてくる」と観客に呼びかけた。
藤原も「坂本さんの言葉の中には、今につながる発見がある。違う視点で観ることで新しいものが見えてくる」と語り、本作が時代を越えて響く作品であることを強調した。
80年代の東京の風景とともに、音楽家・坂本龍一の思想と創作の源泉を記録した本作。過去と現在をつなぐ“音と言葉”のドキュメントとして、多くの観客の心に響き続けている。





■作品情報
『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』4Kレストア版
監督:エリザベス・レナード
出演:坂本龍一、矢野顕子、細野晴臣、高橋幸宏
撮影:ジャック・パマール 編集:鈴木マキコ
音楽:坂本龍一 録音:ジャン・クロード・ブリッソン
プロデューサー:ミュリエル・ロゼ
制作:INA、KAB America Inc.、KAB Inc.
1985年/62分/フランス・日本/G
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
全国順次公開中
©Elizabeth Lennard

