のん「かえるくんは救いになる役。責任重大だけど頑張ってみようと思った」声の芝居で挑んだ“再生の物語”

作家・村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』を原作にした映画『アフター・ザ・クエイク』が、現在全国公開中。10月4日にはテアトル新宿にて公開記念舞台挨拶が行われ、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市、のん、井上剛監督が登壇した。満員御礼の会場には、作品への期待と熱気が満ちた。

本作は、1995年から2025年の30年を通して、4人の人物が交錯する希望の物語。阪神・淡路大震災をきっかけに制作されたドラマ『その街のこども 劇場版』などで知られる井上剛監督がメガホンを取った。

井上監督は、制作の経緯をこう語る。「今年は阪神・淡路大震災から30年。過去に震災を題材に作品を作ったことがあり、もう一度今の時代に何かできないかと考えたとき、プロデューサーからこの原作を紹介された。以前から参考にしていた作品だったので、強い縁を感じました」とコメント。

家出少女・順子を演じた鳴海唯は、海辺での撮影を振り返りながら「本物の焚火での撮影だったので、風向きが変わるたびにカメラポジションを調整していました。自然には敵わないなと痛感しました」と笑顔で語った。

渡辺大知は、“神の子ども”として育てられた青年・善也役を演じる。プライベートでも「兄貴」と慕う渋川清彦との初共演に、「現代パートで対峙したときに、30年の重みを背負っている渋川さんの姿に圧倒されました。まるでタイムスリップしてきたかのようで、“さすが兄貴だな”と思いました」と感慨深げに語った。

“かえるくん”と共演した佐藤浩市は、「最初に監督からもらった台本が意味不明で(笑)。でも原作を読んでようやく“なるほど”と腑に落ちた」と笑いを誘う。さらに、声を担当したのんの演技については「のんさん自身が“これではない”と試行錯誤しながら、かえるくん=のんになっていた。頑張ったなと思って、凄く良かった」と絶賛した。

のんは“かえるくん”の声を務め、「かえる役は初めてだったので、どんな声になるのかと最初はびっくりしました。原作を読んで“かえるくんは救いになる役”だと感じて、責任重大だけど頑張ってみようと思いました」と笑顔。

連続テレビ小説『あまちゃん』で井上監督とタッグを組んだ経験にも触れ、「朝ドラでとてもお世話になったので、安心して飛び込めました。井上ワールドは健在で、軽快に明るく演出してくれたので、楽しくアフレコできました」と信頼をにじませた。

イベント終盤には、主演の岡田将生からVTRメッセージも到着。「観た人の数だけ解釈が分かれる作品だと思います。村上春樹さんの唯一無二の世界観を、ぜひ最後まで楽しんでください」と呼びかけ、会場からは大きな拍手が送られた。

最後に佐藤浩市が「再生の物語なのか、蘇生の物語なのか。ぜひ皆さん自身の心の中で感じ取ってほしい」と語り、井上監督も「4つの時代を通して描いた30年の日本。その間やその先を想像しながら、自分の物語を重ねて観てほしい」とメッセージを締めくくった。

■作品情報
『アフター・ザ・クエイク』
出演:岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市
   橋本愛、唐田えりか、吹越満、黒崎煌代、黒川想矢、津田寛治
   井川遥、渋川清彦、のん、錦戸亮、堤真一
監督:井上剛
脚本:大江崇允
音楽:大友良英
原作:村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)
配給・宣伝:ビターズ・エンド
公開:テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開中

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