第173回直木三十五賞ノミネート作家・塩田武士の小説『存在のすべてを』(朝日新聞出版刊)が、瀬々敬久監督によって映画化されることが決定した。主演は第45回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた西島秀俊。『冷血の罠』(1998)以来、約27年ぶりに両者がタッグを組む重厚なミステリー大作として、2027年に全国公開される。
1991年に発生し未解決のまま時効を迎えた「二児同時誘拐事件」。一人の児童は無事に保護されたものの、もう一人は行方不明のまま。事件から3年後、忽然と祖父母宅に現れたその子どもは、空白の年月について一切を語ろうとしなかった。
それから30年後。当時事件を取材していた新聞記者・門田次郎(西島秀俊)は、旧知の刑事の死をきっかけに再び事件を追うことに。果たして「失われた3年間」に隠された真実とは何なのか。物語は、時を超えて解き明かされる人間の業と深い闇に迫っていく。
主演の西島秀俊は、脚本を読んだ印象について次のように語る。「二児同時誘拐事件をめぐる手に汗を握るサスペンスと重厚な人間ドラマに感動しました。観客の皆さんに心から楽しんでいただける作品になるよう、心を込めて演じたいと思います。」また、瀬々監督との再タッグについても「時代の空気や土地から匂い立つ気配、そして人間の業を深く描かれてきた監督と27年ぶりにご一緒できるのは本当に楽しみです」と期待を寄せた。
監督を務める瀬々敬久は、本作の映画化を「すこぶる難儀であり、大いなる挑戦になる仕事」と表現しつつ、こう意気込みを明かす。「『存在のすべてを』は現実の場所に足を運び、そこでの空気を直に感じて書き上げられた小説。そのリアリティを映画でどう表現できるか、大きな挑戦だと思っています。主演の西島秀俊さんとは約30年ぶりの映画作り。再び彼の精神に出会えることを楽しみにしています。」そして、「『存在のすべてを』、このタイトルの重さに恥じない映画を、送り届けたい」と強い覚悟を示した。
原作小説は「本の雑誌」2023年度ベスト10で第1位、2024年本屋大賞ノミネート、第9回渡辺淳一文学賞を受賞するなど高い評価を獲得。リアルな取材をもとに描かれたサスペンスは、多くの読者を魅了している。
瀬々監督はこれまで『64-ロクヨン-』(2016)、『護られなかった者たちへ』(2021)といった社会派ミステリーから、『糸』(2020)、『ラーゲリより愛をこめて』(2021)などの感動作まで幅広く手掛け、日本映画界を代表する存在として知られる。そんな監督と日本を代表する俳優・西島が挑む本作は、東映とテレビ朝日の共同製作で贈られる。
2025年8月下旬にクランクインを予定しており、今後のキャスト発表にも大きな注目が集まりそうだ。
■作品情報
タイトル:存在のすべてを
監督:瀬々敬久
出演:西島秀俊 ほか
原作:塩田武士「存在のすべてを」(朝日新聞出版刊)
公開:2027年 全国公開
配給:東映
Ⓒ2027「存在のすべてを」製作委員会 Ⓒ塩田武士/朝日新聞出版