監督・根岸吉太郎×脚本・田中陽造、2人の巨匠の16年ぶりのタッグに、女優・広瀬すずが共鳴し、ひとりの女とふたりの男の出口のない三角関係と壮絶な青春を描く『ゆきてかへらぬ』が、2025年2月21日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルが披露された。
本作は、大正時代を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春を描いた作品。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、のちに不世出の天才詩人と呼ばれることになる青年、中原中也(木戸大聖)と出逢う。どこか虚勢を張り合う2人は、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。その後東京に引っ越した2人の元を、中也の友人で、のちに日本を代表することになる文芸評論家、小林秀雄(岡田将生)が訪ねてくる。偶然ともいえるその出逢いが、やがて3人の運命を狂わせていく。
予告編は、冒頭から広瀬演じる駆け出しの女優・長谷川泰子が「惚れたら、女は身体ごと惚れるのよ」と木戸演じる中原中也と岡田演じる小林秀雄の心を翻弄する妖艶な表情が映し出される。「俺とお前は、離れたら壊れちゃうんだよ」と泰子に切なげに訴える様子にまだ幼さが垣間見える不世出の天才詩人・中也、「君という女は、本当においしそうだ」と成熟した大人の色気を漂わせるのは、のちに“知の巨人”と呼ばれる文芸評論家・小林。運命に導かれるように“出逢ってしまった”3人。踊り狂ったダンスホール、夜の遊園地、手を取り合い滑ったローラースケート、刹那的な青春を謳歌する3人の煌びやかで歪な関係性が垣間見える。後半では、次第に狂気を帯びながら苦悩し、執筆と格闘する中也に対し「全生活を上げて恋をする人もいるわ!」と感情剥き出しに愛を吠える泰子。激しくケンカをする中也と泰子を仲裁する小林、求め合う小林と泰子。そして迫りくる電車を前に虚ろな表情で立ち尽くす中也など、劇的な展開にひと時も目が離せない予告編となっている。果たして、この“3つの愛の行き着くそこ”とは?
ポスタービジュアルでは、泰子、中也、小林が同じダンスフロアに佇みつつも、それぞれの目線が重なることはなく、3人の歪な関係を表現しているかのよう。「純情なのか 純愛なのか 3つの愛の、行き着くそこ」というキャッチコピーが、濃密な愛の物語を予感させる。
主題歌は長編映画の主題歌を担当するのは初となる新進気鋭のシンガーソングライター・キタニタツヤが本作のために書き下ろした新曲「ユーモア」に決定。中原中也の文学に陶酔していたというキタニが愛とリスペクトをこめて制作した楽曲となっており、予告編でもその一部が初披露となった。主題歌を聞いた広瀬は「主題歌が始まった瞬間は映画の余韻が残りつつ、後半は違う世界観でちょっと面白いバランス感の楽曲で素敵だなと思いました」、木戸は「3人のキャラクターのどの人を歌詞の主人公においたとしても当てはまるような、すごく切なさもあり、ずっと聴いていられる、何回もリピートして聴いていられるような素敵な曲でした」、岡田は「心地よいリズムで歌詞もすっと入ってきますし、改めて歌詞を見て聴くのと、また理解を深めてからこの曲を聴くのでは(印象が)変わるので、聞くときは歌詞を読んでみてから聞いてもらったら嬉しいなと思います」とコメントしている。
■キタニタツヤ コメント
詩を書くということは、意味なくただそこにあるだけの現実をあえてユーモラスに捉えて解釈し、言葉というフォーマットで出力しなおす営みだと思っています。単に「面白おかしく」という意味ではなく、ありていでない眼差しを向けることによって現実に隙を見出す、何らかの安らぎの余地を加えるという意味でのユーモア。加えて、人は永遠ではあり得ないのに反して言葉は永遠になり得ます。残された言葉は他者の心を撫で続ける。現代に生きる私はそういうふうに中原中也の詩に触れてきましたし、泰子もそうだったのかもしれません。「ゆきてかへらぬ」ラストシーンでの泰子と小林にとって中也の詩はどう響いていたんだろう。また劇場を後にする私たちにとって「ゆきてかへらぬ」という映画そのものはどう響いていくのだろう。そうしたことを考えながら歌を作りました。
『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督:根岸吉太郎
脚本:田中陽造
主題歌:キタニタツヤ「ユーモア」
主演:広瀬すず 木戸大聖 岡田将生 田中俊介 トータス松本 瀧内公美 草刈民代 カトウシンスケ 藤間爽子 柄本佑
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子は、まだ学生だった中原中也と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める批評家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。
©︎2025 映画「ゆきてかへらぬ」製作委員会