LGBTQを描き、公開1週間前に上映禁止に!ノーベル平和賞受賞者の声明で撤回された『ジョイランド わたしの願い』予告編

カンヌ国際映画祭で「ある視点」審査員賞とクィア・パルム賞を受賞、さらにパキスタン映画として初めてアカデミー賞の最終選考に残り、2023年インディペンデント・スピリット賞外国映画賞など18賞受賞、19賞ノミネート、世界で旋風を巻き起こした『ジョイランド わたしの願い』が、10月18日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルが披露された。

本作はパキスタンの新鋭サーイム・サーディク監督による長編デビュー作。伝統的な価値観に縛られる若き夫婦が、そこから解放されて自分らしく自由に生きたいという願いの間で、揺れ動く姿が繊細に描かれる。

辛口批評サイト「ロッテン・トマト」でも98%(批評家スコア/7月6日時点)の支持を受け、フランスやアメリカ、イギリスなどでも大ヒットを記録。ところが本国では少数の保守系団体から「LGBTQ+や、彼らとの恋愛を美化して描いた」ことが「社会的価値観や道徳基準にそぐわない非常に不快な内容が含まれており、“品位と道徳”の規範に明らかに反する」と反発を受ける。その圧力に屈した本国政府により、公開1週間前に上映禁止命令が出されるという事態に見舞われる。しかし監督や出演者らの抗議活動に加え、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイやパキスタン系イギリス人の俳優リズ・アーメッドらから支援の声が上がり、禁止令は撤回。逆境を乗り越えて、本国での上映が実現したことでも注目された。

予告編は、マララ・ユスフザイ(エグゼクティブ・プロデューサー/ノーベル平和賞受賞者)のコメント「世界中の共感を呼んでいる本作をサポートできることを誇りに思います」というコメントから始まる。「貧しいなりに尊厳は守ってきた」というラナ家の家長が、失業中である息子ハイダルに「子供はできないのか?」と男孫を催促するシーンから、仕事に誇りを持っている妻ムムターズが活写される。ある日ハイダルは友人にダンサーの仕事を紹介される。「センスがない」と劇場支配人にはバカにされるが、そこで出会ったトランスジェンダー女性ビバの美しさと自由な生き方に惹かれていく。彼女によってバックダンサーに抜擢されたハイダルは、家長から何の仕事に就いたのかと聞かれ、後ろめたさからとっさに「劇場支配人として雇われた」とウソをついてしまうのだった。しかし家長は、ハイダルが職を得たことからムムターズに家庭に入ることを命じるのだった…。

ポスタービジュアルは、夫ハイダルとトランスジェンダー女性、ビバがスクーター2人乗りでラホールの街を駆け抜けるシーン、そして、ハイダルの妻ムムターズと義姉が異国情緒あふれるラホールの家の屋上で大家族の洗濯物を干すシーンで構成。家族への愛がありながら、自分らしく生きたいという願いの狭間で揺れ動く2人を表し、切なさがあふれる。コピーは「大都市ラホールの街角で、それぞれの幸福がすれ違うー」。

『ジョイランド わたしの願い』
2024年10月18日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:サーイム・サーディク
出演:アリ・ジュネージョー ラスティ・ファルーク アリーナ・ハーン
配給:セテラ・インターナショナル

【ストーリー】 パキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。保守的な中流家庭ラナ家の次男ハイダルは、現在失業中だ。家父長制の伝統を重んじる厳格な父からの「早く仕事を見つけて男児をもうけなさい」というプレッシャーを受けていた。妻のムムターズはメイクアップアーティストの仕事にやりがいを感じ、家計を支えていた。ハイダルは、就職先として紹介されたダンスシアターでトランスジェンダー女性ビバと出会い、パワフルな生き方に惹かれていく。その恋心が、夫婦とラナ家の穏やかに見えた日常に波紋を広げていく。

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