『レザボア・ドッグス』の公開から25年。再集結したクエンティン・タランティーノとキャスト陣が明かした真実

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The Hollywood Reporter

4月28日、トライベッカ映画祭での『レザボア・ドッグス』公開25周年を記念した上映のあと、クエンティン・タランティーノ監督と、ハーヴェイ・カイテル(ミスター・ホワイト役)、ティム・ロス(ミスター・オレンジ役)、マイケル・マドセン(ミスター・ブロンド役)、スティーヴ・ブシェミ(ミスター・ピンク役)らキャスト陣が集結し、当時の思い出や撮影時の裏話を語った。The Hollywood Reporterが伝えている。

この映画はサンダンス映画祭で上映されたが、大惨事だった

1992年のタランティーノのデビュー作『レザボア・ドッグス』の最初の上映はサンダンス映画祭だった。「あれは大惨事だったよ。本当に」と54歳のタランティーノは説明した。新鋭の映画監督として、タランティーノはスコープレンズプロジェクターが無いのにもかかわらず、スコープフィルムを映画祭で上映した。「最悪だったよ。映画の終盤に突然ライトが光ったんだ。誰かが『うわ、しまった!』って言ってライトが消えた。それで停電してしまったんだ。あれは本当に災難だったよ」。

2度目の上映は成功

タランティーノは、サンダンス映画祭の2週目に2度目の上映をしたときのことも話した。ショーン・ペンやフェイ・ダナウェイもいたと振り返りながら、「エージェントや責任者、出演者のみんなが集まっていたよ。あの上映は素晴らしかった。フェイ・ダナウェイがどうやって俳優たちとの構成をまとめたのかと僕に質問してきたんだ。クールだったよ」と彼は語った。

ウェス・クレイブン(?)を含めた多くの人が退席。1度の上映で退席者は最大で33人

タランティーノは映画が公開すると1年中世界をまわり、ミスター・ブロンドが拷問される有名なシーンに多くの人は耐えられないということを知った。「あの拷問シーンで退席した人数を数えたんだ。最大で33人が退席したんだ」とタランティーノは振り返る。『レザボア・ドッグス』がスペインのシッチェス国際映画祭で上映されると退席者はいなかった。「ついにお客さんはいなくならなかった。僕がこの映画を紹介するとき、いまだにこのことについてジョークを言うんだ」と彼は言う。「そこで退席した5人の観客のなかにウェス・クレイブンもいたんだ! 『鮮血の美学』を監督したアイツが退席するか!? 僕の映画は彼にとっては刺激が強すぎたかな」とそのジョークを披露した。カイテルとマドセンはバイオレンス映画に出演することに悩むことはなかった。「暴力は客観的なものではなくて、もっと本質的なものなんだ」とカイテルは言う。「僕は、暴力はショッキングなものだとは全く思っていないよ。実際、僕がこの映画を初めて観たときはとても単調なものだと感じた。そんなことがあったなんて知らなかったよ」とマドセンは付け加えた。

トム・ウェイツが主要人物のオーディションを受けた

「とてつもなく多くの荒々しい人が来て台詞を読んだんだ」とタランティーノは説明した。「僕はトム・ウェイツにオープニングシーンのマドンナのセリフを読ませたんだ」(オープニングシーンでは登場人物が『ライク・ア・バージン』の意味について意見を交わしている。この曲の意味について劇中でも登場人物が推測しているように、マドンナはタランティーノに対してこの曲は性的なものではなく、愛についての曲であると説明した)。タランティーノは「カイテルは俳優として素晴らしいけど、ウェイツが言う台詞は最も“奥深く“素晴らしかった。まるで詩のようだったんだ」とタランティーノは振り返る。しかし、カイテルはタランティーノに対し、ニューヨークの俳優にその台詞を言うチャンスを与えてほしいと頼み込み、飛行機代も与えた。「それで(ニューヨーク出身の)ブシェミを起用したんだ」とタランティーノは言う。ブシェミは「ミスター・ピンクは僕にチャンスをくれたんだ。あのオープニングの影響は絶大だった。このおかげでたくさんの仕事を得ることができた」と語った。

『レザボア・ドッグス』の製作はタランティーノの人生において最も幸せであった

タランティーノは、『レザボア・ドッグス』の2週間のリハーサルが終了し、撮影開始まで5週間といった頃に、出演者とディナーをともにした夜について振り返る。「当時はカリフォルニア州のグレンデールに母と住んでいたんだけど、マリブにあるハーヴェイ・ワインスタイン(配給会社ミラマックスの設立者)の家へドライブしたんだ。長いドライブだったけど良かったよ」と彼は説明し、「僕はハーヴェイの家で座っていて、全圧力が僕の肩にのしかかるのを感じたんだ。映画のようにね。俳優のみんなは台詞を完璧に覚えていて、お互いにオーラを感じていた」と語った。「車に乗ってサンセット大通りを通ってマリブからグレンデールに戻ったあの夜を覚えているよ。人生で一番幸せだったよ。いつも映画を作っているときに思い出しているんだ」と彼は続けた。

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ティム・ロスを除いて全ての出演者が役を変更したがったがった

ロスは脚本を受け取ったとき、ミスター・ブロンドとミスター・ピンクの台詞を読むように言われたが、ロスはミスター・オレンジを演じたいとすぐに感じたそうだ。「この『レザボア・ドッグス』の脚本が届いてから、スペルミスかと思ったよ」とロスは振り返る。「20ページほど読んで、仕事を引き受けようと思った。読み込んでから、ある嘘つきのイメージが思い浮かんだ。”悪人”と”善人”がね」と加えた(マドセンはロスの発言を訂正せずにはいられずに「それは”変わり者”だろ」と苦笑いした)。カイテルは当初、ミスター・ブロンドを演じることを希望していたが、うまく演じることはできないと思ったと語る。「マイケルとクリス・ペンは僕がお気に入りのシーンを演じてくれた」とカイテルは振り返る。マドセンもミスター・ピンクを演じることを希望して、オーディションに参加していた。「僕は大きなシーンを演じて、クエンティンは立ってただ僕を見ていたんだ」とマドセンは言った。「オーディションの全てが終わって、本当にいい仕事をしたと思ったよ。でもクエンティンは僕に『君はミスター・ピンクじゃない。ミスター・ブロンドを演じるか、あるいはこの映画に出演しないかだね』と言ったんだ」。

マドセンは「ミスター・ブロンドは悪役としてキャスティングされた」と語る

「僕は100作以上の作品に出演したけど、みんな『レザボア・ドッグス』か『キル・ビル』について話したがるんだ」とマドセンは言う。彼は自分が映画史に残る一人としていられることに感謝しているが、『テルマ&ルイーズ』と『フリー・ウィリー』で演じた役のおかげで主演を務めることができたと感じている。「残念なことに、僕は悪役にキャスティングされたんだ。僕は主演したいと思っていた。基本的には悪役の主演だけど。みんなも僕は銃を手にしている役が似合うと思っているよ。『レザボア・ドッグス』のおかげでキャリアアップできた。俳優になった頃はこんな役を演じられるなんて、まさか思ってもいなかったよ」とマドセンは語った。

ミスター・ブロンドの拷問ダンスはアドリブ

タランティーノは、マドセンとはリハーサル中にダンスについて話してはいたが、マドセンは撮影日まで演じることはなかったと明かした。実際、マドセンは拷問シーンを撮影することを躊躇していた。タランティーノは「僕は警官を演じたんだけど、『僕には小さな子どもがいるんだ』と言ったんだ。マイケルにも小さな子どもがいたしね」と振り返る。「マイケルはティムのことを悪者だといつも思っていたよ」とも語った。一方でマドセンは、あのダンスによって大きな恐怖を感じたと語る。「脚本には『ミスター・ブロンドが狂気じみたように踊る』と書いてあったんだ。それで僕は考えていたんだ。『どういうことだ? ミック・ジャガーかよ?』ってね」とマドセンは言う。タランティーノは、彼なら何かやってくれるだろうと信じていたと付け加えた。マドセンは最初の撮影までそのシーンで流れる『Stuck in the Middle With You』さえも聴いていなかったが、撮影はたった3テイクで終了した。「僕は映画でジェームズ・キャグニーが演じていた異様さについてずっと考えていたんだ。僕もこの境地まで来たんだってね」と語った。

低予算だったため、出演者のほとんどは自分の服を着ていたそうだ。あのカウボーイブーツも私物だ。「僕のパンツはとてもきつくて、Tシャツも着なくてはいけなかったから、爆竹とカウボーイブーツを用意したんだ。ドレスシューズはなかったしね」とマドセンは言う。「だからカミソリがブーツの中に入ってるんだ。カウボーイブーツを履いてポケットからカミソリを出すなんておかしいだろ?」と続ける。マドセンはまた、ブシェミは黒いジーンズをはいていたと付け加え、「クローゼットから持ってきた唯一のものといえばネクタイだね」と暴露した。