「斜里に来て初めて鹿肉を食べた日、目が冴えてしまって…」“赤いやつ”が子どもの相撲大会に飛び込む!『Shari』予告編&場面写真

カンヌ国際映画祭に正式招待された『Grand Bouquet』をはじめ、米津玄師「Lemon」のミュージックビデオの出演・振付でも知られる映画作家・吉開菜央の長編初監督作『Shari』が、10月23日より公開される。このほど、本作の予告編と場面写真がお披露目となった。

羊飼いのパン屋、鹿を狩る夫婦、海のゴミを拾う漁師、秘宝館の主人、家の庭に住むモモンガを観察する人。彼らが住むのは、日本の最北に位置する知床半島。希少な野生動物が人間と共存している稀有な土地として知られ、冬にはオホーツク海沿岸に流氷がやってくる。だが、2020年、この冬は雪が全然降らない。流氷も、なかなか来ない。地元の人に言わせれば、「異常な事態」が起きている。そんな異変続きの斜里町に、今冬、突如現れた「赤いやつ」。そいつは、どくどくと波打つ血の塊のような空気と気配を身にまとい、いのちみなぎる子どもの相撲大会に飛び込む。「あらゆる相撲をこころみよう!」これは、自然・獣・人間がせめぎあって暮らす斜里での、摩訶不思議なほんとのはなし。現実と空想を織り交ぜながら紡がれるこの物語は、既存のイメージを打ち破り知床の新たな一面を浮かび上がらせる。

予告編は、「私が斜里に来て初めて鹿肉を食べた日、目が冴えてしまって全然眠れなかった」と吉開の声で始まる。鈴の音とともに映し出される斜里岳の上では雲と風が渦巻く。自然・獣・人間が、せめぎあって暮らす、知床・斜里町。この年、町は“40年に一度の少雪”に見舞われていた。「なんか起きるのかなとか思いますよね」と住民は口にする。そこに突如現れた“赤いやつ”。湯気が立ちのぼり、血や肉を彷彿とさせる異形の姿。赤いやつは子供相撲に突然現れ、相撲を挑む。「それでも人は熱がなければ生きていけない」「それでも人は雪がなくては生きていけない」レコーダーから流れる少女の声。「自然は元本だ。原資には手つけないで利息で食べていくべ」と語る町の人。海一面に広がった小さな流氷が軋む音…そして魂の叫び声と命みなぎる鼓動が鳴り響く。空想と現実が交錯し、人だけでなく、海、山、氷、動物、さまざまな“生命”の声に満ちている。その声が、観る者の五感を轟せ、肉体の内側から揺さぶる。

場面写真には、真っ赤に塗られた子どもの強い視線、生の鹿肉、煌々と燃え上がる炎など、美しく強い印象を残しながらも、人間の本能を呼び覚ますざわめきを内包したシーンの数々が収められる。

『Shari』
10月23日(土)より、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
監督・出演:吉開菜央
助監督:渡辺直樹
撮影:石川直樹
音楽:松本一哉
アニメーション:幸洋子
出演:斜里町の人々 海 山 氷 赤いやつ
配給:ミラクルヴォイス

【ストーリー】 羊飼いのパン屋、鹿を狩る夫婦、海のゴミを拾う漁師、秘宝館の主人、家の庭に住むモモンガを観察する人。彼らが住むのは、日本の最北に位置する知床半島。希少な野生動物が人間と共存している稀有な土地として知られ、冬にはオホーツク海沿岸に流氷がやってくる。だが、2020年、この冬は雪が全然降らない。流氷も、なかなか来ない。地元の人に言わせれば、「異常な事態」が起きている。そんな異変続きの斜里町に、今冬、突如現れた「赤いやつ」。そいつは、どくどくと波打つ血の塊のような空気と気配を身にまとい、いのちみなぎる子どもの相撲大会に飛び込む。

©2020 吉開菜央 photo by Naoki Ishikawa