第92回アカデミー賞モロッコ代表作『ADAM(英題)』が、邦題『モロッコ、彼女たちの朝』として8月に公開されることが決定した。併せて、予告編、ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。
カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。それぞれに孤独を抱えていた二人だったが、丁寧に捏ね紡ぐ伝統的なパン作りが心を繋ぎ、やがて互いの人生に光をもたらしていく。モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、幾何学模様が美しいインテリア、軽やかなアラビア音楽…、あふれる異国情緒とともに、親密なドラマが描き出される。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは…?
新星マリヤム・トゥザニ監督が、過去に家族で世話をした未婚の妊婦との思い出をもとに作り上げた本作。家父長制の根強いモロッコ社会で女性たちが直面する困難と連帯を、フェルメールやカラヴァッジョといった西洋画家に影響を受けたという質感豊かな色彩と光で描き、2019年のカンヌを皮切りに世界中の映画祭で喝采を浴びた。現在までにアメリカ、フランス、ドイツなど欧米を中心に公開。なんと、日本でモロッコの長編劇映画が劇場公開されるのは本作が初となる。さらに女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表に選ばれるなど、長編デビュー作ながら快進撃が続く。本作の製作・共同脚本を手掛けるのは、アラブ圏を代表する映画監督の一人で、トゥザニ監督の夫でもあるナビール・アユーシュ。主演は、『灼熱の魂』で世界各国の映画賞を受賞し、一躍注目を集めたルブナ・アザバルと、日本初紹介となるニスリン・エラディが務める。
予告編は、アラブ音楽にのせ、二人の女性の出逢いから幕を開ける。行くあてのない妊婦のサミアを家に招き入れた、パン屋を営むアブラ。孤独を抱えた二人は、モロッコの伝統的なパン作りを通して互いに心を通わせていく。「お腹の子は私と居ても幸せになれない」と嘆くサミアに、「後悔する別れだけは選ばないで」と過去の喪失を打ち明けるアブラ。運命に翻弄されながら、二人の女性の人生が再び動き出す。
ポスタービジュアルでは、陽の光に照らされて微笑むアブラとサミアの傍に「どうか、心のままにーー」というコピーが浮かぶ。カラフルな布やターバン、笑顔でこちらを覗く娘のワルダ、オーブンで焼きたてのビスコッティなども目に楽しい、未来への希望が感じられるビジュアルになっている。
場面写真には、粉の様子を確かめながらパンを作るアブラとサミア、エキゾチックなインテリアの部屋でサミアが赤子を見下ろす姿、アブラと娘のワルダがキッチンで夕食の準備をするシーンなど、パン屋で起こる人間ドラマを垣間見ることができるほか、カサブランカの旧市街らしい白壁と細い路地を歩くサミアや、繊細な幾何学模様が素敵な壁紙といったモロッコの色とりどりの景色も収められる。
『モロッコ、彼女たちの朝』
8月 全国公開
監督・脚本:マリヤム・トゥザニ
製作・共同脚本:ナビール・アユーシュ
出演:ルブナ・アザバル ニスリン・エラディ
配給:ロングライド
【ストーリー】 臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラム社会では未婚の母はタブー。美容師の仕事も住まいも失った。ある晩、路上で眠るサミアを家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。アブラは夫の死後、幼い娘のワルダとの生活を守るために、心を閉ざして働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれ好きなサミアの登場は、孤独だった親子の生活に光をもたらす。商売は波に乗り、町中が祭りの興奮に包まれたある日、サミアに陣痛が始まった。生まれ来る子の幸せを願い、養子に出すと覚悟していた彼女だが…。
©︎ Ali n’ Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions