マーティン・スコセッシが語る、遠藤周作の「沈黙」に魅了され続けた理由とは?

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マーティン・スコセッシが遠藤周作の名著「沈黙」と出会ってから28年、監督としての固い決意によって『沈黙-サイレンス-』が遂に完成した。日本公開を間近に控え、なぜ「沈黙」に魅了され、なぜ映画化にこだわり続けたのか。スコセッシ自身が語ったコメントが到着した。

1988年、ニューヨーク市で行われた聖職者向けの『最後の誘惑』NY特別試写会で、マーティン・スコセッシは大司教のポール・ムーアと知り合いになり、そこでムーアから遠藤周作の歴史小説「沈黙」をプレゼントされた。初めて「沈黙」を読んだマーティン・スコセッシは大きな衝撃を受け、まるで彼個人に話しかけられたような気がした。「遠藤が本で提示したテーマは、私がとても若い時からずっと考えていたものだ」とスコセッシが語る。「熱烈なカトリックの家庭で育ったため、私と宗教との関りはとても深かった。子供の時に浸っていたローマカトリック教の精神性は、いまだに私の基盤となっている。それは宗教とつながりのある精神性だ」スコセッシは本を読みながら、キリスト教についての非常に根深い問題に対峙していることを知って驚いた。
「わたしはこの年になっても、信仰や疑い、弱さや人間のありようについて考え、疑問を感じているが、これらは遠藤の本がとても直接的に触れているテーマだ」

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「沈黙」を初めて読んで以来、スコセッシは映画化を固く決心していた。同作は、日本の隠れキリシタンの時代を舞台にした優れた文学作品として絶賛され、評論家には20世紀最高峰の小説の一つと言われている。1969年に英訳されて以来、世界各地でさまざまな言語による翻訳版が登場。刊行後すぐにベストセラーとなり、80万部以上を売り上げた。

スコセッシは書いている。「「沈黙」は、次のことを多いなる苦しみと共に学ぶ男の話だ。つまり、神の愛は彼が知っている以上に謎に包まれ、神は人が思う以上に多くの道を残し、たとえ沈黙をしている時でも常に存在するということだ」そして「私がこの小説を初めて手にしたのは、20年以上前のことだ。それ以来、何度も数えきれないほど読み直している。これは、私が数少ない芸術作品にしか見出したことのない、滋養のようなものを与えてくれる」小説だと。
沈黙-サイレンス-』は、1月21 日(土)より全国ロードショー。

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↑遠藤周作(1923-1996)
東京生れ。幼少期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追及する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は「海と毒薬」「沈黙」「イエスの生涯」「侍」「スキャンダル」等。’95(平成7)年、文化勲章受章。’96年、病没。

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