【全起こし】菅田将暉「山田裕貴が『人を超えたね』って(笑)。変な全能感がある現場でした」 映画『あゝ、荒野 後篇』初日舞台挨拶レポート全文掲載!

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菅田:もちろん歌舞伎町とかもそうなんですけど、象徴的に何度も出てくる、西新宿のビル街。あそこは妙な気分になりました。近代的な建物に囲まれていて、見通しがいいからいろんな景色が広がっていて、あの店とかきっと何十年も変わってないんだろうな。でもその背後には太陽も消すような高いビルとかが建ってたり、ヘリが飛んでたり。そこを走っているっていうことが、なんていうのかな…。何が言いたかったんだろう…。(会場爆笑)なんか、「荒野」だなって感じがしたんですよ、その時。

岸:新宿ってすごく猥雑で近代的なものもありますけど、すごい古いものも残っていて、ゴールデン街とか。そういうものは取り込もうと思っていたんですけど、今日皆さん、新宿ピカデリーでご覧いただいたんですけど、新宿の夜景とか、ビル群ですね。ここの屋上で撮ったんですよ。

菅田:んー?

岸:菅田くんがいない時ね(笑)。

菅田:そうですよね(笑)。びっくりした。もー。

岸:こちらでの公開が決まっていたので、ぜひお願いしたいということで。ピカデリーの屋上って、普通の人は上がれないので、聖地訪問はできないと思いますが(笑)。

菅田:そうなんですね。へー。

荘口:あの光景はこの上から撮られたと。はい。皆さんは今、後篇を観られた後なので、バリカン健二との戦い、裕二との戦いとか、ボクシングシーンが印象に残っていると思うんですけれども、あれって全部で5日間で撮ったと話を聞いているんですけど。

岸:後篇の裕二戦と、バリカン戦は5日間です。裕二戦がそのうちの2日、続けて翌日からバリカン戦を3日間。

荘口:菅田さんは、ひとりで5日間、戦い続けていたんですよね?

菅田:そうですね(笑)。その時の僕の状況を見た、山田裕貴がひと言、「人を超えたね」って(笑)。俺もなんか、これが人を超えるってことかって、変な全能感がある現場でした(笑)。

岸:ちょっと解説すると、1ラウンドって3分なんですよね。実際の試合は。僕たちの撮影自体は、2つ合わせて15ラウンドとかはないんですけど、何テイクも撮るんですよね。その度に繰り返すんです。だから毎日、世界戦を闘ってたぐらいやってるんですよ。

荘口:なんかプロのトレーナーの方が、「この状況はプロよりも過酷だ」って言っていたという。1日じゃ終わらないじゃないですか?どう考えても。

菅田:まあ、時間にしたらね。もちろん、プロの方の試合はね、朝から夜までは戦わないですからね。

荘口:試合が終わっても、お腹いっぱいご飯を食べられないじゃないですか。

菅田:いや、それは大丈夫でした。試合日まではいろいろ節制して、炭水化物を抜いたり、何グラムのササミを食えとか、いろいろあったんですけど、試合の日からは食って良かったんですよ。身体のメカニズムとして、あまりにも炭水化物をとらなさすぎると、何食っても栄養にしようとする身体になるんですって。筋肉が熱くなって。その状態で初日を迎えて、そこから炭水化物とかいくら食っても太らないし、全部栄養になるし、全部使うし、っていう日々。ただ、最終日、朝方に終わって、そのまま「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」っていうドラマを撮ってたんですけど、僕はその時、高熱でした(笑)。身体が熱を持っちゃって。校閲じゃなくて、高熱ボーイ。(会場拍手、笑い)そんな拍手はいらねーんだよっ(笑)。(会場爆笑)そんな拍手が欲しいわけじゃなくて(笑)。やっぱり、普段の役者業以上に身体を使ってるんだなっていう。単純に疲れたとか、風邪の熱ではなく、身体からくる高熱だったんで。あんまりやるもんじゃないですね。たまにぐらいがちょうどいいですね。

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岸:お疲れ様でした。(会場拍手)

荘口:監督から見ても、役者根性という言葉で片付けたらあれですけど、すごいなっていう。

岸:そうですね。

菅田:それをいったら、俺も言いたいことがある。岸さんのかっこいい瞬間。

荘口:お。今は新宿のおじさんですけども。

菅田:はい。最初に岸さんも「俺もボクシング始める」って。「自分が体験しないと分からないこともあるから」って、言ってたんですけど、気がついたらやってないんですよ。「あれ?このおじさん、ボクシングやってないな」って思ってたんですけど、最終日の試合とか撮っている時に、トレーナーの方から聞いてすごい感動したのが、岸さんがボクシングをやり始めた瞬間に、このまま続けていくと、辛さが分かっちゃうと。ボクシングの。辛さが分かっちゃうと、カットを早くかけちゃう。俺らを心配して。それは作品としては避けたいって言って。現場はメイクさんとか、全員泣いているような現場だったんですよ。自分のメイク直した方がいいんじゃないっていうぐらい(笑)。すごい現場だったんですよ。岸さん以外、全員泣いているような現場だったんですよ。岸さんだけは一人だけ鬼になって、引いて感情移入せず見てくれていたんで、「ああ、この人はやっぱりかっこいい監督だな」って僕は思いました。拍手!(会場拍手)

岸:ありがとうございます。

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