奥浜:ここで松本さんと有村さんには、内緒にしていたサプライズがあるんですけど、監督からお二人に手紙をお預かりしております。恐縮なんですが、私が代読させていただきます。
松本:そう、ここにモニターがあるから、何かあるんだろうなって思ったんですよ(笑)。
奥浜:それでは。
松本潤様
僕らが初めて会ったのは数年前の食事の席でしたね。酔った君の熱く赤裸々な思いに僕は強いプロ意識を感じていました。作るという行為が好きな君の心根を知って、何か一緒にやりたいという気持ちにかられました。君が参加するって言ってくれた時から10年間凍結していた『ナラタージュ』は動き出しました。一本の映画が救われたのです。この困難な葉山先生役を引き受けてくれてありがとう。現場での君は心強い存在だったよ。いつだって場の空気をつかんで、作り手の思いを一番に考えて動いてくれる理解者だった。そんなに多くの言葉を交わしたわけじゃなかったけど、分かりあえた気がしました。君は本当は不器用で、その分誰よりも努力してここにいる人なんだと思います。そんな繊細な君とはもっと自由に旅をしてみたい。次はどんな冒険をしようか。その日を楽しみにしているよ。
2017年10月16日 行定勲
松本:ありがとうございます。
奥浜:続いて。
有村架純様
本当にお疲れ様でした。大人の激しい恋愛に身を投ずる泉は精神的にもきつく不安があったことでしょう。覚悟しなくてはいけなかったこともあったと思います。しかし、あなたは泣き言も悩みも打ち明けることなく、自分の心と泉(役名)の心を重ね合わせ、ひたすら役に向き合っていました。その苦悩する姿こそ、女優の最も美しい姿だと思って見ていました。あなたほど寡黙で、芯の強い女優を私は知りません。これまで幾多の努力を重ね夢をつかみ取ったあなたは本当に女優にこだわってきた人だと思います。あなたにはかたくなにこれからも演じることにこだわり続けて欲しい。そして、日本映画史に残る女優になってください。あなたなら必ずできると思います。私が10年間探してきた工藤泉があなたで本当によかった。ありがとう。
2017年10月16日 行定勲
奥浜:改めて松本さんいかがでしょうか?
松本:有村さんに聞いてくださいまず。
奥浜:有村さんいかがですか?
有村:お手紙をいただいて……、今までやってきてよかったなと思いました。(涙)
奥浜:泉の回想録であるからこそ、有村さんは結構きついところもあったんだと思いますが、工藤泉をやってくれてありがとうという言葉でした。松本さんどうですか?
松本:手紙をいただけたことが、この映画に参加した一番の宝物なのかなと思います。監督そしてスタッフの皆さん、そして架純ちゃんと、こういうラブストーリーができたということに、改めて感謝したいと思います。
奥浜:後程お二人にはお手紙をお渡ししたいと思いますのでゆっくりとお読みください。さあ、監督お二人に思いを伝えられましたが、すみません、代読させていただきました。
行定:なんでしょうね。
松本:ここで俺がパッと(ハンカチを)出せればいいんだけど、ないんだよ。(ポケットに)入ってないんだよ!ごめん~!架純ちゃん!この流れはちょっと読んでなかったんだよ。(会場爆笑)
(松本がスタッフから受け取ったティッシュを有村に渡す)
有村:すみません(涙)
松本:ちょっと写真とか待ってくださいね。