奥浜：松本さん今マイクを持たれましたけど、思うところはありましたか？

松本：いえいえ、そんな大したことじゃないです。語り合うってことが出来る映画なんだなって思います。友人が僕にメールをくれることもそうだと思いますし、自分が観て思うことがそれぞれ違うんだと思うんですよね。それを人とコミュニケーション取れるっていうことが、この映画のすごい特徴なのかなと思いますね。

行定：面白いのがね、泉が怖いっていう男がいたんですよ。「すごい怖い。ホラーみたいだ」って、「それは極端だろ、よっぽどお前は怖い女を知らないんだな」って言ったんですけど、でもね、あの怖さが引き込まれるんだよ。逆に怖いっていう人はああゆう人と直面すると翻弄されてしまうから、小野君みたいになっちゃうかもしれないってみんな言ってましたけどね（笑）。

奥浜：そういう魔性と真正面から突っ込んでくるような怖さってありますもんね。そして皆さんにお伺いしたいんですが、本作を通じて得られたものがあれば教えていただきたいんですけど、また皆さんのこれからの人生に影響を与えそうなことが、この作品を通じてあれば。松本さんいかがでしょうか？

松本：本当にこの作品に出会えて、この作品に参加させていただけたことで自分が今後お芝居をさせていただく時の表現の幅がまた広がったんじゃないかなと思います。今までやったことのない役でしたし、演技のやり方っていうのも、だいぶそぎ落とした方向でやっていたので、自分が今までやっていた方向と違った方向の芝居をさせていただけたことで表現が広がるんじゃないかなと思います。今後また映画に呼んでいただける機会があった時に、全然違う役ができたらいいなと思います。

奥浜：有村さんはいかがでしょうか？

有村：映画の面白さを改めて感じました。作品が終わるまではあまりお芝居が楽しいと思えないんです。大好きなんですけど。作品が終わったあと、初めて楽しかったと思えるんですよ。その間の戦いって自分の中で少しくらいはあって葛藤しながら映画を作る楽しさを改めて感じられました。今回はたくさんキャンペーンにも行かせていただいて、釜山の方にも行かせていただいてたくさんの方々に出会いましたし、いろいろな方の声も聴きましたし、自分の中ではこの作品が出会いや発見をくれた作品でもあったので、『ナラタージュ』の撮影から今日まですごく充実した時間でした。

奥浜：監督は今回の作品で何か得られたものはありますか？

行定：首がつながったっていう（笑）。

松本：まじすか？

行定：これが売れなかったら路線変えようと思ってたんだよね。

松本：えーー。

行定：絶対、今までやったことがないこと。

松本：すごい大胆発言ですね。

行定：そんな大胆でもないですけど（笑）、そんなこと誰も気にしていないと思うけど自分の中でね、そういう用意もないわけではないですよね。ただもうちょいやりたいなっていう、この曖昧さですよね。人間関係の曖昧さが好きなんですよ。映画だからそれができることだと思っていて、わかりやすくしなくてもいいと決して、映画は2時間20分ありますけど、この暗闇の中で観ているから、この中で思うことって2時間くらい映画に没頭してもらいたいっていう気持ちがあるんですよね。曖昧なものこそ映画は選択していくべきだと思うし、大した物語がなくても映画って面白いものだなって思ってるんですね。他の素晴らしい巨匠が作った名作っていっぱいあるんですけど、たいして物語を覚えていないんですよ、いまだに。観て好きだけど。物語じゃないものを皆んなが感じ取ってるっていうのを記憶に残せるっていうものを作れればいいなと思ってるんで、これが当たらなかったらすげえ物語を重視した、ジェットコースタームービーみたいなものを（笑）、その用意はしていないんですけど。

松本：真逆ですね。

行定：真逆。でもしないだろうけど、そういう意味では皆さんが観ていただけたっていうことで、もうちょっとこういうことをやっていける期間が増えたっていう風に思ってます。

奥浜：日本映画界を揺るがす発言もありましたけど、ありがとうございます。

行定：揺るがさないと思うけど（笑）。

奥浜：そうですかね？

行定：あまり誰も気にしてないよ。（笑）