【全起こし】福山雅治「確実に年を取った…」 映画『三度目の殺人』公開記念舞台挨拶 全文掲載!

質問者:神奈川県で教員やってます。チバと申します。生徒にいっぱい宣伝してきました。一つお聞きしたいのが福山さんの大ファンなんで、どうしても気になっちゃって、監督が雪のシーンにかなりこだわったって聞いているんですけど、あそこで三人が寝転んでいる時に足跡が別の方向に流れているんですが、あれは意図したものなのかお聞きしたいのですが。

是枝:こういうやつでしょ。あれ動物なんだよね。

質問者:意図したものではない?

是枝:ウサギかなんかの(足跡が)ちょうどいい具合に入ってね。

質問者:役所さん側と福山さん側に分かれた。

是枝:分かれてるでしょ。

質問者:なんか意図があったのかなと。

是枝:意図に見えるでしょ。(会場爆笑)あれ地上にいるとわかんないんだよね。上にカメラが行って初めて、動物の足跡があるのはわかってたんだけど、あんなふうに見えているっていうのは、すみません後で気が付きました。でもあとに気が付いたらこれ意図に見えるなっていうので消さずにそのまま残しました。

福山:だから解釈としてそういう風な意図があるんじゃないかって取ってもらってよかったわけですよね。そういう風に思ってもらって。今の技術だったら消そうと思ったらなんだって消せちゃうので。でも残しているってことは何かプラスアルファで考えてもらうっていうきっかけとして敢えて残したってわけですよね。

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質問者:そういう細かい点にも気づきました。

福山・是枝:ありがとうございます。

荘口:もう一方くらい聞いてみます?

質問者:茅ヶ崎から来ました。セキネと申します。今回三回目を観させていただきました。私は建築をやっていて、いつも監督の作品の階段に注目して観させていただいていて。今回は弁護士事務所の階段と、裁判所の階段がすごい印象的だったんですけど、やはりいつも階段について考えられて撮られているのかなって。

是枝:階段…。

福山:『そして父になる』の時にも結構階段。監督わざわざ階段撮りに横浜行ってますよね。いい階段なんですよね、監督。

是枝:あの法律事務所は階段で選んでますね。法廷も決め手は正面玄関から真っすぐ上がっていく階段で選んでいるんですよね。階段好きなんですよね。(会場爆笑)大事なんですよね、階段。

質問者:建築をやってるんで私も好きで、『そして父になる』の階段も今回の階段も階段マニアにはたまらない映画。

荘口:“階段マニアにはたまらない映画”新たな宣伝文句できましたね。(会場爆笑)

是枝:うれしいですね。

福山:おっしゃる通りですよね。なんか石の階段お好きですよね。

是枝:回ったやつとかね。

福山:螺旋好きですよね。

是枝:細かい話なんですけど、人が降りて切り返して撮ったやつで角度が色々な角度から撮ってるのと光の入り方変わるので、あんまりアクションを撮るのは得意じゃないんですけど、階段で人動かすとワクワクするんですよね。面白い。建築やってる方はそういう見方をするんですね。

福山:ありがとうございます。意図っていうのは届くんですね。繋がるんですね。

是枝:こだわったところがね、足跡はこだわったところじゃないけど。(会場爆笑)

福山:でもそこにあった偶然のものを有機的に使ったっていう。大丈夫ですか?最後。

荘口:じゃあその若い方行きましょうか。

質問者:若くない。

荘口:若くない?大丈夫です。大丈夫です。ごめんなさい。逆光で見えないから(笑)。ごめんなさい。気を使わせちゃって。

質問者:八王子市から来ました。村野と申します。なんか緊張してしまって。福山さんの大ファンなんですけど、是枝さんも大ファンです。すいませんついでのようで。(会場爆笑)

是枝:ついででもうれしいです。

質問者:今回の映画で女の子にこだわったんでしょうか?娘が出てきますよね。三隅さんの娘、重盛さんの娘、被害者の娘、あと最後に小さい女の子が出てきて、4回出たんですけど、やっぱり女の子なんだなと思って、そこをすごくこだわったのかなと思ってお聞きしたいなと思います。

是枝:重盛が三隅に対してどうやって距離を詰めていくかって、階段をどうやって上るのかって考えた時に、一つは雪景色っていう同じ原風景を共有しているっていうのは一つあって、もう一つは娘を持っているっていう、娘との関係に失敗しているという、最初に依頼者に共感とかいらないって言っていた人間が少し距離を詰めるために階段を二つ用意したって感じなんですね。ここでポスターに使わせていただいた三人が、みんな父娘関係に失敗している共通点を持たせました。それが入り口というか突破口となって、ガラスで隔てられている二人がすっと近づくっていうような気持でした。

質問者:最後の小さい女の子が出てくるっていうのもそういうことですか?

是枝:そこまで考えていませんでした。(会場爆笑)でも言われるとそうですね。使わせていただきます。

荘口:ありがとうございます。お時間になってしまいました。すみません。これから二回、三回観ようと思っている方にメッセージをお願いします。まず監督から。

是枝:短かったですね。これあのまたやりたいですね。人がたくさん来てくれればそんな機会もあるでしょうから、こうやって新作を撮らせていただくたびにこういう時間は持たせていただいてるんで、すこしでも持って帰ってくれるお土産が増えればいいなと、映画を持ち帰ってあの時はああ言われたけど、どうだったんだろうって思い返していただくきっかけになっていただければ作った人間としてはうれしいです。よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

福山:最後に質問を皆さんにしていただいて、その質問の一つが「足跡がどうだったんですか?」とか「階段は?」「娘さんは?」っていうストーリーのメインに、そこに向かうべくとか、補強するべくとか、積み重ねていったものが映画というものになっているわけなんですけど、やっぱり届くものがちゃんと届くんだなって今日感じました。イタリアではイタリアの、ヴェネツィアではヴェネツィアの届き方というものがあったし、この日本でもすごく細かいところまでちゃんと届いているっていうところが良かったなって思う瞬間ですよね。やっぱりよく思うんですよ。多分監督もすごく思っているんですけど、まわりのスタッフが「いやいや監督そこまで観ていませんよ」っていうところでも「いやいや俺的にはこうなんだ」っていう風に。物を作っていると大体そういう風になりますから。「ここは自分だけしかわからないのかな」って思ってたことでもやっぱりご覧になっていただいた方に「そこ気づいてもらえたんだ」っていうところが救われる瞬間であるので、今日は3つも教えていただいて本当にうれしかったです。またこういう機会があれば、こういう機会がなかったとしても、またラジオや色々なところに感想を送っていただけたらと思います。今日はありがとうございました。

荘口:二人に大きな拍手をお願いいたします。

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『三度目の殺人』
9月9日(土)より公開
監督・脚本・編集:是枝裕和 
出演:福山雅治 広瀬すず 吉田鋼太郎 斉藤由貴 満島真之介 市川実日子 橋爪功 役所広司 
配給:東宝 ギャガ

STORY それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅(役所広司)が解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し、死刑はほぼ確実だった。その弁護を担当することになった、重盛(福山雅治)。裁判をビジネスと割り切る彼は、どうにか無期懲役に持ちこむために調査を始める。何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述は会うたびに変わる。動機さえも。なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?得体のしれない三隅に呑みこまれているのか?弁護に真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から真実を知りたいと願う。やがて、三隅と被害者の娘・咲江(広瀬すず)の接点が明らかになり、新たな事実が浮かび上がる──。

(C)2017『三度目の殺人』製作委員会