【全起こし】黒沢清、夏帆と染谷将太のハイレベルな鬼気迫る演技を絶賛!ドラマ「予兆 散歩する侵略者」完成披露イベント全文掲載

松崎:黒沢組は“テッペン(深夜0時)を超えない、健康的な現場だっていうことを聞いたんですけど、そのあたりどうですか?

染谷:晩飯が家で食べられる現場なので、最高でしたね。なかなかないですからね。

黒沢:社会人として当たり前ですよね。(会場爆笑)18時くらいには終わる。普通だと思いますこれが。

夏帆:今回この内容で3週間で撮るって聞いた時に、『寝られないな』って話をしてたんですよ。

染谷:『寝られねえな』って(笑)。

八雲:それが意外や意外。

夏帆:現場に入ったら家でご飯が食べられるっていう。こんな現場があるんだとびっくりしました。

松崎:作品の内容に入っていくんですけど、オープニングのシーン覚えていますかね。ちょっと変わった二階の階段上がっていったところのアパートみたいなところに入っていってそこに2人は住んでらっしゃるんですよ。なんですけど夏帆さんが部屋に入ってから、ほぼワンシーンワンカットでカメラが途切れず、映像が始まっているんですよね。測ってみたら三分あったんですけど、美術を担当した安宅紀史さんに聞いた話なんですが、黒沢さんはロケ地を探す時に、セットを組むよりは実際にある場所をロケ地に見立てて美術で装飾して使うっていう話を聞いたんですが、今回のアパートはどのような意図で選んだかっていうのを教えていただきたい。

黒沢:アパートに関しては皆さん観ていただいたので大体想像つくと、二話以降もあのアパートがいろいろ出てきますんで、楽しみにしていただきたいんですけど、夏帆さんと染谷さんが住んでいるという、まあ家というか、マンションで。脚本は高橋洋っていう僕の友人が書いたんですけど、「ベランダがあって、辰雄が遠くを見ている」っていうところから始まると書いてあったのでベランダがないといけない、そしてちょっと遠くの景色が見えてないといけない。だからマンションで、一階じゃないですね。多少上の階でベランダがある場所っていうのが物語上の条件でしたね。いつもそういうところからスタートするんですけど。で、ここからなんですけど本当にそういうところってたくさんあるんですけど、2人が住んでいるという設定ですからあんまり豪華な億ションみたいなところではない。普通に働いている2人ですからこじんまりしたところがリアルなわけですね。本当にそういうところで撮影すると、とにかく狭いわけです。2人が芝居する場所はあったとしてもカメラが入る場所が全然ない。なので今回はマンションではなくて、なんて言ったらいいんだろう、実際三階建てくらいのある建物。事務所みたいなところですね。何もないがらーんとした汚いプレハブの事務所みたいなところをマンションに見立てて、壁を壊してベランダ状にして、ベランダといっても奇妙な内側に引っ込んだベランダなんですけど。それで広さはある程度あったんです。そこに柱を立てたり部屋のように仕切ったりして、家具をもちろん入れて部屋のように見立ててロケ場所にしました。ですから実際の場所です。半分はあとで作ったセットで作った中間的場所ですね。

松崎:そういう狭いところでワンシーンワンカットで撮ってるんですけど、演じる2人としてはやりにくかったとか、こんな風にこんなことするんだってことはありましたか?

染谷:やりにくいことはなかったですね。すごい良いセットだなと思いまして、すごく動けるし、いろいろできる場所だなと。黒沢さんの映画を観させていただいてるとセットとか美術もいい導線が作れる形をしてるなって、ちょっと偉そうですけど、思ったりするんですよ。