【全起こし】『牯嶺街少年殺人事件』チャン・チェンがサプライズゲストの妻夫木聡に勝負パンツのプレゼント返し! 「『ウォーターボーイズ2』でもやれって言われるのかと思いました(笑)」(妻夫木)

『恐怖分子』や『ヤンヤン 夏の思い出』など台湾ニューシネマを代表したエドワード・ヤン監督の代表作で、日本では待望のリバイバル上映となった『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(’91)の舞台挨拶が行なわれ、来日した主演のチャン・チェンとプロデューサーのユー・ウェイエンが登壇。サプライズゲストとして妻夫木聡を迎え、大いに盛り上がったイベントの模様を以下に全文掲載する。
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MC:本日は『牯嶺街少年殺人事件』の舞台挨拶付き上映にお越しいただきありがとうございます。1991年にエドワード・ヤン監督によって発表された本作は、日本で初公開されてからDVD化されず幻の傑作と言われていた作品です。そんな本作が今回4Kレストア・デジタルリマスター版としてエドワード・ヤン監督の生誕70年、そして没後10年という節目である今年2017年に日本のスクリーンに帰ってきました。本日は25年ぶりの公開を記念し、本作でデビューを飾り、現在ではアジアを代表するスターとなった主演のチャン・チェンさんと本作を始め、エドワード・ヤン監督と数々の作品でタッグを組んできた、当時の現場を最もよく知るプロデューサーであるユー・ウェイエンさんにお越しいただきました。それではお呼び致します。拍手でお迎えください。チャン・チェンさん、そしてプロデューサーのユー・ウェイエンさんです。

ではさっそくお二2人にお話しをいただきたいと思っているんですが、今回25年ぶりの公開ということで、今日のこの回は数分で売り切れたという人気ですが、久しぶりの公開をお二人はどうお感じでしょうか。ではチャン・チェンさんからお願いします。

チャン:上映前ですよね?

MC:上映前です。これからご覧いただく皆さんです。

チャン:その方が話すのが楽です(笑)。上映前の方が明るい気持ちで話ができるので、作品がそんなに明るいものではないので。楽しく話せてとても嬉しいです。

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MC:ユー・ウェイエンさんお願いします。
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ユー:皆さんお手洗いに行かれましたでしょうか。4時間ありますので。

MC:今年2017年は本作の監督であるエドワード・ヤン監督の没後10年という節目の年でもあります。ユーさんにとっては映画を長く共に作ってきた同志でもあり、そしてチャン・チェンさんにとってはご自身を見出してくださった監督でもあると思いますが、お二人の監督への思い、どんな存在か教えていただけたらと思います。

ユー:私はヤン監督と1980年に出会いました。そのときヤンさんがアメリカから帰ってらして。それで亡くなる前の最期の作品も僕は一緒にしましたし、また幻の作品になってしまいましたけど、ヤンさんが監督の作品ではありませんでしたが、撮影の参加もあったりして、真ん中がちょっと空きましたけど、そういうふうにヤンさんとはお付き合いが続いていました。その関係とかヤンさんに対して、僕は言葉にならない感情を持っています。さっきもチャン・チェンさんと2007年にヤン監督が亡くなったときお話しをしていたんですけど、「僕と君はこの『牯嶺街少年殺人事件』という作品だけのために5回も6回も時間を共に過ごすことができたね」と。それは台湾や香港、そしてこうやって日本に来られたり。その経験自体が本当に貴重で得難いものだと思っています。

MC:ありがとうござます。チャン・チェンさんお願いします。

チャン:僕にとってヤン監督は伝記的な存在というか、非常に特種な存在の人でした。この作品が僕の人生にとってとても特殊な作品です。この作品がなかったら僕はこの仕事に就かなかったと思いますし、こうやってここに立って皆さんと会うこともできなかったと思います。僕が初めて日本に来た時のことを今でも覚えています。東京国際映画祭で招かれて日本にやって来ました。その時もこの作品が縁でした。こやって時間が経ってもこの映画のためにこうやってまた皆さんと会えることがとても僕にとっては嬉しいことです。

MC:ありがとうございます。皆さんには今から映画をご覧いただきますが、チャン・チェンさんが演じる小四(シャオスー)のお父さんを演じているのは実際のチャン・チェンさんのお父さんであり、そしてお兄さん役も実のお兄さんが演じていらっしゃるんですね。初めての出演でかつ主演である作品でこのようにご家族と共演されたのはどのような思いだったでしょうか。

チャン:なんとなく混乱したのを覚えています。自分自身がまだ演技が何かを分かっていなかった時期でしたから、それで自分の本当の家族と仕事をするっていうのは、困惑するところがありました。でも今になって思い返してみますと本当に素晴らしい経験だったと思います。僕はこうして今、役者になってこれを振り返ったときに、一つの作品の中に父親と兄がいます。とっても小さな役で数秒間ですけども実は母も顔を出しています。家族で一つの作品の中に自分たちの姿がとどめられたということは得難いことだったと思います。

MC:ありがとうございます。先ほどユーさんのお話しの中で、ヤン監督との長い長いお仕事の歴史の話がありましたけれども、特に本作は1991年に発表されてから、映画史に残る傑作と言われています。この作品に対してヤン監督はどういう思いでいらしたか教えていただければと思います。

ユー:当時、ヤン監督ご自身が中学生だったときにこの事件が起こって、ひと言で言ってみると恋愛のもつれで殺人が起こってしまったという報道だったんですけど。それだけじゃなくて、この作品の中にもう一つあったものとして、その当時、やくざとは違いますが、若者たちが徒党を組んでケンカをしたりとか仲間と張り合ったというのは普遍的な状況でありました。そういう時代をヤン監督だけではなくて僕もそういう時代を経験してきました。決して僕らが不良グループじゃなくても多かれ少なかれそういうものの中に身を置いて僕らは生きてきたわけです。もう一つ大事なことだなって思うのは、1949年に台湾はあとから移住してきた人がいて、それが僕らも皆そうですけども外相人と俗に言われる人たちなんですけれど、僕らは父親や母親がその1代目で、僕らは2代目に当たります。本作の主人公の小四のお父さん、お母さんがまさにそこに位置するんですけど、彼らの初めて来た場所に対する不安感だったり、生存していくための不安感だったり、困難だったりとか、言ってみればどちらかといえば不幸な時代だったのかもしれません。そういう時代の大きな記憶と言うんでしょうか、作品の軸になるものはシンプルに言うと痴話げんかというか恋愛のもつれが原因となった殺人事件ですけれども、その後ろに見えてくるのは、そういったその時代の記憶であり、台湾の時代そのものを映し出したいと、たぶん監督はそう思われたんだと思います。

MC:本当に25年経っても今なお色あせないのはやはりそこに描かれているのが普遍的なものだったからではないかなと思います。では本日はチェン・チェンさんとユー・ウェイエンさんの来日と本作に25年ぶりの上映を祝福しましてスペシャルゲストにお起しいただいております。俳優の妻夫木聡さんです。
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MC:妻夫木聡さんはチャン・チェンさんも出演しましたホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』(’15)でご一緒にカンヌ国際映画祭に参加された役者仲間でもあるということで本日はお祝いに駆け付けていただきました。妻夫木さんまずはご挨拶お願い致します。

妻夫木:妻夫木聡です。すみません、なんかお邪魔しちゃいましてこの場に、すみません。

MC:では妻夫木さんにもいろいろお話しを伺えたらと思います。映画を見ていかがでしたでしょうか。

妻夫木:約4時間の長い映画ではありますが、全然、時間の長さを感じさせることのない、映画自体がもつ力に圧倒されましたね。特に光と闇が特徴的に僕の中に映っていて、チャン・チェンが持っている懐中電灯の本当に小さな灯りが本当に命の灯みたいに、パッと消えてしまうんじゃないかっていう、そういう思春期独特の危うさみたいなものを感じさせてくれたり、闇からパッと浮かび上がる人の顔だったりそういうものがすごく脳裏に焼き付く、なんて言うか独特な力を持った映画だなっていうのをすごく感じました。最近の映画ってどうも主観的に捉えている映画が僕の中では多い気がして、すごくいろんな視点を持った客観的な部分で見せてくれる映画だなって。映画ってとても自由だし、どういう視点で人が見ていて、どう感じるかって人それぞれ変わると思うんだけれども、こんなにもいろんな顔を持った映画ってなかなかないんじゃないかなってすごく感じさせてくれました。本当に素晴らしい作品だと思います。

MC:ありがとうございます。妻夫木さんと言えば先日日本アカデミー賞では『怒り』で最優秀助演男優賞を受賞されました。

妻夫木:ありがとうございます。本当にごめんなさい(汗)。

MC:『黒衣の刺客』にチャン・チェンさんもご出演されていたんですけど、改めて俳優チャン・チェンさんの魅力について、妻夫木さんはどう思われますか。

妻夫木:本当にすごくいい人なんですよ! 僕が初めてあったのはたぶん『春の雪』(’05)っていう行定組での現場にチャン・チェンさんが見学にいらしたときだと思うんですけど、そのときから本当にフレンドリーで、そのときあんまり日本語は話せなかったんですけど、日本のこともすごく大好きでいらっしゃるみたいで、いっぱい日本語も勉強して、僕はそれに甘えていつも話すときは日本語で話すんですけど(笑)。来るたびにメールくださって一緒にご飯したりとかしてますね。つい何ヶ月か前もご飯したばかりで、だからあまり久しぶりでもないんですけど(笑)。実は共演しているようで、共演はあんまりちゃんとしてはないし、それがすごく残念なんですけど。ぜひ次に会うときは、映画の現場で会いたいなとは思うんですけど。とってもアクティブで面白い方なんですけど、本当にいい人です。

MC:というお言葉をいただきましたけれどもチャン・チェンさんは。

チャン:ありがとうございます。僕も実は受賞のお祝いにプレゼントを用意してきました。

妻夫木:本当に!? あっ! これどういうことだ?

チャン:勝負パンツです(笑)。でも下着は買えなかったのですみません。本当は下着にしたかったんですけど水着です。

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妻夫木:ビックリした。『ウォーターボーイズ2』でもやれって言われるのかと思いました(笑)。

チャン:“ラッキーパンツ”をお持ちだというのをインターネットで拝見したので。

妻夫木:『ジョーズ』だ(笑)。これ勝負パンツにできないですね。なかなかちょっと。衣装からはみ出しちゃうかもしれないですねデカくて。

チャン:じゃ新婚旅行のときに。

妻夫木:はい(笑)、じゃこれを履いて勝負します! ありがとうございます。

MC:どうもありがとうございます。そして本日都合によりご来場が叶わななったんですけれども、俳優の永瀬正敏さんからチャン・チェンさん、そしてユー・ウェイエンさんにお祝いがしたいということで花束をお預かりしています。永瀬さんは当時「アジアンビート」シリーズでユー・ウェイエンさんが監督を務めた『シャドー・オブ・ノクターン – アジアン・ビート 台湾篇』に出演されています。プロデューサーをエドワード・ヤンさんが務めていたというご縁があります。当時永瀬さんは本作の撮影にも立ち会われていらっしゃいまして、今回の再上映を応援してくださいました。

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MC:では妻夫木さんはここでご退場となります。みなさん拍手でお送りください。では最後にお二人ひと言ずつお願いします。ではチャン・チェンさんお願いします。

チャン:本当に心から今回のことを嬉しく思っています。先ほどユーさんもおっしゃってましたけど、なかなか一つの作品が25年間という時間を過ぎて、またこうやって皆さんの前に、しかもユーさんと一緒に立てるというのはなかなかないことだと思います。非常に感謝しています。何に感謝するかというとここまでこれた一切のことに感謝したいし、こうやって呼んでくださった配給会社の方にも感謝したいです。本当にありがとうございました。またもう1回機会があるといいなと思います。

MC:では最後にユーさんお願いします。

ユー:監督にひと言言いたいんですが、「ヤンさん、君は亡くなって10年になったね。君がまだ僕らをまだ引っ張っていってくれるんだねと思うし、引っ張っていってほしいと思う」ありがとうございました。

MC:では皆さんお越しいただきましたチャン・チェンさん、ユー・ウェイエンさんに大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。

2017年3月14日 角川シネマ有楽町

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監督:エドワード・ヤン
出演:チャン・チェン リサ・ヤン ワン・チーザン クー・ユールン エレイン・ジン
1991年/台湾/3時間56分/PG-12 
配給:ビターズ・エンド 
©1991 Kailidoscope
※上映は、4Kレストア・デジタルリマスター原版から変換した2K上映となります。

公式サイト:http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/
Facebook:https://www.facebook.com/EdwardYang2017/
Twitter :@Edward_Yang2017