【全起こし】ダルデンヌ兄弟が自分流の映画作りを丁寧に語る「映画というのは事故みたいなもの」

『息子のまなざし』『ある子供』『サンドラの週末』など、特にカンヌ国際映画祭で高く評価される、ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が兄弟そろって来日! 新作の『午後8時の訪問者』の試写会に登壇し、上映後にティーチインを行なった。以下はその全文。

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兄のジャン=ピエール(左)と弟のリュック(右)

MC:本日は映画『午後8時の訪問者』の試写会においで下さいましてありがとうございます。映画はお楽しみいただけましたでしょうか。(拍手)。本日はなんと世界的巨匠である本作の監督ダルデンヌ兄弟のお2人をお招きしてティーチインを行ないます。それでは皆さん拍手でお迎えください。ジャン=ピエール監督、リュック・ダルデンヌ監督です!

ではまず監督、今日は日本で初めて一般のお客様に映画をご覧いただきました。ひと言ご挨拶いただけますでしょうか。

ジャン=ピエール(JP):アリガト! 来てくださいましてありがとうございます。私たちが望むことは皆さんが満足して喜んで下さることだけです。それだったらいんですが。

リュック(L):ありがとうございます。もし映画を気に入ってくれたなら友達に話してください。

MC:ありがとうございます。では早速、ご質問のある方いらっしゃいましたら挙手いただけますでしょうか。(すぐには手が上がらず)。ではまだ噛み砕けていないようでしたら私から質問をさせていただきます。主演のアデル・エネルさんは日本では、去年の東京国際絵映画祭で上映された『ブルーム・オヴ・イエスタディ』が記憶に新しいかと思います。彼女は日本ではまだあまり知られていませんが、とっても魅力的だったと思うんですが、彼女に決めた決定打は何でしょうか。

JP:彼女の映画を観て起用しようと思ったわけではないんですけど、パリで実際に彼女と会いました。それは作家協会の授賞式で、私たちと彼女とそれぞれ別の作品で受賞した際にお会いしたんですね。とても若々しくて彼女の顔がとても好ましくて、非常に信頼がおけるような、そしてまたすごく純真無垢感じを顔から感じました。初め彼女が演じたジェニーという若い医者の役は、30~35歳くらいの年齢を想定していたんですけど、彼女に会ってもっと若くてもいいかもしれないと思いました。この物語の中では若い女の子が亡くなってしまうわけですけれども、自分の生活を乱されたくないということで誰も言葉にしないわけですね。それが裏がなくて信頼がおける彼女の純真無垢な顔を向けられることによって言いたくなる、と思わせるような人だなと思って彼女と仕事をすることに決めました。