【ほぼ全起こし】マッスル坂井&松江哲明『俺たち文化系プロレスDDT』超場違い会見!?

2016年11月21日(月)、東京有楽町の日本外国特派員協会(FCCJ)にて、マッスル坂井監督&松江哲明監督による映画『俺たち文化系プロレスDDT』の、ちょっと場違い(!?)な試写会と記者会見が行われた。以下、試写会後に行われた記者会見ほぼ全文。

↓左から通訳さん、マッスル坂井氏、松江哲明氏、MCの方
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MC:お待たせしました、マッスル坂井監督(スーパー・ササダンゴ・マシン)と、一緒に監督された松江哲明監督です。

(会場拍手)

坂井:どうぞよろしくお願いいたします。

松江:どうぞよろしくお願いいたします。

坂井:(FCCJ背景のロゴを指さしながら、嬉しそうに)この背景いいですよね(笑)。

松江:そうですね(笑)。

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MC:通常ここからゲストを紹介するんですけど、マッスル坂井さんに関しては先ほど自己紹介があったので省略しまして(※1)、松江哲明監督を紹介します。松江哲明監督は1999年に『あんにょんキムチ』というドキュメンタリーでデビューして以来、たくさんの作品を発表しております。(第22回)東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞した『ライブテープ』や、『トーキョードリフター』、『フラッシュバックメモリーズ 3D』、最近ではテレビシリーズである『山田孝之の東京都北区赤羽』などを発表しております。

MC:松江哲明監督は何回も日本外国特派員協会(FCCJ)に招待しているんですけど、実際に参加が実現したのは今回が初めてです。まず私から質問したいのですが、松江監督は、マッスル坂井さんとどんなきっかけで一緒にお仕事することになったのですか?

松江:今回の企画はDDTの高木三四郎社長から「DDTを一年間追ったドキュメンタリーを作って欲しい」という依頼を受けました。でもプロレスには撮れない部分があるのも知っていたので、その部分を自分がカメラを持って取材するよりも、坂井さんのようなプロレスラーの方と一緒に作った方が、撮れる部分もたくさんあるんじゃないかと思い、「坂井さんとやりたい」とお願いしました。ちなみに坂井さんとは出会ってから10年来の仲です。

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MC:坂井さんに質問ですけど、そもそもどうやってプロレスの世界に入ることになったのでしょう。

坂井:最初は仕事でDDTへ映像を取りに行ったんです。そしたら高木社長が「身体が大きいから、プロレスやらないか?」(会場笑い)って言われて現在に至ります。

坂井:(通訳さんが英語に訳したあと、英語訛りで)イエェス。(とうなずき、会場大爆笑)

MC:それでは質問のある方は挙手してください(※2)。

質問者:(映画に出てくる)あの時の試合はこれまでのDDTとは全く違う異様な感じだったんですけど、あの試合が終わったあと、DDTでこれが変わったなと感じたことはありますか?

坂井:私の場合はですね、いろいろな団体間のトラブルですとか、そういったものを平和裏に解決できるという手腕を高く評価されてですね、公式、非公式問わずトラブルシューティングの話がよく来るようになりました(会場笑い)。それはプロレス界に表立って見える部分では発揮されていないのですが、その後も私はいろいろな難題を解決し、プロレス界の平和の為に日夜努力をしております(会場大爆笑)。

質問者:坂井さん、心臓の具合はいかがでしょうか?

坂井:えー、日常生活の方は送れるようになりましたが、また後日改めてDDTプロレスの会場で、自分の欠場期間についてなど、説明はしようと思っていますけど、治療の方は上手くいっておりまして、でも半年ぐらいは休まなくてはいけないかもしれない状態ですね。

質問者:「KAMINOGE」(東邦出版)では常人の5割ほどしか運動能力がないとのことでしたが。

坂井:はい、本当です。

質問者:食事はサラダで?

坂井:はい、サラダいただきました(会場笑い)。

質問者:そもそも撮るはずだった「DDTを一年間追ったドキュメンタリー」は、ずっと前から撮り始めていたんですか?

松江:2015年の春ごろから高木さんにお話をいただいて、もしかしたら2015年の夏の両国に行った人は覚えてるかもしれないんですけど、坂井さんがリング上で「この映画を僕と一緒に作ります」と発表して、その時は「3D映画にします」と言ったこともあったんですよ(会場:あー、はいはい、言ってた)。でもそれ、実は冗談ではなくて本当に3Dのスタッフに連絡して、例えばリング上で坂井さんがカメラを持って攻撃を受けるとか、どんなことができるんだろうと模索していたんですけど。

一回一年間を編集したバージョンを作ったんですけど、それを観て僕はすぐ「これはやめましょう」って言って。ドキュメンタリーとしては一年間追ってるけど、映画として弱いなと思って。それでちょっと30分くださいって言ってその場で構成書を作ったのが、今日上映したバージョンのほぼひな形です。

僕が10年前に坂井さんと出会って、「(プロレス興行の)マッスル」に感動して、僕はマッスルを観たときに、僕が作っているドキュメンタリーと近い方法論でプロレスを表現していると思ったんで、一年間見てて「大家帝国」はすごく特別な試合だと思ったので、それを軸にドキュメンタリーを作れるなと思いましたね。というのは、あの試合に坂井さんとか大家(健)さんとか、皆さんの関係性が凝縮されているので、その分の素材があったんで。ワンフレームの中にリングの上で戦う人もいたり、リングサイドで声をかけてる人もいて、男色ディーノさんが「放すな!」ってやってる、あのフレームの画が撮れたときに「あ、これが映画だな」って思いましたね。一年間のドキュメンタリーバージョンは、そういったちょっと強い素材がなかったのかなあと僕は今思います。

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(長い英訳中、ずっと通訳さんのメモをのぞき込んでいた坂井が、英訳が終わったタイミングで通訳さんを指さして)

坂井:His name is Taro.(会場大爆笑)

質問者:あの試合で、最初に声を出したのは新日本プロレスのファンの方だったんですよ。それにつられてDDTのファンも声を出して、ああゆう空間ができたと思ってるんですけど、やっぱりあれは新日本プロレスとDDTの企業間抗争じゃないとできなかったことだと思うんですけど、その辺はどう思いますか?

坂井:ひとことで言うと、それこそ新日本プロレスの方がヒートアップしてもらえるような構成を心がけました。大会のマッチメイク及び構成に関してですね。

質問者:「大家帝国」の時に機材トラブルで流れなかったパワポはどこかで見られますか?

坂井:私の……、MacBook Pro の中にあります(会場笑い)。なので……、どこかに……、アップロードしておきます。

質問者:ありがとうございます!

MC:そもそも坂井さんがパワポのプレゼンをやろうという発想はどこからきたんですか?

坂井:私たちはプロレスラーだったり、金型メーカー(会場笑い)だったりで、普段、常に大企業のM&Aという脅威に怯えながら生きています。彼らはいつもパワーポイントというプレゼンテーションソフトを使って、われわれを取り込もうとしてくるんですね(会場笑い)常に。屈強なビジネス理論と、ものすごいグラフとかで分かりやすくわれわれを懐柔してくるんですけど、それに負けないように私も学んだと。そういうことでしょうね。たしか2014年にパワーポイントを使ったプレゼンテーションを初めてやりました。

MC:パワーポイントのプレゼンターとしてはチャンピオン級ですね(笑)。(会場拍手喝采!)。

坂井:(MCの方を指さして)この方が言うんだから、きっと本当なんだと思います。(会場大爆笑)

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質問者:お二人から見て、大家健という素材はいかがだったでしょうか? それとせっかくこういう場(日本外国特派員協会)にいるので、大家健という素材が海外的に通用するかというのを。お二人の目から見ていかがでしょうか?(会場笑い)

松江:もともとDDTのいろんな選手を撮影してたので、そもそも大家さんを主役にするっていうのはなかったんですけど、結果的に大家さんが残ってしまったというのが感想ですね。主役になってしまったというか。最初にイオンシネマでパンフレットを買った人に握手するってところで、全員に握手しちゃうっていう映像があったじゃないですか? 僕は撮影に行っていて、あの時に大家さんが主役になるとは思ってなかったですね。DDTにいろんな選手がいらっしゃいますけど、スター選手っていうのがいるんですよね。自分から光を出したり、スポットライトが似合う方とかいるんですけど、大家さんって自分から光は出せないけど、カメラがそっち向いちゃうんですよ。映画のキャラクターとしては、そういう人の方が合うなって思いましたね。例えば映画のロッキーってチャレンジャーなんですよ。アポロみたいなスーパースターよりも、映画の主人公になるのはロッキーのようなチャレンジャーなんですよ。大家さんはそういう人なんですよ。

坂井:じゃあ二つ目の大家健が海外で評価を受けられるかという質問についてお答えします。仮に大家健が世界のレスリング企業に評価されるならば、もうすでにアメリカ最大のワールド・レスリング・エンターテイメント社から参戦のオファーが来ているはずなので、現状そういった可能性は限りなく低いと思います。(会場笑い)ただ、この映画が今回FCCJさんでの試写会を終えて、海外のビッグプロモーターがどこにいるかわかりませんからね。海外で上映が決まったりですね、もし海外の識者の目にとまった場合、わからないですよね。演出がいいですから(会場笑い)。

質問者:まったくプロレスを観ない人とか、DDTを知らない方々にこの映画の良さを説明するときになんて言えばいいでしょうか?

坂井:えーと先ほど私がプレゼンテーション(※1)した内容をですね、もう一度、家でしっかりと復習してください。(会場笑い)また、これは私からのお願いなんですけど、先ほど使ったプレゼンテーションのスライド資料なんですけど、これから続く各劇場での舞台あいさつ、もしくはプロモーションで複数回使いますので、全スライドをSNSなどにアップするのは……(会場笑い)ご容赦いただきたいと。毎日毎日、その時の時事ネタを加えてアップデートしているつもりなんですけど、その中の印象的に思ったスライドをTwitterなどで拡散していただけると、非常に私たちは嬉しいです。ぜひ会場でプレゼンテーションと一緒に映画を楽しんで欲しいという風に皆様の方から拡散をぜひともお願いしたいなあと思います。

松江:DDTを見ていると、文化祭がずっと続いてる感じがするんですよね。坂井さんもマッスルをやっていた頃って30歳前後の頃とか、まだできたと思うんですよ。僕もあの頃は徹夜で映画とか作れたんですよね。でも、それと同じエネルギーを、39とか40近くなるとキツイんですよ。このタイトル結構気に入ってるんですけど、文化系って明日のこと考えないんですね。体育会系ってちゃんとトレーニングして、身体鍛えてちゃんと試合を見せるんですけど、文化系って完全燃焼しちゃうんですよ。だから30代40代になっても文化系を続けるキツさっていうのは、あんまりそういう映画はないと思うんで。みんな「楽しいよ」ってだけの映画じゃないですか? きついけどやらなきゃいけないっていう映画は、自分がこの年齢になったから作れたなというのが正直あるんで。僕はこの映画を同年代の人に観てほしいです。プロレスの映画ではあるのだけど、サブカルチャーが好きな人っていうか、いつまでも好きでいいの?っていう映画にしたいなって思ったんで。そういう風に薦めてもらえると、そんな映画ちょっとなかったなってなると思います。

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MC:最後にひとつだけ質問、ありますか?

(会場にいた外人さんが挙手して)

坂井:おお~、やった!(会場笑い)

質問者:英語のタイトルでは『DDT: Dramatic Dream Team!! -We are Japanese Wrestlers!-』と書いてるんですけど、Japaneseといれるところに着目してるんですけど、これは海外でも上映したいと思ってのことなんですか?

坂井:……(溜めてから)非常に鋭い質問だと思います(会場笑い)。まったくもってその通りです。よろしくお願いいたします。まったくその通りです。That’s right!(会場笑い)DDTがどういうプロレスのスタイルだとか、新日本プロレスがどういうスタイルなのかとか、海外のプロレスファンから見れば大きな点ではないかもしれないんですけど、私たちは自信を持って、これがジャパニーズスタイルのプロレスリングだと思ってやってるとこがあったので、国内のお客さんの前ではあえて、文化系プロレスというような控えめなタイトルにしましたが海外の皆さんにとっては、これがわれわれが誇る日本のレスルングスタイルだという気持ちを込めて、そういったタイトルにしました。

松江:英語タイトルを決めたのは坂井さんで、ジャパニーズレスリングというのにすごくこだわっていたんですけど。僕はサブタイトルで「エゴサーチ」って入れようと思ってたんですよ。(会場笑い)

坂井:それはね僕も思ってたんですよ。で、英訳を探していたらいいのがなくて。

松江:「エゴサーチ」にしようと思ってたんですけど、結果的に坂井さんの方を。これが日本のプロレスだっていうのが面白くて、こちらに決めました。僕、自分の映画のタイトル決められなくて、決めたやつも全部却下されるので(笑)。

MC:これで質疑応答の時間は以上となりますが、FCCJで今回のような試写を9年間やってきましたけど、その中でこれほど楽しい試写会は初めてです。(会場笑い)ありがとうございました。映画『俺たち文化系プロレスDDT』は2016年11月26日(土)から、新宿バルト9ほかで公開が始まりますけど、最初の週末などはトークショーなどを企画されて、マッスル坂井さんのパワポによるプレゼンテーションも聞けると思います。

坂井:はい。

松江:レスラーの方たちが舞台あいさつに来てくれます。

MC:お二人にはFCCJ一年間の名誉会員証をお送りします。

坂井:ええええー!? ありがとうございます。

松江:ありがとうございます。

(会場拍手)

2016年11月21日(月) 東京有楽町 日本外国特派員協会(FCCJ)

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(※1)
記者会見の前に、覆面レスラーのスーパー・ササダンゴ・マシン(マッスル坂井)による、DDTでおなじみの「煽りパワポ(PowerPointを使ったプレゼンテーション)」が行なわれた。その際、スーパー・ササダンゴ・マシン(マッスル坂井)の紹介が済んでいる。

(※2)
一部、映画のネタバレにつながる質問や回答は掲載しておりません。ご了承ください。

↓スーパー・ササダンゴ・マシンによる「煽りパワポ」の様子
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↓坂井氏の希望により「煽りパワポ」の全掲載は自粛したので、ぜひ舞台挨拶の日に会場で観てほしい。面白いから
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