オダギリジョー × アンジェラ・ユン共演作『宵闇真珠』クリストファー・ドイル監督インタビュー

『ブエノスアイレス』、『花様年華』などの傑作を多数撮ってきた世界的撮影監督クリストファー・ドイルの最新作で、オダギリジョーと香港の女優アンジェラ・ユンが共演する映画『宵闇真珠』(よいやみしんじゅ)が、12月15日に公開される。このほど、本作の監督と撮影を務めたクリストファー・ドイルが、共同監督を務めたジェニー・シュンや出演者、作品についてインタビューで語った。

太陽から肌を隠して生活する16歳の少女と異邦の男の出会いを描く本作。異国からやってきた男をオダギリジョー、幼少時から日光にあたるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かせられてきた少女をアンジェラ・ユンが演じる。アンジェラは、1993年に香港で生まれ、2015年にモデルデビュー。CHANELやシュウ ウエムラのアンバサダーに選ばれるなど、香港では「文青女神」(文青=中国語で“ギーク、文化系”、文青女神=サブカルオシャレ好きにとっての女神)と呼ばれている。日本でも、峯田和伸が率いるロック・バンド、銀杏BOYZのシングルのジャケットを飾るなど活躍の場を広げ、写真家の川島小鳥には「いま、一番撮りたい女性」と言わしめる次世代アジアン・ビューティーとの呼び声も高い。

■クリストファー・ドイル(監督・撮影) インタビュー
Q:ジェニー・シュンが書いた物語のどんなところに惹かれた?

ドイル:ジェニーが自分の心に忠実に書いた作品で、それがとても気に入ったんです。長い間、彼女は香港から離れてアメリカで暮らしていて、香港に戻ってきて香港を再発見した。それが彼女にとっての大事なことでした。自分にとって大事なものに対して忠実に作品を作る人に私は敬意を払っているし、いつもそういう人と一緒に仕事をしたいと思っています。自分が信じているものに忠実でれば、それがどんなことであっても他の人も共感できるはずだから。

Q:ジェニーとはどのようにして共同作業をした?

ドイル:準備はすべて彼女がやってくれました。自分が若い監督とやる時は、まず彼らがアイデアを持っていて、彼らとコミュニケートしていくなかで自然に映画が生まれます。とても自由な現場でした。

Q:アンジェラ・ユンはどうだった?

ドイル:ライトやカメラで女優を美しく撮る、そうすることで彼女達を祝福するのが私の仕事です。それは自分にとってひとつの愛情表現で、セックスよりも素晴らしいも素晴らしい(笑)。ほかの女優たちと同じようにアンジェラとの間には信頼関係があって、それは日常生活で得られるものとは全然違う関係でした。私が女優を愛することで、彼女の気持ちが私に伝わって、それを映像で表すことができるんです。

Q:アンジェラにもオダギリにも、極力演技をしないように演出されたそうですね。それはどうして?

ドイル:映画はキャスティングがとても重要です。特別なエネルギーを持っていて、歌舞伎役者のような大きい演技はしなくても、ただそこにいるだけで映画になってしまう役者がいます。そういう役者と、良い空間、良いストーリーがあれば映画になる。そういう意味で、映画はすごくシンプルなものなんです。

Q:「良い空間」といえば、物語の舞台になった漁村大澳の風景も印象的だったが。

ドイル:大澳からは、すごく刺激を受けました。自分にとって空間はとても重要です。私は映画の撮影技術をちゃんと勉強したことはありませんが、いろんな国を旅して、その土地や空間からエネルギーや物語を感じるという経験を積んできました。カメラの技術というよりは、その場所のエネルギー、“気”みたいなものを感じることがすごく大切なんです。映画というのはエネルギーをシェアするものであって、技術的なものではないと思います。

Q:劇中では、カメラオブスクラやピンホールカメラなど「見る」というイメージが散りばめられていますね。

ドイル:この映画は〈見る〉ことについての映画なんです。よそから来たハンサムな異邦人が、少女の本質を見抜く。別世界から来た人であるからこそ、彼女の本当の姿が見ることができるんです。それが少女に自信を与えて、彼女は自分を肯定できるようになる。この映画は、観客に〈他の人と違うのは素晴らしいことなんだよ〉と伝えているんです。今の世の中、香港でも日本でも〈他の人と違うから素晴らしい〉と言われて、それを素直に受け入れられる若者は少ないかもしれません。でも、オダギリさんが演じたような素敵な人物から、〈他の人と違うから素晴らしい〉と言われると嬉しいんじゃないでしょうか(笑)。

Q:そうですね(笑)。確かにそれは自信に繋がると思います。

ドイル:誰もが〈本当の自分をわかってほしい〉という願いを持っています。すべての女性の心の中に、この物語の少女がいるんじゃないでしょうか。青年は少女のことを〈君は特別だ〉と言って去ってしまいますが、それは彼女がとり残されて一人になるということではなく、しっかり自分と向き合えるようになるということなのです。そして、それがすごく難しいことだということを、この映画を観て感じて欲しいですね。

『宵闇真珠』
12月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:ジェニー・シュン
監督・撮影:クリストファー・ドイル
出演:オダギリジョー アンジェラ・ユン
配給:キノフィルムズ

【ストーリー】 香港最後の漁村、珠明(じゅめい)村。幼少時から日光にあたるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かせられ、太陽から肌を隠して生活する16歳の少女(アンジェラ・ユン)は、透き通るような白い肌の持ち主。村人たちからは「幽霊」と呼ばれ、気味悪がられている。日没後、肌を露出し、お気に入りの音楽をお気に入りの場所で楽しむことが、少女にとって唯一孤独を癒やす手段だった。ある日、どこからともなくやってきた異邦の男(オダギリジョー)と出会った少女は、今まで知ることのなかった自身のルーツに触れていくことになるのだが…。

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