ジェイク・ギレンホールが主演とプロデュースを務め、ボストンマラソン爆弾テロ事件で“ボストンのヒーロー”と呼ばれた男の真実の物語を描いた映画『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』が5月11日より公開となる。それに先立ち、4月24日、本作の舞台となる米マサチューセッツ州ボストンと姉妹都市提携を結んでいる京都市にある同志社大学にて試写会とトークショーが行われ、映画評論家の北小路隆志が登壇した。
2013年に起こったボストンマラソン爆弾テロ事件の被害にあった、ジェフ・ボーマンの実話を映画化した本作。トークショー冒頭、司会者から映画の感想を聞かれた北小路は「僕はひねくれているから泣けなかったけど、みなさんはかなり心に響く作品だと思います」と話し、集まった学生からは笑いが漏れた。
そんな北小路氏が注目したのは、映画で描かれる“ヒーロー像”。本作ではボストンに住む主人公ジェフの家族の描写も多いが、「彼らはいわゆるブルーカラー(労働者階級)であり、ボストンだけでなく、アメリカでもっとも多い層(アメリカの人口の3分の2がブルーカラー)。それくらい特別ではない、普通の人を丁寧にリアルに描写したことで、庶民が意図せず何かを成し遂げてしまう、“巻き込まれ型”の典型的な作品の系譜を踏んでいる」と分析。「古くはフランク・キャプラ監督作や、近年では『15時17分、パリ行き』など、主人公がいかに普通の人間かを丹念に描いたうえで、彼らが自分の意志ではないところで巻き込まれ、気が付くと世の中を変えるようなことをやっている、気づけば皆のヒーローになっている、というのは昔から多く描かれてきており、アメリカ映画は伝統的にヒーローを作り続けているんだということを改めて感じた」と語った。そのうえで、作中でも会話の中で登場する『フォレスト・ガンプ/一期一会』を例に、「過去の作品は登場人物が意図せず起こしたアクションによってまわり(世界)が変わるという形が多かったが、本作はそれに反し、主人公から脚の自由を奪う=アクションを封じるところからスタートさせていて、同じヒーロー映画の系譜ではあるが、また新しいものを見せてもらった」と舌を巻く。
また、テロや災害などの被害を扱った映画として、「本作ではフラッシュバック、トラウマの描き方が非常にうまい。事件の場面から見せたくなるところを、爆発のシーンは敢えて省略する。ではどのようにそれを見せるか、というところでフラッシュバックという技法を、彼の心理面、PTSDを絡めて見せる。そのことで、一人で耐え続ける彼の弱さ、同時に強さを表現することに成功している」と話し、その繊細で細やかな心の動きを見事に体現したジェイク・ギレンホールの演技にも注目してほしい、と締めくくった。
『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』
5月11日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ジョン・ポローノ
出演:ジェイク・ギレンホール タチアナ・マスラニー ミランダ・リチャードソン クランシー・ブラウン
配給:ポニーキャニオン
【ストーリー】 ボストンに暮らすジェフ・ボーマンは元彼女のエリンの愛情を取り戻すため、彼女が出場するマラソン会場に応援に駆け付けるが、ゴール地点付近で爆弾テロが発生。巻き込まれたボーマンは爆発で両足を失ってしまう。意識を取り戻したボーマンは爆弾テロリストを特定するために警察に協力。ボーマンの証言を基に犯人が特定されると、ボーマンは一躍、“ボストンのヒーロー”として世間の脚光を浴びるが、彼自身の再生への戦いはまだ始まったばかりだった―。
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