仲野太賀が熱く語る俳優の哲学と役作りの極意「マスターズ・オブ・シネマ」で特別講義

2025年9月6日より開幕する「第47回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のプレイベントとして、7月12日、早稲田大学にて特別講義「マスターズ・オブ・シネマ」が開催されました。今年で9回目を迎える同講義には、俳優・仲野太賀氏がゲストとして登壇。昨年のPFFアワードで最終審査員を務めたこともある仲野氏が、映画制作と俳優業への情熱を、学生たちに向けて余すところなく語りました。

冒頭は「俳優 仲野太賀を知るための十一の質問」と題した学生たちからの一問一答形式のやりとりからスタート。「思い出深い旅先は?」「最近読んで面白かった本は?」などのプライベートな質問に加え、「時代劇で気をつけていること」や「役作りで苦労したこと」などの核心を突く問いにも、仲野氏は丁寧に応じました。

特に印象的だったのは、「インディペンデントをひと言で定義すると?」という質問への回答。「インディペンデントとは、誰かが何かのために情熱を燃やしているもの。その熱を一緒に探していくことが、僕の作品選びの基準です」と仲野氏。彼が影響を受けた映画や、自身が育ってきた背景にも、そうした“熱”が込められていたことを明かしました。

イベントでは、冨永昌敬、中川龍太郎、深田晃司、瀬田なつき、是枝裕和といった錚々たる監督陣から寄せられたメッセージも紹介され、仲野氏がいかに多くの映画人たちから信頼を寄せられているかが伝わります。

PFFディレクターの荒木啓子氏が「俳優は感情をコントロールし続けなければならない大変な職業」と語ると、仲野氏は次のように応じました。「感情が出ないことは本来あってはならない。でもどうしても出ない時は、究極までやった上で“あきらめる”こともある。そんな時は『自分ひとりで作っているわけじゃない』と自分に言い聞かせます」

さらに、作品づくりがいかにチームの総合力であるかを実感する瞬間についても語り、「完成した映像を見ると、ライティングがすごくかっこよかったり、編集で助けられていたり。そういう“みんなでつくっている”感覚がたまらない」と笑顔を見せました。

学生からの「役に入り込むとは?」という質問には、「カメラが回っていない時の方が、むしろずっと役としての自分を抑えている感覚がある。演じている時の方が感情を解放できる分、人間らしくいられる」と答え、役に対する深い没入感と解放感を語りました。

続いて、自分自身の経験をどこまで役に反映させるかという問いには、「経験や見たものは引き出しとしてあるが、それだけでは足りない。だからこそ想像力が不可欠」と説明。

脚本の読み込みやキャラクター設計、相手役との呼吸に合わせる柔軟性など、自身の役作りの方法論を余すところなく披露しました。

特に俳優ホアキン・フェニックスの演技について触れ、「彼のジョーカーは“発明”としか言いようがない。あれは誰も真似できない。ああいう俳優にすごく憧れます」と熱弁。演技とは型にはまるものではなく、無限に創造の余地があることを強調しました。

盛況のままに終了予定時刻を超えた講義の最後には、学生たちへ力強いメッセージが贈られました。「PFFは僕が10代の頃から憧れていた監督たちの登竜門。今日ここにいる皆さんが、映画に興味を持ってくれるなら、ぜひこの世界に飛び込んでください。そしていつか現場で会いましょう」仲野太賀氏の真摯な姿勢と飾らない言葉が、多くの若者に強く響いた時間となりました。

■第47回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2025開催概要
開催日程:2025年9月6日(土)~9月20日(土)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ
※プログラム詳細・最終審査員は8月上旬発表予定

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