中島歩「彼女の奔放さに嫉妬しました」早川千絵監督と語る少女フキのひと夏の物語『ルノワール』イベントレポート

第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に日本から唯一選出され、国内外から高い注目を集めている映画『ルノワール』。その公開を記念して、6月29日(日)に東京・グランドシネマサンシャイン池袋にて、主演俳優の中島歩と早川千絵監督が登壇するティーチインイベントが開催された。

上映後に登壇した中島は、「視覚的にも聴覚的にも満たされる映画体験でした。フキを見つめるうちに、心が揺さぶられていった」と熱量のこもった感想を口にし、早川監督に質問を連発。「今回は“感情を描きたい”と考えてイメージを重ねた」と語る監督と、深く映画の構造について掘り下げたトークが展開された。

中島は、主人公フキを演じた新人・鈴木唯の演技に触れ、「彼女の奔放さに嫉妬しました。演技のマナーが身につく前の生々しさが魅力的だった」と称賛。監督も「なぜあんな風にカメラの前で演じられるのか」と本人に思わず尋ねたという裏話を披露し、会場の笑いを誘った。

観客から「なぜタイトルが『ルノワール』なのか?」と尋ねられると、早川監督は「80年代の少女の物語に、意外性を持たせたかった。カンヌで“印象派の絵画のようだ”という感想ももらい、作品の構造に通じる」と説明。また中島が演じた“怪しげな男”御前崎について、「彼がどんな人物かは服装や車の助手席に座る姿などで表現した」と語り、細部に宿る演出意図を明かした。

劇中に登場する“おまじない”の呪文はラテン語から着想を得ており、「クモよ、いなくなれ!」という意味が込められているという制作裏話も。観客からの「自分もスプーン曲げや地球滅亡を信じていた」という共感コメントには、監督が「子供の頃の感覚を呼び覚ます作品になれば」とメッセージを返し、会場は温かな拍手に包まれた。

■映画情報

タイトル:『ルノワール』
公開日:2025年6月20日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開中
監督・脚本:早川千絵(『PLAN 75』)
出演:鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキー、中島歩、河合優実、坂東龍汰 ほか
あらすじ:1980年代後半のある夏。11歳の少女フキが、闘病中の父と多忙な母の間で揺れ動く日常を過ごしながら、未知の感情に出会い、少しずつ大人へと近づいていく。
上映時間:122分
製作国:日本・フランス・シンガポール・フィリピン・インドネシア・カタール
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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