2023年サンダンス映画祭で開催直前までシークレット作品として詳細を伏せられ、上映後に絶賛を浴び、ドキュメンタリー部門の観客賞を受賞した『Beyond Utopia』(原題)が、邦題『ビヨンド・ユートピア 脱北』として、2024年1月12日より公開されることが決定した。併せて、特報映像も披露された。
1949年9月の建国以来、70年以上にわたり北朝鮮社会を支配してきた金日成の一族は、国家を閉鎖された状態に保ってきた。北朝鮮に住む人々はそこが「地上の楽園」だと信じ、最高指導者である金一族を神と同等の存在として敬い慕う。しかし、一糸乱れぬ壮大なマス・ゲームや、華々しい軍事パレードの裏側で、ナチスのアウシュビッツやソ連のグラーグを模した強制収容所の存在、密告や拷問、処刑、飢えや貧困といったおぞましい人権侵害の数々が報告されている。
本作の中心となるのは、祖国北朝鮮を離れいくつもの国境や川、険しい山岳地帯を超えて危険な旅に乗り出す2人の幼い子どもと80代の老婆を含む5人の家族、国に残して来た子どもとの再会を切望する母親、そして、自由を求める彼らを強い使命感をもって支援する人々だ。実に50人以上のブローカーが協力し、脱北ののち中国、ベトナム、ラオス、タイの4カ国を経由し最終目的地である韓国を目指す、総移動距離1万2000キロメートルの決死の脱出作戦が展開される。再現シーンは一切なく、撮影は制作陣のほか地下ネットワークの人々によって行われ、一部の詳細は関係者の安全のために伏せられている。スマートフォンや折りたたみ式携帯電話で撮影された映像は生々しく、いつどんな形で生死の分かれ目が訪れてもおかしくない、これ以上ないほどのスリルと危険に満ちている。脱北者にとって祖国を離れることは、悪徳ブローカーによる搾取の可能性だけでなく、捕らえられれば厳しい刑罰や場合によっては処刑されるなど、大きな危険をはらみ、残された家族も報復にさらされる可能性がある。しかし、そのようなリスクを冒してまでも、彼らには祖国を去らなくてはならない理由があるのだ。
本作を手掛けたのは、戦争で荒廃したコンゴで性暴力を受けた女性達を保護するために設立された団体「シティ・オブ・ジョイ」の活動を追ったNetflixドキュメンタリー『シティ・オブ・ジョイ~世界を変える真実の声~』にて高い評価を得たマドレーヌ・ギャヴィン監督。また多数の著作を持ち、世界に北朝鮮の実態と祖国への想いを伝え続けるイ・ヒョンソを始め、数多くの脱北者やその支援者達が登場する。
特報映像では、国境を越えたものの中国の山間部であてもなくさまよい途方に暮れる家族が、脱北の支援者であるキム・ソンウン牧師とコンタクトを取るところから幕を開ける。彼らがいるエリアは非常に危険であり一刻も早く救出をしなくてはならない、と切羽詰まった声で牧師は言う。場面写真が切り取るのは、脱北を決意した家族の祖母に語りかける母の姿、幼子を背負っての過酷な山越え、根を掴み必死に這い上がろうとする者とそれを照らす者。これまでに見たことのないような死と隣り合わせの脱北の様子をありありと捉えており、これらは真実を世界に伝えるために協力者たちによって撮られたものだ。
『ビヨンド・ユートピア 脱北』
2024年1月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
監督:マドレーヌ・ギャヴィン
配給:トランスフォーマー
【ストーリー】 韓国で脱北者を支援するキム・ソンウン牧師の携帯電話には、日々何件もの連絡が入る。これまでに1000人以上の脱北者を手助けしてきた彼が直面する緊急のミッションは、北朝鮮から中国へ渡り、山間部で路頭に迷うロ一家の脱北だ。幼い子ども2人と80代の老婆を含めた5人もの人たちを一度に脱北させることはとてつもない危険と困難を伴う。キム牧師の指揮の下、各地に身を潜める50人ものブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す決死の脱出作戦が行われる。
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