すったもんだの末に『ラ・ラ・ランド』を下し今年の第89回アカデミー賞作品賞、脚本賞、助演男優賞の3部門を制したヒューマンドラマ。人種差別やセクシャルマイノリティを題材にした本作は、簡単に飲み込める内容ではないが、確実に見た者に何かを残してる。
こんなに削ぎ取られたス語り口だとは思わなかったので驚いた。アカデミー効果で上映館が増えたけれど、基本的にはアート系単館で上映する作品かも。ただ、飾らない語りに寄り添う映像と音楽、大きなスクリーンの甲斐がある美しさだとも思いました。
主人公やそこに近い人がセクシャルマイノリティの映画だと、愛し方においてマジョリティとの差異が強調されるように感じてたんですが、ムーンライトは方法ではなくて愛することそのものを丁寧に追ったことで、差異よりも普遍的な物語になっている気がしました。
静かな愛の物語
上映中はなんでもなく観てた場面も、帰り道にあーだったのかなぁこーだったのかなぁなんて考えちゃう。余韻に浸るのが面白いね。
生き方を自分で決断するまでの物語。周りに流されるでもなく、誰かの生き方をなぞるでもなく、自分らしく生きる決断をする。人種やマイノリティとを超越して響く。普遍的で繊細で純粋で美しい映画。これは名作。
あまりにも純粋で透き通った初恋の来た道に心が洗われた。注がれる度自分からすり抜ける愛情を自ら求めにいく術さえ分からないでいるシャロンが、それでも奥底で渇望する想いに恐る恐る手を伸ばし偽りの金を脱ぎ捨て純然たる青を纏い、自分へ辿り着く物語が眩くて美しさに飲み込まれた
静かで、綺麗で、心地よいようなでも胸の奥がざわざわするような、そんな映画でした。言葉数が少ない分、表情や瞳から感じるものが多くて、ぐっときたね…
ムーンライトの魅力は映像美だけでなく、登場人物が綴る台詞にもある。「泣きすぎて自分が水滴になりそうだ」「感じるか?地球の真ん中にいる」「うちのルールは愛と自信を持つことよ」…etc.台詞だけでも、一体どんなシーンなのかと興味が湧き上がると思うんだけどな〜〜〜(訳:観てください)
『ムーンライト』
2017年3月31日公開
監督:バリー・ジェンキンス 出演:ナオミ・ハリス マハーシャラ・アリ トレヴァンテ・ローズ