【ご当地映画】実はあの映画も栃木で撮影していた!栃木の魅力が詰まった映画5選

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はじめまして。栃木県は田沼町(現佐野市)で自然とともに育った田村です。高校は少し都会な足利へ。大学進学とともに上京して、驚きそして嬉しかったのは映画館がたくさんあること。近くに映画館がなくていつも行くのはおとなり群馬県太田市の映画館。映画を観るのも一大イベント。そんな映画館難民だった私にとって、東京はまさにパラダイスだったのでした。しかし、我が故郷・佐野にも映画館ができ、さらには地元フィルムコミッションの充実により今では県内でたくさんの映画が撮られたりと、以前と比べて映画が身近なものになりました。実はあの映画も栃木県で撮影していた!栃木の魅力が詰まった映画5選を紹介します。映画を観て、是非ロケ地めぐりをしてみてください!

『猫侍』

栃木といえば!江戸ワンダーランド日光江戸村を思い出す人も多いはず。東京から約2時間で江戸時代にタイムスリップできるこの場所では、たくさんの映画が撮影されています。猫ブームのさきがけとなった『猫侍』もこの日光江戸村の全面バックアップのもと撮影されました。寡黙で強面な侍(心の声はだだ漏れ)・北村一輝と美猫・玉之丞のゆるーい時代劇コメディです。とにかく玉之丞の可愛いこと。玉之丞の魅力が溢れまくっています。日光江戸村には猫侍ファン必見の特設パビリオンが設置されており、撮影に使用した小道具や撮影時のオフショットも見ることができます。他にも、江戸人に変身したり侍体験や忍者体験ができるなど、大人も子供も楽しめるプログラムが満載です。残念ながら玉之丞に会うことはできませんが、日光江戸村のキャラクター・ニャンまげがあなたをお待ちしています!

『バンクーバーの朝日』

戦前のカナダ・バンクーバーに実在した日系移民により結成された野球チームの苦悩と活躍を描いた『バンクーバーの朝日』。劇中に出てくるバンクーバーの街並み、リアルですよね。実際にバンクーバーで撮影されたのかと思いきや……実はレトロな日本人街も野球場も、ほとんどのシーンが足利市に作られたオープンセットなのです。キャストの方々もオープンセットのスケールの大きさにとても驚いていたとのこと。また、撮影後には解体される予定だったセットですが、撮影に携わったボランティアやエキストラの方々の思いにより市内のところどころに今も残されています。映画を通して市民のみなさんのつながりが生まれるのもとてもうれしいこと。そういえば、なぜかこの映画のエキストラに登録していた父から撮影の予定を逐一報告されていたのを思い出しました。

『リリイ・シュシュのすべて』

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のアニメ映画化も話題の岩井俊二監督作品『リリイ・シュシュのすべて』もまた、足利市を中心に撮影されました。14歳のリアル。つらくて痛くて苦しいリアル。それとは対照的に描かれる美しい田園風景もまたリアル。高校への通学のため毎日使っていた両毛線、足利駅、中橋。岩井監督と故・篠田昇撮影監督の手によって切り取られた景色は、田舎で何もないと思っていた地元を好きになるには十分な理由でした。「全国を見て回ったが、田園風景や学校がイメージ通り、コンパクトに全部そろっていた」というのが足利を選んだ理由だそう。足利を見つけてくれて、魅力を伝えてくれた岩井監督に感謝です。舞台となった中学校や蒼井優演じる津田詩織がカイトを飛ばす鉄塔など、ロケ地めぐりをしたのもいい思い出。岩井監督はこの作品の後にも、『花とアリス』やドラマ『なぞの転校生』、プロデュース作品『虹の女神 Rainbow Song』他、たくさんの作品で栃木県を撮影しています。

『茶の味』

豊かな自然に囲まれた小さな町ながら、ツインリンクもてぎには全国から車好きが集まる茂木町。この町を舞台にした石井克人ワールド炸裂の『茶の味』。ノスタルジックな田舎の風景とアニメやCGが融合した、なんともシュールでユニークなホームドラマです。石井監督はロケハンをするとき、映像の核となる場所を思い描いて探していくそうです。『茶の味』の場合は”川”。なかなか出会えず苦戦していたときに見つけたのが茂木町の那珂川。集落を囲むように流れ、その向こうには連なる山が。理想の川を見つけたらまさに思い描いていた風景に出会ったとのこと。我修院達也扮するアキラおじいが「山よ」を歌い踊るのも納得の風景です。また、妹の幸子が通う小学校は残念ながら廃校となってしまったのですが、現在はこころ宿NAGOMIとして生まれ変わっています。そば打ちやこんにゃく作りなどふるさと体験ができるので、ロケ地めぐりと一緒に泊まるのもおすすめです。
ちなみに、石井監督のアニメ作品『HAL&BONS』に出てくる、うざいけど憎めない訛ったインタビュアーのモチ君は宇都宮北高校出身。こんなところにも栃木が顔を出しています。

『ディアーディアー』

最後に紹介するのは最新作『ハローグッバイ』が第29回東京国際映画祭日本スプラッシュ部門にノミネートされた、足利市出身の菊地健雄監督の映画『ディアーディアー』。監督の地元、足利を舞台に、幻のリョウモウシカに翻弄される三兄妹を描いた映画です。リョウモウシカは実在しませんが、昔、友達の「鹿肉っておいしいんだよ。おじいちゃんが山で捕ってくるの」という話を思い出しました。今注目のジビエです。
劇中では、地元に帰るとバッタリ知り合いに会うとか、噂話がすぐに広がるとか、田舎特有のあるあるがちりばめられていて、地方出身者には共感必至。私もスーパーに行ったら必ず誰かに会うし、母親同士の情報網の発達ぶりも田舎ならでは。それも、人と人とがすごく密着しているからなのでしょう。
私が栃木で暮らしていたときよりも映画館が増え、映画へのロケ地提供も増えていく中、足利市出身の竹馬靖具監督、大田原市出身の渡辺紘文監督など、栃木県出身の若手映画監督が活躍しています。映画の舞台になったり栃木出身の監督が活躍することにより、若い世代にももっと映画に興味を持ってほしい、さらには次世代の日本映画界を担う存在になってほしいです。(田村沙貴)