最新VFXを駆使して描く地球奪還のバトル『スカイライン-奪還-』リアム・オドネル監督 インタビュー

突如現れた謎の生命体による地球征服の3日間を最新のVFXを駆使して描き、人類の救いのないラストへの衝撃に賛否両論が巻き起こりスマッシュヒットとなった『スカイライン-征服-』(2010)。その続編で、侵略された人類が立ち上がり、地球奪還の激しいバトルを繰り広げる映画『スカイライン-奪還-』が、10月13日より公開となる。このほど、本作の製作・監督・脚本を務めた、VFXスタジオ「ハイドラックス」所属のリアム・オドネルが来日し、本作の製作や日本の印象についてインタビューで語った。

リアム・オドネル監督 オフィシャルインタビュー

Q:今回が初来日だそうですね。

オドネル:初めてです。前作の『スカイライン-征服-』の際に、グレッグ(・ストラウス/ハイドラクス創設者)と一緒に来る予定だったんだけど、2011年の震災の影響もあって来ることができなかったんだ。ずっとそれが心に残っていて、グレッグは日本でみなさんと一緒に映画を見て「理想的な観客だ。ああいう人たちと自分の作品を見られて嬉しい」と言っていて、ずっと来たいと思っていました。

Q:実際、来てみての日本の印象は?

オドネル:いまも(スマホで)グレッグとコリン(・ストラウス)とメッセージのやり取りをしていたんだけど「ここに移住したい」って書いたよ(笑)。みなさん礼儀正しく、整理整頓されていてトイレもきれいだし、食べ物もおいしい。素晴らしい国だと思います。

Q:日本で行きたい場所は?

オドネル:魚が大好きなので北海道に行きたいかな?

Q:前作は脚本担当でしたが、本作では初めて長編映画の監督を務めました。「CEO的な立場で全体を見ていた」とおっしゃっていましたが、監督を経験されていかがでしたか?

オドネル:世界で一番楽しい仕事だと思っています。映画を作るというのは「旅路」であり、それぞれの部門の才能ある人々と最終的にひとつの作品を作り上げる長い旅だと思います。クリストファー・クロースプという優れた撮影監督と仕事ができたことも光栄だったし、美術監督にコンセプトデザイナー、現場のスタッフ、俳優陣、スタントマン、スーツアクター、それから撮影後の編集マンや視覚効果を担当したスタッフ、ひとりひとりから学ぶことがすごく多かったし、一緒に仕事がデキたことは大きな喜びでした。監督として自分が決断を下さないといけない状況もありましたが、あくまでも優秀なスタッフや俳優陣が支えてくれらからこそ、この作品が出来上がったのだと感謝しています。やはり、一緒に働きたいと思えるような人間であることが大事なんですね。意識したのは、柱としてみんなが支える存在でありつつ、みんなの意見に耳を傾け、最終的にいい作品を完成させるために、一番いいアイディアを採用するということでした。

Q:前作と異なり、監督という立場になったことで最も苦労した部分は?

オドネル:今回、脚本も手がけましたが、全体を見なくてはならないので、脚本を書いて、それを持って現場に入ると、細かい部分を見落としていることに気づくんです。「あれ? なんでこんなふうにしてしまったんだ?」とフラストレーションがたまりました(苦笑)。それを教訓に、いま新たに参加しているプロジェクトでは、共同の脚本家と組んでいます。客観的な視点で見てくれる存在の重要性を今回の経験を通じて痛感しました。

Q:前作と同じ時間軸で物語は展開しますが、ストーリーのテイストはガラリと変わりました。激しいアクションはもちろんですが、随所に親子や家族の愛情、つながりが描かれています。こうした展開に関してはどのように生み出されたのでしょうか?

オドネル:前作が、高層マンションからの視点で物語が進んだので、今回は別の視点で描きたいと考え、地上レベルでの人々の視点を描くというところからスタートさせようとは当初から考えていました。そして、宇宙人の襲撃から生き残った人々が宇宙船で出会ったら、そのクレイジーな展開に舵を切ろうとも最初から構想していました。前作と同じ時間軸の中で全く別の視点の物語が展開するという点に関しては、ヒントを得たのは「LOST」のシーズン2の「Other 48 Days」というエピソードからです。シーズン1の全体像を違う視点で描いていて、面白いと感じて、それを採用したんです。

Q:物語の上で、ラオスでの戦いが描かれており、実際にはインドネシアで撮影が行われています。インドネシアのアクションスターであるイコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンも出演していますが、撮影や彼らの出演の経緯についてお聞かせください。

オドネル:実は僕の妻がラオス出身で、2009年に結婚したのですが、その縁もあってラオスに関しては詳しく知っていて、アメリカとの外交関係、アメリカ軍による空爆の歴史についてもよく理解していましたので、脚本の執筆段階でラオスを舞台にというのは考えていました。歴史を踏まえて、映画の中でアメリカ人を現地人がなかなか信用しないという描写も書くことができたんです。ロケハンをすることになって、候補として挙がったのがインドネシアでした。現地のスタジオの協力を得てロケハンを行ない、撮影場所が決まったのですが、シンガポールでスタジオの人たちと話している中で「スアとチーフの配役はもう決めているのか?」と聞かれ、当時はまだ決めていなかったんですが、先方からイコとヤヤンの起用を薦められたんです。僕にとっては昔からファンだったので、まさかそんなチャンスが巡ってくるとは!と思ったのですが、確認したら彼らのスケジュールも空いており、脚本も気に入ってもらえて、エージェントを通じてトントン拍子で彼らの出演が決まったんです。さらに、出演だけでなく、彼らがアクションの振り付けまでしてくれることになって、当初はスアとチーフの役に関して、バトルシーンは2つくらいだったんですが、彼らの出演が決まって、脚本にスアとマークが対決するシーンやスアが最初に登場するシーンのアクションを加えることになったんです。急な話でしたが、24時間で彼らは振り付けを考えて、こなしてくれたんです。

Q:同スタジオならではの1700ショットに及ぶVFXも楽しみですが、制作に苦労されたシーン、「ここは目を凝らしてよく見てほしい」と思うシーンは?

オドネル:最初は1500ショットでしたが、最終的に1700まで増えたんです。(選ぶのが)難しい質問だけど、宇宙船が激突するシーンかな。あと、最後のロングショットはいろんな要素が詰め込まれていて、3Dもあるし、いろんな(宇宙船や小惑星の)破片が飛んでいるという意味でも難しかったです。好きなショットを挙げるなら、そのエンドクレジットに行く最後のシーンですね。宇宙船の中から宇宙の外を見せるシーンで、それは物語が先に続いていくようにも見えて、個人的にすごく気に入っています。あと、アルファタンカーが開いて、シェパードが出てくるシーンですけど、何度作り変えてもなかなかスケール感がうまく伝わらなかったんだけど、ショーン・アルバートソンというスタッフが加わり、彼が「もう少し後ろを延ばせばいいんじゃないか?」と提案してくれて、おかげで求めていた映像が出来上がったので、そこも印象に残っています。

Q:科学的な観点で正しい反応(墜落の時、煙で全てが覆われてしまう)や、現実として正しい爆破や墜落の映像ではなく、「見て楽しい」シーンを優先する場合もあると仰っていましたが、実際、宇宙船が墜落したり、グシャッとつぶれたりするシーンはカタルシスがありますね。

オドネル:そうですね(笑)。激突のシーンは、煙で覆っている部分も多少はあるのですが、見てワクワクする、楽しいシーンになっていると思います。もうひとつ、重視したシーンで、タンカー同士が戦う“カイジュウ(怪獣)”のシーンは、最初はもっと早い動きだったのですが、あえてゆっくりにして、取っ組み合っている姿を見せるようにして、加えて、カイジュウが取っ組み合いを始めた瞬間、20%ほどズームアップし、寺院の陰に怪獣が隠れたときに少しズームアウト、また姿を見せたときにズームイン、最後にまたワイドで見せるというふうに、インパクトをより大きくするための工夫もしているんです。

Q:脚本家としてキャリアを始められて、VFXを学び、こうして監督も務めていらっしゃいますが、今後のキャリアについて、どんなビジョンをお持ちですか?

オドネル:今後も監督を続けたいし、脚本も書き続けるつもりだし、プロデューサーとしても活動していきたいと思います。ストーリーテリングが本当に好きだし、映画を作るのを愛しているので、ずっと続けていきたいです。いままでTVではパイロット版を1本作ったことしかないので、その道も開拓したいし、いままで培ってきたことをさらに成長させて、情熱を忘れずにもっと向上させて行ければと思っています。

Q:ハイドラクスの存在、位置づけを「メジャーとインディペンデントの間にある」と仰っていましたが、その立場でいることをご本人も強く望んでいらっしゃるんでしょうか?それともメジャーで大作を手がける意思もおありですか?

オドネル:チャンスをいただけるなら、僕はいつでもオープンなので、どんどん広げていければと思っているよ(笑)。いままで、200万ドルから2500万ドルのバジェットまで、いろんな範囲で活動してきているので、活動をインディペンデントに限っているわけでもないし、一緒に仕事をするパートナーの存在次第、ストーリー次第で何でもするし、シュワルツェネッガー、キアヌ・リーヴス、トム・クルーズといった憧れのアクションスターといつか仕事をしたいという夢を抱いていて、それが自分の原動力にもなっているので、そのためにも技術を磨いていって、いつかそこにたどり着ければいいなと思います。

Q:日本のファンにメッセージをお願いします。

オドネル:SF、アクション、ホラー、マーシャルアーツに怪獣…そんなジャンル映画が好きな人にぜひ楽しんでほしいし、80年代、90年代のそう言ったジャンル映画を懐かしむ人にも楽しんでもらえる映画だと思います。加えて、家族愛だったり、愛が詰まった映画でもあるので、純粋に楽しも出もらえたら嬉しいです。ビールを飲みながらリラックスして、ワイワイと笑って楽しめるエンターテイメント作品として作ったので、多くの人に見てもらえたらと思います。

『スカイライン-奪還-』
10月13日(土)より、新宿バルト9他全国ロードショー中
監督・脚本・製作:リアム・オドネル
製作:グレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス
VFXスタジオ:ハイドラックス
出演:フランク・グリロ ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ジョニー・ウエストン イコ・ウワイス ヤヤン・ルヒアン
配給:REGENTS ハピネット

【ストーリー】 突如として世界各地に現れ、地上から人々を吸い上げていく未確認飛行物体。軍隊の攻撃も空しく、地球はわずか3日間で征服された。しかし、人類反撃の希望は僅かに残されていた。息子のトレント(ジョニー・ウエストン)と共に宇宙船に吸い込まれたLA市警の刑事マーク(フランク・グリロ)は、人間の心を残したままエイリアンになったジャロッドとの共闘により宇宙船を破壊することに成功した。内戦が続くラオスに墜落した宇宙船から、生まれたばかりのジャロッドの娘、ローズと共に脱出したマークは、反政府組織のボス、スア(イコ・ウワイス)のアジトに身を潜める。そんな中、エイリアンに対抗する手がかりを見つけだした彼らだったが、アジトは大量のエイリアンに囲まれていた!いま、地球の支配者の座を懸けて、残されたわずかな武器と肉体を駆使した最終決戦が始まろうとしていた…。

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