ピーター・ブルック 1968年の監督作『テル・ミー・ライズ』冒頭映像&ピーター・バラカン、佐々木俊尚、三浦瑠麗ら著名人絶賛コメント

演劇界の巨匠ピーター・ブルックの第3作にあたる、1968年製作の長編映画『テル・ミー・ライズ』が8月25日より公開となる。このほど、本作の冒頭映像がお披露目となり、併せて、著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

1968年に激化したベトナム戦争を痛烈に批判した本作は、その年のカンヌ映画祭に選出されるも、突然の取り下げにより上映中止に。しかし、同年のベネチア映画祭に選出され、審査員特別賞次点とルイス・ブニュエル審査員賞を受賞した。劇場公開は、アメリカやイギリスの一部の劇場でしか行われず、さらに様々な妨害を受け、短期間のみの上映となった。その後、本編も紛失し、長年幻の作品とされてきたが、2011年に本編が発見。監督自身と近親者の手によって、映画遺産保存を専門とする2つの財団(グルパマ・ガン財団とテクニカラー財団)と共に完全なる修復を行い、2012年に復活上映。50年の時を超えて、ついに日本でも劇場公開となる。

冒頭映像は、ベトナム戦争で被害にあった、包帯で全身を覆われた赤ん坊の写真から始まり、軽快なリズムでありながら「ベトナム戦争についての嘘を聞かせるがいい」という痛烈な歌詞が印象的な歌を聴くことができる。そして最後には、戦争被害者の写真を見た男性が「これを見ても同じことを続けるってどういう神経だ?」と言う、ピーター・ブルックのベトナム戦争への想いを代弁しているかの様なセリフも収められている。

著名人 絶賛コメント

■ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
最初は驚く低予算感とビミョーなミュージカル部分にもかかわらず、歴史的価値満載の映画です。また詳細は違っても50年前に起きていたことはまさに今再び起きていて、それにどう向き合うべきかというヒントが特に最後の辺りに濃厚に出ています。

■鳥越俊太郎
ベトナム戦争中の1967年に作られ、一旦消滅したと思われた映像の復刻版。英国人のベトナム戦争に対する複雑で屈折した思いがミュージカル風に綴られる。衝撃の焼身自殺や銃殺処刑シーンは実写だろう。今でもショッキングだ。

■佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
行動、暴力、国際政治、抗議の焼身自殺、徴兵拒否…あらゆる面からベトナム戦争とどう向き合うのかを問い詰め、「目的は手段を浄化するのか」「私たちの当事者性とは」という21世紀に通じる主題へとつながっていく。この重いテーマをミュージカルと合体させ、エンタメとしても成立させているピーター・ブルックの手腕に戦慄。この傑作が甦ったことに心底感動した。

■三浦瑠麗(国際政治学研究者)
西洋社会の戦争としてのベトナム戦争。知識人の煩悶と混乱。この映画は過ぎ去ったあの時代を蘇らせる。70年代とは、西洋の時代の終わりの始まりであったのかもしれない、とそんなことを、トランプ時代に生きる私はふと思わされた。

■首藤康之(バレエダンサー)
この映画はピーター・ブルック哲学の原点を垣間見る思いがする貴重なメッセージフィルムだ。そして、なにより真実と向き合う勇気をもたせてくれる。

■操上和美(写真家)
夢のように戦争は炸裂する。そして、自分の中に眠る残虐性をゆり起す。

『テル・ミー・ライズ』
8月25日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー
監督:ピーター・ブルック
出演:マーク・ジョーンズ
配給:キノフィルムズ

【ストーリー】 ギンズバーグのビート・ジェネレーションとブラックパンサー、カウンター・カルチャー・ポップが交差する1968年のスウィンギング・ロンドンを舞台に、傷ついたベトナム人の子供の写真に慄いた3人のイギリス人の若者が、ベトナム戦争における暴力のスパイラルを理解し、自分たちの無力感を乗り越えようとする…。歌、証言、大衆デモを通して、ピーター・ブルックは彼の作品の中でも最も重要な作品の一本を監督した。戦争の不条理に対する破壊的なアイロニーを含んだ風刺映画である。

© Brook Productions 2012