『若い女』カンヌ映画祭カメラドール受賞のレオノール・セライユ監督が語る映画愛!影響を受けたのは「河瀨直美監督と石井克人監督」

2017年のカンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞し、フランスで最も権威あるセザール賞へのノミネートも果たした、レオノール・セライユ監督のデビュー作『若い女』が8月25日より公開となる。このほど、レオノール・セライユ監督が、本作のもととなる脚本を執筆した学生時代、そして大きな共感を集めた初監督作品である本作について語った。

本作は、レオノール・セライユ監督がフランス国際映画学校で取り組んだ卒業制作の脚本を自ら映画化。10年来の恋人に振られ、家もお金も仕事もない状態でパリの街に放り出されてしまった女性ポーラが奮闘する姿を等身大で描く。

「もともと文学を勉強していて、最初は脚本家になろうと思っていたの。映画を観に行くために授業をサボっていました」と語るセライユ監督は、リヨン、パリ、バルセロナで文学を学んだ後、フランス国立映画学校の脚本制作コースへ。授業をサボって映画を観に行くほどの映画愛が、ユニークでエネルギッシュな監督デビュー作を生み出した。

学生時代に観た映画で影響を受けたのは、なんと日本の監督たち。「特に、河瀨直美監督の『沙羅双樹』(2003)と石井克人監督の『茶の味』(2004)を観ていました。そして、映画には文学以外の何かがあると気付いたのです」と述懐し、言葉で表現する文学と、脚本と俳優たちの演技に音楽を重ね合わせて映像で表現する映画との違いを見つけた。お気に入りの女性監督の作品には、カメラドールを受賞した河瀨直美監督の『殯の森』(2007)を挙げている。

一方で、『若い女』を監督するにあたって影響を受けた作品はほんのひと握りだったとのこと。「撮影監督のエミリー・ノブレに影響を与えた『Sue』(1997)に加えて、マイク・リー監督の『ネイキッド』(1992)のようなキャラクターありきの映画です。この映画で素晴らしい演技を披露している俳優デヴィッド・シューリスに匹敵する女優を見つけたかった」と、個性的で強烈なヒロインを求めたと語る。「例えば、バーバラ・ローデンが監督、脚本、主演をつとめた『ワンダ』(1970)、ジョン・カサヴェテス監督作品『こわれゆく女』(1975)のジーナ・ローランズ、ロッジ・ケリガン監督作品『Claire Dolan』(1998)のカトリン・カートリッジなど、女性たちは孤独ですが、とても威厳があり、私にとって演出や演技のための基準点となったのです」と、名女優たちの演技を基準に演出したことを明かしている。

▲レオノール・セライユ監督

『若い女』
8月25日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
監督・脚本:レオノール・セライユ
出演:レティシア・ドッシュ グレゴワール・モンサンジョン スレマン・サイエ・ンディアエ
配給:サンリス

【ストーリー】 フランス、パリ。31歳のポーラは、10年付き合った年の離れた恋人に突然捨てられる。お金も、家も、仕事もないポーラは途方に暮れ、苦しまぎれに恋人の飼い猫ムチャチャを盗む。猫を連れてきたことで、居候先の友人宅からも、安宿からも追い出され、実家に戻ろうとするも、疎遠だった母親からは拒絶されてしまう。パリにはポーラの居場所などなかったのだ。なんとか住み込みのベビーシッターのバイトを見つけ、ショッピングモールの下着屋でも働き始める。ようやく自分の居場所を見つけたかに思えたが…。

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