映画『モリのいる場所』樹木希林、北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ!」で「CUT ABOVE(カット・アバブ)」賞を受賞!

97歳で没するまで生涯現役であり続けた伝説の画家・熊谷守一=モリのエピソードをもとに、沖田修一監督が晩年のある1日をフィクションとして描き、山﨑努と樹木希林が初共演を果たした映画『モリのいる場所』が5月19日より公開中。このほど、現地時間7月26日に、米ニューヨークで行われた北米最大の日本映画祭「第12回JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ!」で、本作に出演した樹木希林が国際的に活躍する日本人俳優に授与される「CUT ABOVE(カット・アバブ)」賞を受賞し、ニューヨークにあるジャパン・ソサエティー(JAPAN SOCIETY)にて行われた授賞式に参加した。

「ジャパン・カッツ!」は、ニューヨークにあるジャパン・ソサエティー主催の日本映画を紹介する映画祭で、2007年から毎年7月頃に開催されており、映画上映、出演する日本の映画監督や俳優をゲストとして招いた座談会や舞台挨拶などが行われる。今回、樹木が受賞したのは、日本映画界に貢献をしている監督や俳優へ贈られる「Cut Above Award for Outstanding Performance in Film(カット・アバブ賞)」。授賞式に登場した樹木は、満席の会場の観客全員からスタンディングオベーションで迎えられ、舞台挨拶とともに、上映後には観客との質疑応答が行われた。

■樹木希林 受賞式でのコメント
(私の年齢にあたる)75歳というのは日本では後期高齢者です。本当は次の世の支度をしなければいけないはずなのに(会場爆笑)、このような賞をいただき、またこんな重いトロフィーをいただきどうすればいいのか分かりません。人間というのは面白いもので、褒められるのはいつでも嬉しいですね。

■上映後の質疑応答 ※260席が瞬時に売れて満席
MC:山﨑さんとは同じ文学座にいらっしゃったそうですが、過去に共演されたことはありますか?

樹木:私は山﨑さんとまさか一緒の芝居をすることになるとは、夢にも思いませんでしたね。それくらい傾向が違うんです。あちらは正当な俳優、こちらはちょっと…(観客笑う)こういう俳優だから、接点がありませんでしたから、これはまあ長く役者やっててよかったなーということでした。

MC:『モリのいる場所』には悪役というキャラクターがいなく、唯一悪いマンションオーナーのシーンでさえ、現場監督が息子の絵をモリに見てもらうことによりコミカルになっていますね。この時モリの「下手でいい。下手も絵のうち」に関しては同意見ですか?

樹木:守一さんの人間として目指すもの、生きる欲というものは、今の日本人にはなくなりつつあるんですよね。そこへ集まってくる人たちだから、そんなに悪くならない。みんな人間は悪い面もいい面も持ってますけど、悪い部分を出さないですんでいるんですね。だからモリのいる場所にはそういう風にみんなチャーミングなところが出てくるんじゃないかなと思いました。

観客Q:これまで数多くの監督の作品に出演されていますよね。その中にはもちろんベテラン監督が多いかと思いますが、キャリアを積むにつれて、若手監督とお仕事をされることはどうですか?困難なことはありましたか?

樹木:それはねー、やっぱり結婚相手によって違ってくるということがあるから、その都度違うと思います、相手が変われば。だけど根本的には、人間を描こうという、人間は世界共通だなと思っているので、人間を描こうというのがあるときに、新しい出会いがあったなと思いますね。でもわりかし、最近は人間に興味を持つという作り手が少ない気がする。技術とか、映像とか、映画がそっちにいってると、あまり好きになれない。だからでも次の世代の人に、期待をしてます。日本映画どうかなー。

観客Q:お芝居とは思えないほど自然体で演技されてますが、演じる際には、どのように気持ちを持っていくのか、何か工夫されていることはありますか?

樹木:それは教わったり、教えたりしてできるものではないんです。なんといっても才能とセンス。だけどこんなこと言っても仕事がなくならないんです。困っちゃうわね(笑)。

■樹木希林の「CUT ABOVE(カット・アバブ)」賞授賞理由
日本映画界を牽引する存在として長年活躍され、人間のさまざまな側面をその複雑な役柄の中で表現しつつ、画面の外でも彼女独自の人生のストーリーを形つくって来られた様に思います。今年のジャパン・カッツ!においてCUT ABOVE賞を彼女に贈らせていただくのは、まさにこれらの功績に加え、それが同時に日本映画界に活力を与えるものであり、人間であるということに対する深い洞察を与えるものであるからです。

■『モリのいる場所』の選出及び樹木の演技について映画祭のコメント
『モリのいる場所』の中の樹木希林さんは彼女特有の茶目っ気と人々を魅了させる演技を見せ、観客側に人間の本質の深みを感じさせてくれながらも、完璧なコメディーのタイミングをも見せてくれます。沖田修一監督の一見軽やかなスタイルは世界中の観客を神秘的な庭の中で存在する愛おしい主人公たちへと惹きつける力があり、その主人公たちを演じる一流の役者さんたちが一層輝いています。2012年にはセンターピース・タイトルとして『キツツキと雨』と2016年にはオープニング作品として『モヒカン故郷に帰る』をジャパン・カッツ!で上映させていただいていることから、今回のセンターピース上映の『モリのいる場所』も含むと、沖田監督は映画祭で歴代最多数のテントポール(ハイライト)上映の記録保持者にもなります。

『モリのいる場所』
5月19日(土)より全国ロードショー中
監督・脚本:沖田修一
出演:山﨑努 樹木希林 加瀬亮 吉村界人 光石研 青木崇高 吹越満 池谷のぶえ きたろう 三上博史
配給:日活

【ストーリー】 自宅の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫など、守一の描く絵のモデルとなる生き物たちが住み着いている。守一は30年以上、じっとその庭の生命たちを眺めるのを日課にしていた。普段、守一は妻の秀子と二人の生活をしているが、毎日のように来客が訪れる。守一を撮ることに情熱を燃やす若い写真家の藤田くん、看板を書いてもらいたい温泉旅館の主人、隣人の佐伯さん夫婦、郵便屋さんや画商や近所の人々、そして、得体の知れない男…。今日もまた、モリとモリを愛する人々の、可笑しくて温かな1日が始まる。

(c)2017「モリのいる場所」製作委員会 (c)Mike Nogami/Japan Society