タイ出身アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の長編3作を特集上映!「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2018」8月開催決定!

映画や美術のフィールドで世界的に活躍するタイのアピチャッポン・ウィーラセタクンの代表的な長編劇映画3作を上映する特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2018<船出の前に—もう一度アピチャッポン>」が、8月11日から9月7日まで渋谷シアター・イメージフォーラムにて開催されることが決定した。

2010年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた『ブンミおじさんの森』が劇場公開されて以来、日本でも多くのファンを獲得して来たタイ出身の映画監督・美術作家アピチャッポン・ウィーラセタクン。2016年には東京都写真美術館での個展「亡霊たち」を開催、2017年にはTPAMで「フィーバー・ルーム」が上演され、アート界でも大きな話題と多数のファンを集めた。

アピチャッポンは、2015年のカンヌ国際映画祭に出品した集大成的な傑作『光りの墓』以降、長編映画を発表していないが、現在は次回作の準備中。その作品は、初めてタイを離れて南米コロンビアで撮影し、さらに、昔から親交があり、ビデオインスタレーション作品に出演したこともある女優ティルダ・スウィントンが主演を務めることで話題を呼んでいる。

本イベントでは、これまで故郷であるタイ東北部の伝説や民話、個人の記憶、土地の記憶から数々の映像作品を制作し続けてきたアピチャッポンの新たなステージが始まるこの機会に、もう一度、彼の長編映画の代表作3作を特集上映する。今回上映されるのは、『世紀の光』(2006)、『ブンミおじさんの森』(2010)、『光りの墓』(2015)の3作。また、ユニークな企画として、『光りの墓』上映前に短編『国歌』を上映。タイの映画館では映画本編を上映する前に国歌が流れ、観客が起立する慣習があるが、『国歌』は、それをアピチャッポンらしいやり方で映像にした短編作品となっている。そして長編『光りの墓』の中には、さらに独特な描写で国歌が流れる映画館のシーンを描いている。また、『世紀の光』と『光りの墓』(一部の回)上映前には、アピチャッポンから日本のファンに贈られたメッセージ動画も紹介される。(詳細:公式サイト www.moviola.jp/api/)

上映作品

『世紀の光』
【作品概要】 映画は2つのパートに分かれている。前半は地方の緑豊かな病院、後半は近代的な白い病院が舞台。登場人物の多くも重なり、医師の恋の芽生えなどのエピソードは2つのパートで反復される。

■アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 コメント
これは愛についての映画で、医者だった両親から着想を得たものです。この映画には母の記憶、亡くなった父の記憶、そして僕自身の記憶もミックスしています。この映画の2部構成には自分自身に起きた変化や故郷の町に起きた変化が反映されているといえます。そして現場では違う種類の人間が家族のようになって作りました。僕にとって特別な映画です。


© 2006 Kick the Machine Films

『ブンミおじさんの森』
【ストーリー】 腎臓の病に冒され、死を間近にしたブンミは、妻の妹ジェンをタイ東北部の自分の農園に呼び寄せる。そこに19年前に亡くなった妻が現れ、数年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れる。

■アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 コメント
今、タイには“不適切”な活動を禁止し、それらを根こそぎにする政府機関が存在します。そのこととブンミおじさんの物語、おじさんが信じていることを関連づけないわけにはいきません。ブンミおじさんは、何か消えゆくもの、すなわち昔ながらの映画館や劇場のように廃れてゆく何か、現代的な風景の中には居場所のなくなった古いスタイルの象徴なのです。


©Kick the Machine Films

『光りの墓』
【ストーリー】 タイ東北部の町。かつて学校だった病院。原因不明の“眠り病”にかかった兵士たち。ある日、病院を訪れたジェンは前世や過去の記憶を見る力を持った若い女性ケンと知り合い、眠り続ける兵士イットの面倒を見始める。

■アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 コメント
3年ほど前、ある病院で、謎めいた病気にかかった40人の兵士が隔離されているというニュース記事を読みました。僕は自分が育ったコーンケンの病院と学校のイメージをその話に重ねました。当時、僕は眠ることに魅了され、夢を書き留めることに熱中していました。それは、タイの現実のひどい状況から逃げる方法だったんだと思います。


© Kick The Machine Films / Illuminations Films (Past Lives) / Anna Sanders Films / Geißendörfer Film-und Fernsehproduktion /Match Factory Productions / Astro Shaw (2015)

特別上映『国歌』


©Kick the Machine Films