是枝裕和、本当に重い最高賞のトロフィーに「筋肉痛が治ったのが昨日(笑)」映画『万引き家族』凱旋帰国 記者会見レポート

『三度目の殺人』が数々の賞で称えられた是枝裕和監督の長編14作目となる最新作『万引き家族』が、第71回カンヌ国際映画祭 「コンペティション」部門で最高賞であるパルムドールを受賞した。このほど、是枝監督が凱旋帰国し、5月23日に羽田空港国際線ターミナル 出発ロビー4階「TIAT SKY HALL」にて記者会見が行われた。

大勢のマスコミ記者が待つ会場に、黄金に輝くパルムドールのトロフィーを抱えて登場した是枝監督。ニューヨークでの仕事を終えて空港に到着したばかりだという是枝監督は「ようやく、ここに帰ってきてスタッフのにこやかな顔を見たら、ちょっと(受賞の)実感が湧いてきました」と笑顔で挨拶した。

記者からの「まず家に帰ってやりたいことは?」という質問に、「今、シャワーを浴びたので、ちょっと一息つきました」と安堵の表情を浮かべたが、「LINEとメールが山のようにたまってしまって、ありがとうの返信すらできていない。今年は年賀状も出せていないので…」と、まずは周りに感謝の言葉を伝えたいことを明かした。

パルムドールを受けて、映画とテレビの関わり方に変化はあるかという質問には「変わらないです」と即答し、カンヌでの公式上映で9分間のスタンディングオベーションを受けた時も「テレビディレクター(出身)の性で、観察してしまう。そろそろ終わらないと、“『拍手がまだ欲しいのか』と思っていそうな人”がいないか探してしまい、楽しめないところがある。根っこは変わらないし、そこが強みであり、弱点かもしれない」と自らを分析。今後も変わらぬスタンスで、テレビと映画に関わっていくことを宣言した。

受賞理由について聞かれると、「審査委員長のケイト・ブランシェットさんが、安藤サクラさんの泣く芝居を観て、『審査委員たちがこれから撮る映画の中であの泣き方をしたら、安藤サクラの真似をしたと思ってください』とおっしゃってました。彼女は審査委員をとりこにした」と、ケイト・ブランシェットとの立ち話でのやり取りを披露した。

トロフィーに関しては「本当に重いんです。いただいた当日はずっと持ち続けていたので、筋肉痛が治ったのが昨日ぐらい(笑)。一晩ぐらいは抱いて寝ようと思います」と語り、記者会見は和やかに終了した。

また、パルムドール受賞を受けて、本作の公開が全国約200館から300館以上に拡大。6月2日、3日の先行上映も決定し、海外でも149の国と地域で公開される。さらに、是枝監督が自ら書き下ろした小説「万引き家族」も、映画公開に先だち5月28日に発売が予定されている。

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『万引き家族』
6月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー 安藤サクラ 
松岡茉優 池松壮亮 城桧吏 佐々木みゆ
緒形直人 森口瑤子 山田裕貴 片山萌美 / 柄本明
高良健吾 池脇千鶴 / 樹木希林
配給:ギャガ

【ストーリー】 高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく─。

(C)2018『万引き家族』 製作委員会