野上照代&三船史郎が登壇!ドキュメンタリー『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』公開記念トークイベント レポート

日本を代表する名俳優、三船敏郎の生涯とその映画人生を描いたドキュメンタリー映画『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』が5月12日より公開中。このほど、5月19日に代官山蔦屋書店にて公開記念トークイベントが行われ、黒澤明監督作品に参加した映画スクリプターの野上照代と、三船敏郎の長男であり三船プロダクション代表取締役の三船史郎が登壇した。

盛大な拍手に迎えられて登壇した野上は「家が近ければ毎日通いたくなるような、素敵な場所ですね」と初めて訪れた代官山蔦屋に驚きを見せた。続いて史郎は「本日はお越し頂きありがとうございます。このような場は慣れておりませんので何を言うかわかりませんが、よろしくお願いします」と緊張した様子で挨拶をした。

早速本作を見た感想を聞かれると、史郎が「いい映画ができたな」としみじみと語ると、野上は「思っていたよりずっと面白かった。言っては悪いけれど、あまり期待していなかったので」と歯に衣着せぬ感想で会場を沸かせた。本作に出演されていることについて言及されると、野上は「生き残っているのは私くらいしかいないから」と笑いを誘い、続けて「私ももうすぐいなくなるかもしれない。今日は貴重なイベントです。来年はいないぞ!」と茶目っ気たっぷりに語り、会場にさらに大きな笑いを起こした。

父・三船敏郎がすごい俳優であると認識した時期を聞かれた史郎は「初めて映画館で見た父の映画が『蜘蛛の巣城』。志村のおばちゃん(志村喬の妻)に連れられて渋谷東宝で超満員の中、立ち見で見た」と超満員の劇場を見て父の偉大さを感じた思い出を語った。撮影により家にいる時間が少ない父・三船について聞かれると、史郎は「初めての海外出演作『価値ある男』の撮影が終わる1週間前ほどに、父がメキシコまで家族を呼び、ピラミッドに連れっていってもらったり、カジキ釣りをした。ニューヨークにも寄って、ヨーロッパにも渡った」と世界のミフネのスケールの大きな家族サービスを語った。三船が海外でも人気を得た理由を聞かれた野上は「そんなことはわからない。外国人の気持ちなんて日本人の私にはわからない」ときっぱりと語り、会場の笑いを誘った。史郎は「演技の迫力や威勢の良さが外国人受けしたのではないか」と語った。

ミフネの魅力の一つである髭にまつわる話になると、史郎は「普段は髭を剃っていた。『赤ひげ』のときは、髭を生やして赤ひげに見せるために脱色していたが、薬品で肌がピリピリして鬱陶しがっていた。撮影が終わってすぐに髭を剃ったら、実は撮り足しがあったが、撮れなくなってしまった」と貴重なエピソードを披露。撮影時には台本を持たないことで有名な三船のエピソードについて、史郎は「家でも一体いつ台本を覚えているのか見たことがなかった」と語ると、「メキシコ映画『価値ある男』の際にスペイン語をカタカナに起こして家中の壁に貼っていたことは唯一記憶にある」と、努力をあまり人前で見せない三船の姿を語った。それを受けて野上は「『価値ある男』のテレビ放映に際し、日本語吹き替えの依頼が三船さんに来た時、“苦労してスペイン語を覚えたのに、なぜ日本語をやらなくてはいけないのか”と烈火のごとく怒っていた」と驚きのエピソードを懐かし気に語った。

最後に野上は「せっかく黒澤さんの作品に付き、三船さんの近くにいて、もっとお話ができたのにという後悔をしてしまうほど、三船さんは魅力的な人でした」と三船への熱い想いを語り、史郎は「夏木陽介さんや土屋嘉男さん、加藤武さん、中島春雄さん、亡くなられた方もおりますが、とても貴重な方々に父をお褒め頂きありがたく思っています」と本作の出演者たちへの感謝の意を述べた。そして、5月24日に91歳の誕生日を迎える野上にサプライズで花束が贈呈され、大きな拍手に包まれたなかイベントは終了した。

『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』
5月12日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開
監督・編集:スティーヴン・オカザキ
原案:松田美智子「サムライ 評伝 三船敏郎」(文藝春秋刊)
ナレーター:AKIRA
出演:香川京子 司葉子 土屋嘉男 加藤武 八千草薫 夏木陽介 二木てるみ 野上照代 宇仁貫三 中島春雄 中島貞夫 佐藤忠男 明石渉 三船史郎 黒澤久雄 スティーヴン・スピルバーグ マーティン・スコセッシ 役所広司
配給:HIGH BROW CINEMA

【作品概要】 スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど世界の巨匠に愛された唯一無二のサムライ俳優・三船敏郎。2016年にはハリウッド殿堂入りを果たすなど、今も世界中のファンの心を惹きつけ離さない“世界のミフネ”の波乱に満ちた生涯と映画人生に迫るドキュメンタリー映画。三船が出演した黒澤明監督『七人の侍』(1954年)、『蜘蛛巣城』(1957年)、『用心棒』(1961年)、『赤ひげ』(1965年)、そして稲垣浩監督『宮本武蔵』(1954~56年)などに焦点を当て、家族、日本の映画関係者や俳優、海外の著名人たちのインタビューと貴重な映像資料とともに、その生涯と世界に影響を与えた「サムライ映画」の進化を明らかにする。

Ⓒ‟MIFUNE:THE LAST SAMURAI”Film ⒸTOHO CO.,LTD.