東出昌大、唐田えりか、濱口竜介監督がフォトコールに登場!『寝ても覚めても』第71回カンヌ国際映画祭レポート②

東出昌大と濱口竜介監督がタッグを組み、芥川賞作家の柴崎友香による同名恋愛小説を映画化した『寝ても覚めても』が9月1日に公開となる。このほど、5月8日から開催中の第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に本作が正式出品されたことを受け、フランス現地時間5月15日に記者会見が行われ、主演の東出昌大、唐田えりか、濱口竜介監督が登場した。

タキシードだった昨日のレッドカーペットから、東出はマルタン・マルジェラのブラックスーツに身を包み、高身長がさらに際立つ美しい立ち姿に。また、唐田もセクシーだった昨日とは打って変わり、日本からパリへ進出したブランドsacaiのキュートなチェックのドレスで登場、日本からフランスへの羽ばたきを衣装でも表現した。スタイルの良さを見せる東出の登場に、海外セレブ達を撮影してきたカメラマンからもため息が。そして、ふわふわとしたドレスをまとう唐田がくるっと回る度に歓声があがった。ラフな姿の濱口監督を中心に息のあったチームワークを見せる『寝ても覚めても』チームは海外メディアをも虜にした。授賞式は、フランス現地時間5月19日(日本時間5月20日)から行われる予定だ。

記者会見内容

Q:素晴らしい作品をありがとうございました。日本のヌーベルヴァーグ、新しい才能が現れたと思いました。とても繊細な映画です。どのようにその目に見えないような軽さ、繊細さを描写できたのでしょうか。

濱口監督:震災が起こった後、被災地でドキュメンタリーを撮るようになったのですが、その土地で、カメラに対して、自分自身を差し出してくれる人たちが映画にいかに力を与えるかを痛感しました。『ハッピーアワー』では、本人でない人物を演じながら、本人を出すにはどうしたら良いのかを試行錯誤し、最終的に、脚本を信用する、テキストを洗練させていくことになりました。何度も何度も感情を排した本読みをすることでテキストを体に入れ込んでいき、その言葉を発するとき、その人ならどういう風に言うのかをこのような反応を引き出せるということを知りました。今回、ふたりを知る時間はあまりなかったのですが、直感的に好きだと思える人をキャスティングできました。その人たちに磨き上げたテキストをしみ仕込ませました。それでその人たちの演技が自然だとおっしゃるならば、非常に嬉しいことです。

唐田:まっすぐな感想をいただけて光栄です。私は演技経験があまりありません。でも、濱口さん、東出さんはじめ、みんなのことが好きで信頼して現場に挑みました。現場では皆さんに甘えて、頼りにさせてもらおうと思い、皆さんの演技を聞いて感じたことを出した結果、嘘でない演技ができたと思います。みなさんのおかげで演じることができました。

東出:日本の映画界は大体1ヶ月から2ヶ月、もしくは1週間で撮ることもあります。しかし、クランクイン前にみんなで会えるかと言うとやれないことも多い。初めて会う人と20年来の友人役を演じることもあります。そういった場合、プロの役者は自分の用意したもので戦うしかないし、それができるからプロなんだと思います。でも己で用意したものは芝居臭くなる。だから、おっしゃった軽さはその対局にあるものだと思います。今回はクランクイン前に監督に会って、ワークショップもやり、俳優同士も繋がってから撮影に入りました。濱口メソッドではやったことのないことをたくさんやりました。でも、用意したことをやるのではなく、そこにいること、感情を大事にすること、真心のようなものを大事にして、みんなで挑んだような気がします。

Q:「繊細でナチュラルな演技の方向性が大事」だと言っていましたが二役は難しい。繊細でナチュラルな二役をどのように構築して演じたのでしょうか?

東出:麦と亮平は標準語と関西弁との違いがあります。外国の方にはわからないと思うけれども、ふたりは違う地域の言葉を話します。特に柴崎さんからのリクエストで関西弁には注意をして話しました。用意しないことが大事、と言いましたがクランクイン前は演じわけが大事だと思って、少ない引き出しを開けて、表面的に演じ分けようと思っていました。目線だったり、仕草だったり、生き方によって声色や喋り方は変わると思っていたので、声も変えようと思っていました。でも、監督に声は変えないでいいと言われた。東出という楽器から出てくる麦という音と、亮平という音を聞かせてくれ、と。実際、監督がおっしゃる通り、読むセリフが違うので、別の人物になりました。小手先で変えるのではなく、気持ちの部分だと言うところに立ち返りました。

Q:朝子を正面から捉えているショットの意図は?そのシーンをどう演じているのでしょうか。

濱口監督:朝子の顔を正面から取ることはやりたくてやったものです。僕は増村保造監督が好きなのですが、増村監督がよくやる俳優の配置で90度に人物を置いて、男性は女性を見ている、女性は横顔で目を合わさない、というものがあります。それを正面から撮るとどうなるか、に興味がありました。これは彼女にとっては難しいことだったと思います。彼女は正面にカメラがある、でも彼女の人生や魂を差し出して欲しいと思っていたので、暴力的かもしれませんがカメラを置かせてもらいました。

唐田:カメラが目の前にあっても、カメラマンの佐々木さんを信頼していたし、防潮堤のシーンも、カメラがあるのにカメラから透けて海が見えていたような気がします。不思議なんですが。カメラが邪魔だと思ったことはありませんでした。

『寝ても覚めても』
9月1日(土) テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
監督:濱口竜介
原作:柴崎友香「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)
音楽:tofubeats
出演:東出昌大 唐田えりか 瀬戸康史 山下リオ 伊藤沙莉 渡辺大知 仲本工事 田中美佐子
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス

【ストーリー】 東京。カフェで働く朝子は、コーヒーを届けに行った先の会社で亮平と出会う。真っ直ぐに想いを伝えてくれる亮平に戸惑いながらも朝子は惹かれていき、ふたりは仲を深めていく。しかし、朝子には亮平には告げていない秘密があった。亮平は、かつて朝子が運命的な恋に落ちた恋人・麦(バク)に顔がそっくりだったのだー。

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS
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