山﨑努、樹木希林、吉村界人、青木崇高、池谷のぶえ、沖田修一監督が登壇!『モリのいる場所』完成披露試写会レポート

97歳で没するまで生涯現役であり続けた伝説の画家・熊谷守一=モリのエピソードをもとに、沖田修一監督が晩年のある1日をフィクションとして描いた映画『モリのいる場所』が5月19日に公開となる。それに先だち、4月22日、渋谷ユーロライブにて完成披露試写会が行われ、山﨑努、樹木希林、吉村界人、青木崇高、池谷のぶえ、沖田修一監督が登壇した。

ともに文学座の出身で60年以上のキャリアを持つ山﨑努と樹木希林。実は共演するのは本作が初めてだが、50年以上を共にした夫婦を見事な存在感で演じている。撮影は昨年の7月、暑いさなか葉山での撮影を共に乗り切った沖田監督ほか共演陣は、ここでとっておきの秘話を披露した。

以下は舞台挨拶の概要。

■ひとこと挨拶
山﨑:去年の夏、撮影を終え、近代美術館展覧会も大盛況だったそう。ちょっとしたモリカズさんブームが起きたそうです。そのせいか取材が来て、ずっとモリカズさんとつきあっています。今日みなさんにご覧いただき、この映画は完成です。

樹木:この空間にいられて75歳にして、身の家宝と思っています。

吉村:吉村界人と申します。よろしくお願いいたします。

青木:去年の夏、暑くて暑くて、汗をたらしながら撮影しました。いっしょに完成披露試写会を迎えられて、誇りに思います。

池谷:モリの1日。1日をみなさんと過ごせることを嬉しく思います。

沖田監督:モリカズさんの映画を作ることになって、台本を書いて、気づいたら…不思議な気持ちです。沢山の人に見てもらいたいです。

■監督との仕事について
山﨑:クランクイン前、2度打ち合わせしました、呑む方が主でありましたが。彼は、慎重で、何か言っても…。現場に入ったら、一転、即断即決。いい反応をしてくれる。感覚優先、切り替えが素晴らしかった。

樹木:私は偏屈で好き嫌いが激しく、人を認めたくないタイプですが、彼は、人間を描く、人間を見てくれる、役者として嬉しいこと。映像を見る人が多い今、沖田さんは若いのに、人を見ようとしてくれ、嬉しかった。

沖田監督:嬉しいです、頑張ります。山﨑さんとは、いろいろ話し合い、見た目、中身、映画だけのモリカズさんを探しました。樹木さんとも、秀子について、現場でやりとりさせてもらいました。

樹木:現場には小さくて気持ちよい森をつくられ、控室より気持ちが良く、いつもそこにいました。

■名優と共演して
吉村:緊張しました。山﨑さんには怒られました。

樹木:でもさっきは山﨑さんの前でおおあくびしてたわよねー(笑い)

吉村:役者をやっていてよかったです。監督には、自分のような未熟者でも、君ができるお芝居を見たい、と言ってもらいました。

青木:虫が多かった。蝉がぬける白い羽を見ました。山﨑さんとのシーンでは、緊張ではなく、素直にそこにいられました。楽しい夏の思い出です。

池谷:お二人とはいきなり朝食シーン撮影でした。ずっとここで暮らしてきた二人、であったので、自分は何を小賢しいことを考えていたのか…と。ここにいよう、と思いました。ありがたかったです。

■現場での監督の演出について
樹木:監督の顔が役者と同じ顔になっていました。とてもいい。芝居を見ている監督は少ないです。

山﨑:スピーディ。OK、もう一度、返事がすぐに返ってくる。「迷ってます、お時間ください」アナウンスも感じが良かった。

樹木:年を取ると、即断即決、が好きです。

■山﨑さん、樹木さん、実は初共演
樹木:夫を差し置いて話してますが、山﨑さんは文学座で、黒澤明監督映画で出てきました、私たちのあこがれの的でした。まったく遠い人。同じ画面で芝居したことがなかった。山﨑さんは王道、私はバラエティー、出会うわけがない。今回、75歳になって「妻役」をやらせていただき、ありがたいです。

山﨑:かあちゃんの存在は大事だ、と考えていました。現場で樹木さんを見て、モリカズさんが30年間外に出なかったことができたのは、かあちゃんの力。モリに花を摘むシーンはホンになかったこと。アドリブだったけど、ぐっときました。

樹木:(照れる)

『モリのいる場所』
5月19日(土)、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国ロードショー
監督・脚本:沖田修一
出演:山﨑努 樹木希林 加瀬亮 吉村界人 光石研 青木崇高 吹越満 池谷のぶえ きたろう 三上博史
配給:日活

【ストーリー】 昭和49年の東京。30年間自宅のちっちゃな庭を探検し、生きものたちを飽きもせずに観察し、時に絵に描く画家モリ(94歳)と、その妻秀子(76歳)。52年の結婚生活同様、味わいを増した生活道具に囲まれて暮らすふたりの日課は、ルール無視の碁。呼んでもいないのになぜか人がひっきりなしにやってきて大忙しな二人の生活に、マンション建設の危機が忍び寄る。陽がささなくなれば、生き物たちは行き場を失う。慈しんできた大切な庭を守るため、モリと秀子が選択したこととは―。画商や近所の人でにぎわう茶の間、大勢でたべる夕ご飯。ちゃぶ台、縁側、黒電話。人と人との距離が今よりも近く感じられる昭和の暮らしと、50年以上をともに過ごしてきた老夫婦の絆、心豊かに充足した人生のある夏の1日を描く。

(c)2017「モリのいる場所」製作委員会