キーレン・パン監督&トミヤマユキコが登壇!『29歳問題』トークイベント付き特別試写会 レポート

まもなく30歳を迎える2人の対照的な女性を描き、本国で20万人以上を動員するヒットを記録した香港映画『29歳問題』が5月19日より公開となる。それに先立ち、4月18日に市ヶ谷のシネアーツ試写室にてトークイベント付き特別試写会が行われ、第37回香港アカデミー賞(香港電影金像奨)で最優秀新人監督賞を受賞した本作のキーレン・パン監督と、女子マンガ研究者であり無類の香港迷(ホンコンマイ=香港好き)のトミヤマユキコが登壇した。

トークイベントに登場し、観客に向けて挨拶を求められたパン監督は、「東京に来られたことをとても嬉しく思います。日本で『29歳問題』が劇場公開されることにとても期待しています」と笑顔でコメント。まず、パン監督自身が12年間演じ続けた一人劇の舞台を映画化するに至った経緯を問われると「舞台を映画化したのは、新しい試みに挑戦したいという気持ちと、映画化するにあたって全てのタイミングが良かった、ということに尽きます」と語った。また、キャスティングについて、トミヤマが「“29歳”の2人が間接的に心を通わせるシーンにグッと心をつかまれたのは、この2人の俳優あってこそのことだと思う。ベストキャスティングです!」と話しかけると、パン監督も嬉しそうに「私もそう思ってます」と笑顔で強く頷いた。

作品の中でキーワードとなる“29歳”、“30歳を迎えること”に話が及ぶと、パン監督は「私たちが恐れているのは年齢そのものではなくて、人生において予測不可能なことが突然起こったり、迷いや不安に恐れを感じているんじゃないか、と気づきました。それらの恐怖心が30歳前後に現れてくると思われがちだけど、その恐怖心は人生のどのタイミングでも頻繁に現れるもの。だから“30歳”という世界を描いているというよりも、人生において直面しなければならない局面を描きました」と熱く語った。

トミヤマは、自身の専門分野である、働くOL女子を描く“女子マンガ”を例に挙げ、「登場人物である働く女性たちは、選択肢が多いことにとても悩んでいる。仕事をどうするのか、結婚は、子供は、と。このようにマンガで描かれるように、実際の日本にいる女性たちの人生にもあまりにも選択肢が多すぎる。そしてそのような女性たちを描いた“女子マンガ”はたくさんあるから、その読者たちがこの映画を観たら確実に刺さるものがある!」と想いを語り、また「世界中の女性が人生の前半戦で選択肢が多いことに本当に困っていて、その答えをこのようなフィクションに求めているのかもしれません」と続けた。

本作について、パン監督は「この作品は温かな不思議な力を持っている気がする。一度見れば物語はわかるのに、何度も観てくれる人が何人もいる。それはこの作品が、悩み苦しんでいる人達に、あなたは一人ではなく、みんなが悩み生きているんだということを伝え、少しでも希望を分け与えているからだと思う」と語り、トミヤマは「人を優しく力づける作品。年齢を気にするな、と説く作品はたくさんあるが、この作品は強さと優しさを絶妙なバランスで兼ね備えている稀有な作品。テーマは普遍的だけれど、作品としてはとても新しいものを見た」と結んだ。そして、これから映画を鑑賞する観客に、パン監督は「素直な気持ちで観てほしい!そして感想を教えてください」と語りかけた。上映後にも、パン監督は観客の前に立ってQ&A形式の質問に答え、イベント終了後もロビーにて多くの観客と記念撮影や歓談を楽しむ、終始和やかな会となった。

『29歳問題』
5月19日(土)、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:キーレン・パン
出演:クリッシー・チャウ ジョイス・チェン ベビージョン・チョイ ベン・ヨン
配給:ザジフィルムズ/ポリゴンマジック

【ストーリー】 2005年、香港。30歳を目前に控えたクリスティ。勤め先では働きぶりが評価されて昇進、長年付き合っている彼氏もいて、周囲も羨むほど充実した日々を送っている。が、実のところ、仕事のプレッシャーはキツいし、彼氏とはすれ違いがち、実家の父親の認知症も気がかりだ。そんなある日、住み慣れたアパートの部屋が家主によって売却され、退去を言い渡されてしまう。家主から紹介された仮住まい先は、女の子らしい小物でいっぱいの部屋だった。住人のティンロという女性はパリに旅行中。彼女の日記によると偶然にも誕生日が同じだが、そこに書かれているささやかな日常はクリスティのものとはまったく違い…。

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