上原浩治投手が事件当時の様子を語る『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』トークイベント レポート

ジェイク・ギレンホールが主演とプロデュースを務め、ボストンマラソン爆弾テロ事件で“ボストンのヒーロー”と呼ばれた男の真実の物語を描いた映画『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』が5月11日より公開となる。それに先立ち、4月16日に日本大学三軒茶屋キャンパスでトークイベント付き試写会が行われ、日本大学危機管理学部の安部川元伸教授と金惠京教授、元ハーバード大学助教授で医師の李啓充、映画宣伝プロデューサーの石山成人が登壇した。さらに、事件当時、大リーグのボストン・レッドソックスに在籍していた、現読売ジャイアンツ所属の上原浩治投手が映像で登場し、当時の様子を語った。

2013年4月15日に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件の被害にあったジェフ・ボーマンの実話を映画化した本作。上映後に実施されたトークイベントには、日本大学危機管理学部の教授陣やジャーナリスト、そして危機管理学部の学生約100名が参加し、熱いディスカッションが行われた。

上映後の余韻が残るなか、映像で登場した上原選手は、事件について、「球場から空港への移動中のバスの中で知った。(テロが起こった)場所が球場から1マイルの場所だと知って、もしかしたら僕たちも巻き込まれていたかもしれないので、すごい怖かった。犯人も逃げていたので、外出禁止などでボストンの街から人がいなくなって、ほんとに映画の世界のようなことを体験して怖かった」と当時の心境を語った。また、“ボストンストロング”という言葉については「街中や球場に大きく張り出されていたり、あれがきっかけで、みんなでもう1回強くなろうと、チームの選手だけでなく街全体が動いた」と振り返った。本作の主人公ジェフ・ボーマンとは「彼が始球式で球場を訪れた際に握手した」と明かし、本作については「実話ですからね!映画の中で観ると、(ジェフ・ボーマンは)当時の彼女、今の奥さんの支えがとても大きかったんでしょうね。彼女の一言一言が突き刺さっている。助けてくれる人の存在はやっぱり大きい」と感慨深げだった。事件が起きた年にボストン・レッドソックスはワールドシリーズを制覇し、上原選手は胴上げ投手になったが、大リーグでの9年間で一番の成績を残し「優勝パレードのときにみんなに“ありがとう”と言ってもらえたのが嬉しかった」と笑顔をのぞかせた。

ジェフ・ボーマンと同様にボストン市民に勇気を与えた上原選手のコメント動画に、学生からは「ボストン復興の立役者となった上原投手や、映画の主人公のジェフ・ボーマンは毅然とした態度で立ち向かったんだなと感じました」「今まで他人事だと感じていたが、映画やインビューからとてもリアルで生々しく、ボストンストロングについてより深く理解できた」「テロを未然に防ぐことを学んでいるが、危機管理は事件が収束しても続くんだと思った」「映画を観て、上原さんのインタビューを観ると、私たちが想像できない世界や被害者側の側面を知ることができた。ボストンの人たちが結束していく様子に感動した」などの声があがった。

爆破事件当時ボストンにいた李氏は、新聞やテレビで流れていたテロのニュースを見て「主人公のジェフ・ボーマンは、カルロスが助けなければ死んでいただろう。またボストンではスポーツがコミュニティの中心となっている。ジェフがシンボルとしてメディアに出たことで勇気をもらった人はたくさんいた」と話し、金教授は被害者への補償という観点で「この映画は、被害者やその家族へのメンタルケアなど、今後世界に通用する課題が描かれている」と指摘。安部川教授も「テロや災害のトラウマから社会復帰して立ち直るのは簡単なことではない。テロの狙いは人殺しだけでなく、また次もあるぞ!と人間の心理を狙っている。でもそれに負けてはいけない。この映画はそのための力、乗り越える力をくれる」と続けた。

教授陣やジャーナリストに、生徒からは「東京オリンピックを控える日本もテロの脅威に備えなければならないのではないか」「日本人がもし海外でテロにあってしまった時、また逆に外国人が日本でテロにあってしまった場合の補償はどうなるのか」「映画の主人公のように、メディアに出て有名になることで、テロの標的にされないのか」などの質問が投げかけられた。今後テロに対してどう向き合い、対処していくべきか、真剣な眼差しの生徒たちと教授陣らのディスカッションが繰り広げられ、映画を通してテロとその被害者をより身近な出来事として認識し学んだトークイベントとなった。

『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』
5月11日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ジョン・ポローノ
出演:ジェイク・ギレンホール タチアナ・マスラニー ミランダ・リチャードソン クランシー・ブラウン
配給:ポニーキャニオン

【ストーリー】 ボストンに暮らすジェフ・ボーマンは元彼女のエリンの愛情を取り戻すため、彼女が出場するマラソン会場に応援に駆け付けるが、ゴール地点付近で爆弾テロが発生。巻き込まれたボーマンは爆発で両足を失ってしまう。意識を取り戻したボーマンは爆弾テロリストを特定するために警察に協力。ボーマンの証言を基に犯人が特定されると、ボーマンは一躍、“ボストンのヒーロー”として世間の脚光を浴びるが、彼自身の再生への戦いはまだ始まったばかりだった―。

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