ショーン・ベイカー監督「このひと夏に参加する気持ちで観てほしい」映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』ティーチインイベント レポート

第70回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、全世界の映画賞で101ノミネート、56の賞を受賞した話題作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』が5月12日より公開となる。本作のティーチインイベントが4月9日に新宿バルト9で行われ、来日したショーン・ベイカー監督が登壇した。

監督と脚本は、全編をiPhoneで撮影しロサンゼルスの街で暮らすトランスジェンダーの女性たちをポップに描いた『タンジェリン』のショーン・ベイカー。本作は全編を35mmで撮影し、フロリダのディズニー・ワールド近くにある安モーテルを舞台に、夢に満ちた毎日を生きる6歳のムーニー、変えられない現実に抗う母ヘイリー、そして同じく社会の片隅で生きる人々の日常を、眩いほどの映像美でカラフルに描き出す。

ベイカー監督は挨拶で、「観客の方には、主人公のムーニーや仲間たち、ギャングの一員になったような気持ちでこのひと夏を観察するのではなく、参加していただきたい。そして、彼女たちのいたずらであったり、ユーモアのあるさまざまなアドベンチャーに自分も参加している気持ちで観ていただきたい」とコメントした。

作品の内容から、日本のインターネットカフェ難民の話に及ぶと「日本にもそんな問題があるんですね」と驚きつつ、「私が住んでいるロスでもキャンピングカーで寝泊まりしている人たちが増えている。隠れたホームレスと言われていて、普段は見えない。だから我々はそこまて考えが及ばないけど、彼らは屋根の下で眠るために必死になんでもしている」と祖国で起こっている社会問題を説明した。

「ディズニーランドをどう思うか?」という観客からの率直な質問には「大企業が悪いのではないか、と思いがちな方は多いと思うんです。実際リサーチに着手した時は、僕も大企業に責任があるのではないかと思っていたのですが、製作の過程でその考えはなくなりました。現地の政治や状況を理解して、実際にディズニー社がホームレスを無くすための機関に多額の寄付をしている」と明かし、最終的には国が動かなければなにも解決しないことを強調した。

最後に是枝裕和監督の『誰も知らない』を知っていますか?という質問には「もちろん知っています。この作品を撮る前にも改めて観直しました」と、子役から演技を引き出すことに定評がある監督としてリスペクトしていることを明かしていた。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
5月12日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー
出演:ブルックリン・キンバリー・プリンス ウィレム・デフォー ブリア・ヴィネイト
配給:クロックワークス

【ストーリー】 6歳のムーニーと母親ヘイリーは定住する家を失い、世界屈指の観光地であるフロリダ・ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。周りの大人たちは厳しい現実に苦しむも、ムーニーはモーテルに住む子供たちと冒険に満ちた毎日を過ごし、そんな子供たちをモーテルの管理人ボビーはいつも厳しくも優しく見守っている。しかし、いつまでも続くと思っていた大好きなママや仲間たちと過ごす楽しくて夢のような日々が、ある出来事がきっかけとなり…。

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