三浦友和 × 諏訪敦彦監督 19年ぶりの再会『ライオンは今夜死ぬ』トークイベント レポート

ヌーヴェルヴァーグを代表する名優ジャン=ピエール・レオーを主演に迎え、『M/OTHER』『不完全なふたり』の諏訪敦彦監督が『ユキとニナ』から8年ぶりに撮り上げた、仏日合作作品『ライオンは今夜死ぬ』の公開を記念し、1月26日、99年に諏訪監督長編2作⽬『M/OTHER』で主演を務めた三浦友和と諏訪監督のトークイベントが⾏われた。当時の思い出を振り返り、今だから語れる撮影秘話や諏訪作品の魅⼒、そしてそれぞれの俳優論、監督論についてたっぷりと語られた。

三浦友和氏×諏訪敦彦監督

■三浦友和が事前に本作へ寄せたコメント
老いた名俳優が問う
「難題がある。どうやれば死を演じられる?」
さらりと答える女性がいる 「演じてはだめ」
だから、この映画は美しい

99年に諏訪監督⻑編2作⽬『M/OTHER』で主演を務め、2⼈は本会場で19年ぶりの再会を果たした。本作の舞台は南仏コート・ダジュール。南仏好きで3度も訪れているという三浦は、本作の感想を聞かれ、「2度も観てしまいました。ワンカット⽬から独特の光と⻘い海が映り込んできて、“あ、南仏だ”と引き込まれましたね。『M/OTHER』は暗い照明の演出だったので、諏訪監督らしくない演出だなと思って驚いてしまいましたが(笑)。ジャン=ピエール・レオー演じる⽼優と⼦どもたちが対等に⾒えて、あんなに⽼いているけど、彼は実は⼦どもなんだなと思いました。私も今年66歳になりますが、実は中学⽣からずっと変わってない⾃覚がある(笑)。でも、役職についたり、部下ができたりするとそれらしくしなきゃと、“⼤⼈”を演じるようになってしまうんですよね」と、語った。対して「おっしゃる通り、本作を作りながら、⼦どもに戻っていい、無邪気に作っていいんだということに気づかされましたね」と監督。「そして、“死”が描かれているのにまったく説教くさくない。そしてエンドロールで⾃由に考えさせられる映画。とても“優しい映画”だと感じましたね」と、本作の感想を三浦が語った。

三浦友和氏

全編即興の⻑回しの撮影だったという『M/OTHER』の撮影現場。出演依頼を受けた三浦は、「“即興でやるってどういうこと?”と、ものすごい興味を持ったんですが、不安でいっぱいでした。脚本がないことに堪りかねて、私が脚本を書いてしまったほど。でも、その脚本を構成に組み込んでもらえるのかと思ったら、無視されてまったく別の内容になってましたね(笑)」と、当時の撮影秘話を明かした。対して「『ライオンは今夜死ぬ』でも、ジャン=ピエールはもちろん、⼦どもたちにも即興の演技をしてもらった。⼦どもたちもジャン=ピエールも予測不可能な演技の連続でしたね」と諏訪監督。そして、「監督は俳優に何を求めているんですか?」との三浦さんの率直な質問に対し、「やっぱり、この⼈からいったいどんなものがでてくるんだろう、と⾃分が予測できない⼈に魅⼒を感じます。『M/OTHER』では、三浦さんの演技が映画全体を変えていってくれたし、共演者の思いがけない新たな演技も引き出してくれたと感じています」と、監督が三浦の魅⼒について語った。

諏訪敦彦監督

「“死をどう演じたらいいのかわからない”という、冒頭シーンでの俳優の主⼈公の問いに対し、メイク担当の⼥性が“演じてはだめ”と答える台詞がとても素晴らしかった。この答えは、僕たち俳優にとっての永遠のテーマでもあるので、冒頭から⼀気に引き込まれました。ものを作るということは作為の塊なのに、私たち俳優は何もしていないように何かをしなければならないんですよね。私たちの仕事は“あの⼈の演技上⼿かったね” と⾔われてはまだまだなのではないかと思っています。個⼈的には“あの役が憎たらしかった”“素敵な⼈だった”と感じてもらえることの⽅がずっと嬉しい」と三浦。対して、「映画の作り⼿として、私も同じことを感じますね。本作をパリで 200⼈の⼦どもたちに⾒せたとき、映画の途中で拍⼿をしたり、最後のエンドロールでは⼿拍⼦をしながら観てくれた。そんな⾵に⾃由に観てもらえるのはとても嬉しいし、羨ましいなと思います。私の映画をヨーロッパで上映すると、怒っている⼈もいれば、途中で出て⾏く⼈、泣いている⼈もいる。でもそういう映画があっていいんだと思います。“巧くできている”と評価されるより、観る⼈によって⾃由に感じてもらうことが一番嬉しいですね」と諏訪監督。トークイベントの終了時間が過ぎているにもかかわらず、本作への感動が冷めやらぬ三浦は、観客にも本作を観た感想を問いかけた。感想を述べた観客がアニメーションを⼿がけている監督だとわかると、「それはそれは!今後も、ぜひよろしくお願いします!」と語りかけて会場の笑いを誘い、⼤いに盛り上がったトークイベントを締めくくった。

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『ライオンは今夜死ぬ』
1月20日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー中
監督・脚本:諏訪敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオー ポーリーヌ・エチエンヌ イザベル・ヴェンガルテン
配給:ビターズ・エンド

【ストーリー】 南仏コート・ダジュール。死を演じられないと悩む、年老いた俳優ジャン。過去に囚われ、かつて愛した女性ジュリエットの住んでいた古い屋敷を訪ねると、美しい姿のまま幻となってジュリエットが彼の前に現れる。さらに、屋敷に忍び込んできた子どもたちからの誘いによって、突然はじまった映画撮影。撮り進めるうちに、ジャンは過去の記憶ともう一度向き合い、忘れかけていた感情を呼びこしていく。そして残された時間、ジャンの心に生きる歓びの明かりがふたたび灯されていく。

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