詩人の文月悠光が書き下ろし詩を朗読!『アバウト・レイ 16歳の決断』トークイベント オフィシャルレポート

アカデミー賞主要2部門を受賞した映画『リトル・ミス・サンシャイン』や『サンシャイン・クリーニング』を手がけたチームが製作し、エル・ファニングがトランスジェンダー役に挑戦した映画『アバウト・レイ 16歳の決断』が2月3日より公開となる。このほど、本作の公開を記念したトークイベントが、1月15日、スペースFS汐留にて行われ、詩人の文月悠光が登壇した。

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本作では、『マレフィセント』のオーロラ姫役で一躍人気となり、ソフィア・コッポラの新作『The Beguiled/ビガイルド』など出演作が相次ぐエル・ファニングが、心も身体も男になると決断したトランスジェンダー(FTM)の主人公レイを熱演。そして、アカデミー賞に2度のノミネートを誇るナオミ・ワッツが恋多きシングルマザーのマギーに、スーザン・サランドンが破天荒なレズビアンのおばあちゃんドリーに扮する。

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MCを務めた映画ライターの門間雄介から映画の感想を尋ねられると、文月は「レイのトランスジェンダーという設定に注目しがちで、性的マイノリティの深刻な話として観る前に覚悟がいるのかなという思いがありましたが、実際は深刻過ぎずに描いていることに好感が持てました」と、鑑賞前の先入観と鑑賞後の印象の差について語った。さらに、「レイの話だけでなく、家族の中のユーモアや母親の葛藤など、周囲の人たちにも焦点を当てていて面白かったです」とコメント。それを受けて門間が「LGBT映画というのが全面に押し出されていないですよね」と振ると、文月は「LGBTという型から自由になっていっているのもこの映画のいいところだなと思います」と本作がジャンル映画にとらわれていないことを評価した。

印象的なシーンについて、文月は「(ナオミ・ワッツ演じるマギーの)“私はひとりで娘を失った、これからもひとりで息子を育てていく”というセリフがありましたが、悩みに悩んで一人でレイを育てた矜持が感じられて、祖母に対してはまだ弱く少女らしさがあり、ある種まだ母親になれなかったマギーが殻を破った印象的なシーンでした」と熱く語った。また、「自分が母になったときは、子供がレイのような状況になった時にどんな風に支えられるか自然と考えてしまった。特殊な家族ではなく、自分と地続きの不安や葛藤の中にこの人たち(マギーやレイたち)もいるのかなという感覚で観ていました」と本作が描く普遍的な問題に共感した。

そして、文月が本作から受けた印象を書き下ろした詩「わたしたちの愛し方」を披露すると、会場から感動の拍手が沸き上がった。詩の着想を問われた文月は、「(本作を)家族たちの群像劇としてとらえたときに、食卓のシーンが印象的でした。祖母とその同性のパートナーと母、当たり前のように一緒に食事をしているけど、少しギクシャクしているいびつさは、親しい友達との距離感とは違うものを感じさせ印象的でした」と、詩の冒頭“食卓に八つの手を集わせる。(一部抜粋)”について説明。さらに、「“もっとみんなのことを知りたい”というレイの言葉や表情から現れる、彼の気持ちの変化や世界観が広がっていく様子に感化されました。鏡のシーンはエル・ファニングの目と中性的な佇まい、複雑な感情ながらもきれいな表情は素敵だなと思い、詩にも取り入れました」と、本作の印象的なシーンから受けた強い想いとともに、自身が書き下ろした詩について語った。

最後に文月は、「大きなテーマとして、自分の不完全さ、少し世間一般から外れている部分も魅力的で愛おしいものであると肯定してくれる映画です。家族の在り方や自分自身の在り方をレイの物語と重ね合わせて、変わっていけるきっかけになればいいと思います」と観客にメッセージを贈り、大きな拍手の中イベントは幕を閉じた。

今回披露された文月悠光の詩「わたしたちの愛し方」は、本作の劇場販売用パンフレットにて全文掲載される。

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『アバウト・レイ 16歳の決断』
2月3日(土)より、新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
監督:ゲイビー・デラル
出演:ナオミ・ワッツ エル・ファニング スーザン・サランドン リンダ・エモンド テイト・ドノヴァン サム・トラメル
配給:ファントム・フィルム

【ストーリー】 16歳になり、身も心も男の子として生きたいと決断したレイ(エル・ファニング)。医者から受け取ったホルモン治療についての見慣れない資料に呆然とするシングルマザーのマギー(ナオミ・ワッツ)は、「突然、息子を育てることになるなんて…」と、動揺を隠せない。共に暮らすレズビアンのおばあちゃんのドリー(スーザン・サランドン)もレイのカミングアウトをイマイチ理解ができないでいる。一方、髪を短く切り、身体を鍛え、少しずつ“本当の自分”に近づいていくことで生き生きしてくるレイ。そんな姿を見てマギーは意を決して、治療の同意書のサインをもらうために、何年も会っていない別れた夫に会いに行くのだが、そこでまさかの“家族の秘密”が明らかになる。

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