「僕はこれまでの人生でこんな個性に出会ったことがない」山﨑努×樹木希林、56年の時を経て夫婦役にて奇跡の初共演

大スターと個性派女優。長い年月を経ての初共演は、しかも夫婦役。これが面白くならないわけはない! 山﨑努は「演技は圧巻。胸が熱くなった」と手放しで絶賛、樹木希林は、「私は普通の妻のように生活できました」と少女のように喜ぶ。俳優として相思相愛、尊敬し共鳴しあう二人の演技は、数多くの名シーンを生み出した。

撮影にあたって、山﨑努、樹木希林ともに、クランク・イン前から、演技のみならず、衣装やメイク、小道具といった細部にいたるまで、知識・経験・アイデアを惜しみなく注ぎ、大いに刺激を受けた沖田監督をはじめ若いスタッフとともに、猛暑の中の撮影を乗り切った。

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山﨑努コメント

■樹木希林について

夫人役の樹木希林さんとは初めての共演だった。特別優れた才能は知っていたが、予想以上、はるかにすばらしい女性俳優だった。
さり気なく庭の小さな野花を摘み、全身を弾ませて祝福するようにモリカズに投げる演技は圧巻で、見ていて胸が熱くなった。七六歳の老妻が少女になっていた。
以前から体調が良くないと聞いていたので心配したのだが、とんでもない、僕より数倍も元気。真夏の暑い湘南のロケ地に自分で運転して通ってくる。アシスタントもマネージャーもいない。何もかも一人でやる。女優業はもちろん家事も好きらしい。人にやさしくて、ちょっと意地悪で、好奇心旺盛。なんと日本全国の土地の値段にまで関心を持つ。僕はこれまでの人生でこんな個性に出会ったことがない」

樹木希林コメント

■山﨑努先輩について

顔は恐いんです。私生活なんか聞いたらムッとされそうだから、じっと様子をうかがってるんです。私が見かけた頃の山﨑さんは『天国と地獄』の犯人役が好評で、と同時に宝塚の美しい女優さんと結婚した頃でした。光の中でオーラが歩いているようで、まともに顔など見られませんでした。あれから半世紀以上、まさか山﨑さんと仕事出来るなんて思いもしませんでした。
 役者として山﨑さんは、常につつましく謙虚で何より心が柔らかいんです。モリカズさんを嬉しそうに受け入れてて――
私は普通の妻のように生活できました。

■沖田修一監督について

ヨーイ、ハイ! と声がかかる。
私は監督の顔を見ている。その顔を集めてつなげたら、映画の内容が解るほどだ。
うれしそうな、実に楽しそうな、そして芝居をよく見てて、まことに的を射たダメ出しをする。だから私は丸投げだ。出来が悪けりゃ監督のせいだ。
この人は今後も成長しつづけて、日本を代表する監督になる筈だ。――ただ、物を食べる時にも考えてるので、消化と排泄が?
なので、小太りだ。私の心配は身体だ。だって若いのに、足挫いても中々治らないんだもの。(お疲れ様でした)