『ノクターナル・アニマルズ』伝説的ファッションデザイナーであり、世界が認めた稀代の映画監督トム・フォードとは ?

『ノクターナル・アニマルズ』トム・フォード監督

1961年8月27日、テキサス生まれのトム・フォードは、ニューヨーク大学で美術史を専攻後、編入したパーソンズ美術大学で建築を学ぶ。あまり知られていないが、在学中に俳優を志しCM出演も果たしている。70年代のニューヨーク、ビアンカ・ジャガーやデヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、トルーマン・カポーティなど錚々たるメンバーが足を運んだ、最先端のナイトスポット「スタジオ54」では、アンディー・ウォーホルら時代の寵児たちと親交を深め、ファッションやアートの世界にも傾倒していく。

その後、キャシー・ハードウィックとペリーエリスのもとファッション業界で才能を発揮し、注目を集める。94年、グッチのクリエイティブディレクターに就任。しかし、当時のグッチは、深刻な業績不振で経営が危ぶまれており、トム・フォードは立て直しに奮闘。それまでのクラシックなイメージを一新し、セクシーでゴージャス、かつモードなグッチを確立。その成果は、トム・フォードがクリエイティブディレクターに就任してから、10年で売り上げをおよそ13倍に伸ばしていることでもわかる。この復活劇は「トム・フォード シンドローム」と呼ばれ、ファッション業界では伝説として語り継がれている。その後、00年にはイヴ・サン=ローランとグッチグループ全体におけるクリエイティブディレクターに就任。05年、自身の名を冠したブランド“トム・フォード”を設立。14年には、ファッション業界のアカデミー賞にあたるCFDA賞のジェフリー・ビーン生涯功労賞を、15年にはメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーなど、これまで7度の受賞に輝き、不動の地位を確立。

デザイナーとしては勿論、加えて経営的な観点も併せ持った才能で長年ファッション業界の第一線を走ってきたトム・フォード。そんな彼のブランドは、『007 慰めの報酬』(’08)から、ジェームズ・ボンドが着るスーツを衣装提供していることでも知られる。

また、アカデミー賞Rでも着用する俳優たちが多く、最近では、『ベイビー・ドライバー』で主演を務めたアンセル・エルゴートがオフィシャルイベントで身に着けたり、“トム・フォード”がお気に入りだと公言している女優のジュリアン・ムーアが、監督デビュー作『シングルマン』に出演するなど、多くのハリウッドスターからも愛されている。