満島ひかり×永山絢斗「『そんな男はやめなさい』と子供たちに言われて。永山くんの事じゃないけど(笑)」『海辺の生と死』完成披露上映会

『夏の終り』(’13)以来、4年ぶりの満島ひかり単独主演となる映画『海辺の生と死』の完成披露上映会が6月27日、東京・テアトル新宿にて行われ、出演者の満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種、監督の越川道夫が登壇した。

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傑作「死の棘」を世に放った小説家・島尾敏雄と、その妻、島尾ミホ。時は太平洋戦争末期、ふたりが出会ったのは自然と神と人とが共存し、圧倒的な生命力をたたえる奄美群島・加計呂麻島。後年、互いに小説家であるふたりがそれぞれ描いた鮮烈な出会いと恋の物語を原作に、奄美大島、加計呂麻島でのロケーションを敢行し、映画化を果たした。

島尾ミホがモデルのヒロイン・大平トエを演じるのは、奄美を自身のルーツと語る満島ひかり。映画・テレビ・舞台において、唯一無二の女優として圧倒的な存在感を放ってきた満島は、今年6月に大沢伸一のソロプロジェクトであるMONDO GOROSSOのニューアルバムに歌い手として参加するなど、活躍の場を広げている。トエの恋人で島尾敏雄をモデルとした朔(さく)中尉を演じるのは、3月に放送終了したNHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」でヒロインの夫役を演じ、お茶の間の好感を集めた永山絢斗。島で慈父(うんじゅ)と慕われるトエの父親役に『かぞくのくに』の大ベテラン津嘉山正種(つかやままさね)。朔中尉の部下、大坪役に今年『帝一の國』『あゝ、荒野』と出演作の公開が控える期待の俳優 井之脇海(いのわきかい)。自分より若い上官に鬱屈した表情を見せる兵士に川瀬陽太(かわせようた)と、実力派が揃い、作品に厚みを加えている。監督は『アレノ』で監督デビューし、本作が長編2作目となる越川道夫。本作の公開に先駆けて、監督、出演者による舞台挨拶付き完成披露上映会が行われた。

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男性の野太い歓声に迎えられた満島は、「茶色い声援、ありがとうごさいます(笑)」と笑顔で挨拶し、「上海では上映されたみたいですが、日本で初めてお客さんの目に触れるということで、緊張しています。何かを感じて帰っていただければ」とコメント。奄美での撮影については「撮影の間に、泊まっているホテルのロビーに祖母の弟が座っていて、『撮影前にコーヒーでも飲んで行こうよ』って(笑)。満島家は奄美大島の生まれなので、故郷での撮影は感じるものが違いました。私は沖縄で育ちましたが、歌や踊りも耳なじみがありましたね」と、島での撮影秘話を明かした。

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島尾敏雄の詩集を読んだ永山は「文章を書く人間の顔になれるか」と不安だった様子。「実在の人物を演じるのは初めてだったのですが、島ではどこに行っても島尾敏雄さんの名前があり、たくさんのピースが落ちていたので助かりましたね。台本が文学的で、東京で読んでいてもわからないと思って、頭だけ丸めて島に行きました」と語った。

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「島尾ミホさんの作品は皆んなに共通するようなおとぎ話のような世界」と話す満島。映画について「自分の祖母の世代の方々や戦争を知っている方々、昔の秘密ごとなんかを知っている人たちがどんどんいなくなっている中、その方々の記憶の世界を映画の中に移せないだろか」と、監督とともに企画を立ち上げた経緯も語ってくれた。

最後に満島は「島の人たちのお芝居も素晴らしくて、子供たちに『トエ先生、好きな人のために死ぬんですか?』と聞かれて、『そういう話だね』と返したら、『だめだよ、そんな男はやめなさい』って(笑)。永山くんの事じゃないけど、子供たちに言われました(笑)。本当に島の時間を大切にして作った作品です。最後まで楽しんでいただけたらと思います」と、イベントを締めくくった。

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『海辺の生と死』
2017年7月29日(土)テアトル新宿ほかにて全国公開
監督:越川道夫
出演:満島ひかり 永山絢斗 井之脇海 川瀬陽太 津嘉山正種
配給:スターサンズ

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