【フランス映画祭2017】トラン・アン・ユン監督×橋口亮輔監督スペシャル対談「映画は人生よりも真実だと思う」

フランス映画祭2017マスタークラスとして、映画祭上映作品の『エタニティ 永遠の花たちへ』のトラン・アン・ユン監督と橋口亮輔監督の対談がアップル銀座で実現。1996年ロッテルダム国際映画祭グランプリに輝いた橋口監督の『渚のシンドバッド』。その映画祭で是枝裕和監督含めた3人が出会い、3人とも1962年生まれということで意気投合したというだけに息はぴったりだ。

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橋口監督は「トラン・アン・ユン監督とは(彼の監督作)『シクロ』で対談したことがあって、『地獄の黙示録』のマーティン・シーンの演技を引き合いに出したこと覚えてますか?」と質問。「勿論!」というアン・ユン監督は「『渚のシンドバッド』は結婚式で音楽をずっと流していたくらい好きなんだ」と称える。

「今までの映画づくりからチェンジすることを心掛けた」と最新作『エタニティ 永遠の花たちへ』について語るアン・ユン監督。「映画を撮る際、2つのタイプに分かれます。ひとつはシーンで構成する映画、もうひとつはシーンがない映画です。この2つの違いはエモーション、すなわち感動です。本作は後者の映画なのですが、シーンのない映画は、ストーリーがなく先の展開が予測できないので、観る人たちは画面に集中しないといけない。そこに感動が生まれます。撮影する日になっても私自身、今日何を撮るのか分からないという映画はチャレンジでもありました。でもワンシーンの美しさや”一瞬の恍惚感”を感じてもらえる映画になっていると思います」と説明する。

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橋口監督は「古典的なドラマのつくり方をしていた宮崎駿監督も『もののけ姫』辺りから物語から離れていった感じがあります」と個人的な感想を交えながらアン・ユン監督の演出論を観客に向かって補足。幸せの絶頂で自殺したパトリス・ルコント監督の『髪結いの亭主』のヒロインの気持ちを初めて理解できた瞬間のエピソードも告白し、橋口監督にとっての”一瞬の恍惚感”をアン・ユン監督に伝えようとする。

「映画は人生よりも真実だと思う」とアン・ユン監督。
「『ノルウェイの森』の撮影が終わった時、みんなで食事に行ったのですが、その時、菊地凛子さんが私に聞いてきたことがあるんです。『私は映画の中で泣く時の方が、実生活で泣く時よりも本当な気がする。そう思う私は変なのだろうか?』と。彼女にも、その時答えましたが、映画に生きることがアーティストにとっての本当だと私は思うんです」と貴重な秘話を披露した。

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フランス映画祭2017
2017年6月22日(木)~25日(日)
会場:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇
主催:ユニフランス
unifrance.jp/festival/2017/

『エタニティ 永遠の花たちへ』
今秋、シネスイッチ銀座ほかで公開
監督:トラン・アン・ユン
出演:オドレイ・トトゥ メラニー・ロラン ベレニス・ベジョ
配給:キノフィルムズ