ポール・ヴァーホーヴェン監督×イザベル・ユペール『エル ELLE』トークショー!変態女社長はいかにして生まれたのか?

イザベル・ユペールが、自身をレイプした覆面男を捜して部下や隣人を誘惑していく変態女社長ミシェルを熱演。2017年セザール賞作品賞&主演女優賞に輝いた衝撃の衝撃サスペンス『エル ELLE』。フランス映画祭2017での本作上映後に行なわれたトークショーにポール・ヴァーホーヴェン監督とユペールが登壇した。

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監督は「今回は5回目の来日になりますが、特別な滞在になりました。隣にいる方と一緒だからです」と挨拶。
ユペールは「監督と一緒にこの場にいられることをうれしく思います」とつなげた。

『氷の微笑』のシャロン・ストーン演じるキャサリン・トラメル、『ショーガール』のエリザベス・バークレー演じるノエミ・マローンなど、これまでも強烈な女性を描いてきた監督だが、ユペール演じるミシェルに関しては「イザベルと一切ディスカッションをしていないんです」と言う。
「もちろん、どういう風に撮るのかについては話しています。特にレイプ・シーンに関しては、危険な事故が起こりえる場面なので事前にきっちり話し合っています。でも、ミシェルというキャラクターの動機については、我々の中でディスカッションすべきではないと考えていました。たとえ動機について話し合ったとしても、フロイト的な分析にしかなりえない。そしてそれは我々の映画を作る際の何の助けにもならないと考えていたからです。イザベルはミシェルとして何をすべきか全て分かっていました。直感的に僕達は同じビジョンを見ていたんだと思います。僕自身は彼女を信頼していれば良かったんです」

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一方、主人公ミシェルのキャラクターについて、ユペールは「自分自身を滅ぼしてしまうかもしれませんが、この一連の出来事によって彼女は自身を再構築している」と分析。
「どうして復讐という行動を取ったのか、過去に原因があったのかもしれないし、父親が連続殺人鬼だったからなのかもしれません。でも映画ではそのことがリンクしているわけではなく、ひとつの情報として描かれています。観る方には好きに解釈していただければと思います」

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その言葉を受けて監督は「連続殺人鬼の父親に育てられたミシェルの経験が、30~40年経って、彼女がレイプ犯とSM的な関係を始めることにどう影響したのか、その因果関係は原作小説にも描かれていないことですし、今回の映画でも同様です。因果関係を著者に聞くことはしませんでしたが、彼はバックボーンを掘り下げて書いていたのだと思います。連続殺人鬼の父親に関しては、ブルネイで70人くらい殺害した事件があり、その犯人をベースにしていると著者が言っていました」と解説。

最後に一番大変だったシーンは?との質問に「皆さんが見るのに大変なシーンはあると思いますが、演じるのに大変なシーンはありませんでした」とユペール。
「それでも強いて挙げるとすれば、小鳥が死ぬシーンです。本作のテーマは命です。命は非常に貴重なもので、ミシェルは小鳥の命を救おうとします。その行為が、本作のテーマにもつながっています」と語った。

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『エル ELLE』
2017年8月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほかで公開
配給:ギャガ