【トークショー】やくみつる『幸せなひとりぼっち』に「泣かせるんじゃない!馬鹿野郎」

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スウェーデンのアカデミー賞と呼ばれるゴールデン・ビートル賞で主演男優賞(ロルフ・ラスゴード)と観客賞をW受賞した『幸せなひとりぼっち』の大ヒット御礼トークショーに漫画家のやくみつる氏が登壇。「大相撲一月場所が始まっているのに、こんなところでトークショーしている場合じゃない」と言いつつも、作品愛を熱く語った。

「『週刊実話』の”シネマ小言主義”のために本作を観たのですが、ロルフ・ラスゴード演じる主人公オーヴェのキャラにいたく共感いたしまして、観てすぐ『週刊実話』で同じ映画連載を持っているLiLiCoにオーヴェ風にメールしたんです。“泣かせるんじゃない!馬鹿野郎”ってね。オーヴェは59歳の設定でしょ。それにしては見た目が老けすぎでしょって思いますが、僕も57歳で年齢が近いんです。それに偏屈なところ(小言が多いところ)もダブる。あと猫に優しい。僕は小言親父なので人間の友達は少ないのですが、実は小動物をほっとけないタチなんです。家の近くの神社によく猫がいて、猫とよく会話をしたり優しくしたりしているんです。心の中でこのシーンを”誰かに見てもらいたい”と思いながら(笑)。 そういった部分に深く共感しましたね。
 もちろん、高福祉国家と呼ばれる今のスウェーデンの実情をユーモア交えて紹介しているところとかも面白いと思いますし、猫もいいです。猫好きのリピーターが多いっていうのも納得です」

そして話題は、偏屈爺さんと交流する方法に。
「今、相撲好きの女性を“スー女”って呼んでいるじゃないですか。それと同じように相撲好きの爺さんを“スー爺”って呼んで、僕は世に広めようとしているんです…まったく普及していませんが(笑)。彼らは偏屈ですが、知識はあって喋りたがりが多いんです。“スー女”なら“スー爺”に相撲のことを聞くと喜んで喋ってくれます。相撲の理解も深まって一石二鳥だと思います。相撲に限らずですが、偏屈な人々にも、どこかに愛すべき部分があるんです。
東北北部の方言では、偏屈でどうしようもない奴のことを“ごんぼごり”って呼ぶのですが、オーヴェはまさにそれ。男って”ごんぼごりになりがちなんです。僕含めて、本作は自己批判もしつつ、多大な自己弁護もしつつ見る映画です。もし、僕がこの映画に邦題をつけるとしたら『ごんぼごりの詩(うた)』って付けます。誰も観ないでしょうけど(笑)」

『幸せなひとりぼっち』
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中
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