【トークイベント】辛酸なめ子×たかのてるこ『幸せなひとりぼっち』を大いに語る

公開週のミニシアターランキング1位を獲得したスウェーデン発のヒューマン・ドラマ『幸せなひとりぼっち』の大ヒットを記念してトークイベントが行なわれ、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子と、エッセイストで旅人のたかのてるこが登壇した。
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まず映画の感想について辛酸は「ダメな男性ほど女性が惹かれていくのかなぁって興味深く観ました。奥さんがすごくできた方で」
たかのは「あんなできた奥さんは現実にはいないですよ。映画を観た人、全員が心をわしづかみにされています。素敵すぎて。あとこの映画を観ると、(ロルフ・ラッスゴード演じる)主人公のオーヴェみたいなオッサンの地道な活動が、高福祉国家と呼ばれる今のスウェーデンをつくったということがよく分かります」

59歳という設定のオーヴェについては「口角下がり過ぎですよね。奥さんが生きている頃はそれほどでもなかったのに、死んで1年でブルドッグ顔になっちゃった。辛すぎたのでしょうね。この間『真田丸』を観ていた時に、長澤まさみちゃん演じるきりが“あなたがいない世界に生きていても仕方ない”的なセリフを言っていたのですが、それと同じ。オーヴェも奥さんのこと好きすぎた」とたかの。一方、辛酸は「78歳くらいかと思っていた。でも、ああいう頑固なオジサンって日本にもいますよね。京王線で話題になった“性の喜びを知りやがってオジサン”とか。何か電車の中で“性の喜びを知りやがってお前らばかり許さんぞ!”とか周りの人に対して怒っているんです。それがツイッター上とかで拡散して、名物になって若者たちがオジサンにちょっかい出して、最終的にみんなで仲良くなっちゃった。感じ悪い人がちょっとした優しさを見せると人の心をつかめるのかもしれませんね」とそれぞれ独自の視点で映画を分析。

さらに辛酸は「コミュニティの大切さが学べる作品。観ることで老後の不安が解消されるかもしれません」、たかのは「死ぬ時に後悔する人って、皆さん“もっと自分らしく生きればよかった”とか必ず思うらしいです。そうならないためには、心を開くことが一番なのかなって。オーヴェだって最後の1年だけですが、他の人と交流しようとして、あんな濃厚な日々を送ったから天国に行けたと思うんです」と締めくくった。

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「実は猫にすごく癒された。私も死ぬ時は猫が上からどんどん被さって来て、猫に圧迫されて死にたい」という辛酸。たかのも「猫、良かった! 私、腹上死ならぬ、猫上死に憧れます。ああいうときは犬じゃない」と激しく同意。


『幸せなひとりぼっち』
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中
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