加藤雅也「フィルムノワール映画を作るのが難しい日本で、本作が完成したのは嬉しい」

講談社創業100周年記念出版作品として、巨匠・北方謙三による小説「抱影」を、主演に加藤雅也を迎えて実写映画化する『影に抱かれて眠れ』が、9月6日より公開される。このほど、8月6日に丸の内TOEI2にて完成披露上映会が行われ、キャストの加藤雅也、中村ゆり、松本利夫(EXILE)、カトウシンスケ、若旦那、和泉聖治監督、そしてサプライズゲストとしてプロデューサー・中野英雄、脚本・小澤和義が登壇した。

主演の加藤は「今から1年ほど前の猛暑の中で撮影した映画で、このようにお披露目できる日が来たことを光栄に思います」と嬉しそうな様子。紅一点の中村は「見た目はちょっといかつくて怖いお兄さんに囲まれながらの撮影になりましたが、皆さんが少年のように映画を作っている姿を見て、この映画同様にロマンを持って生きるって素敵だなと感じました」とユーモア交じりに報告した。そんな中村を加藤は「監督が『ヒロインは中村さんしかいない』と言っていたけれど、初めて中村さんとお会いした時に本当に透明な方で…。監督の言っている意味がわかりました」と絶賛。それに中村は「ありがとうございます」と照れつつ「加藤雅也さんはダビデ像みたいに美しくて、クールな方なのかと思ったけれど、近所のお兄さんみたいに気さくな方でした」とイメージとは裏腹の加藤の人柄を告白した。

松本は「実は最初と最後のシーンが僕なんです。いいポジションをいただきました。その辺も観てください」とニヤリ。若旦那は「役をもらった時にオーダーされたのは、食べ方を汚くするということ。でもその食べ方から僕の中で映画が始まった気がします。ただそれが豚足で…。手づかみで食べたので匂いが二週間くらいとれなくて困りました」と熱演報告。一方、カトウは「真っ直ぐに兄貴を慕う役どころで、撮影中は慕える兄貴の背中があったのでやりやすかった。すべて兄貴にお任せする感じでした」と大先輩の胸を借りたよう。それに加藤が「上手いことを言うなぁ~」と感心すると、すかさず「嘘です!怖い先輩方ばかりで肩身の狭い現場でした!」とジョークで笑わせた。そして和泉監督は「平成最後の夏、本当に暑い夏で僕らも熱かった。限りなくフィルムノワールに近いハードボイルド映画です。俳優さんたちの汗の量も凄いです。みんな汗だくでした」と漢たちの現場を回想した。

本作でプロデュース業に初挑戦した俳優・中野英雄と脚本担当の小澤和義も壇上にサプライズ登場。中野は「初めてのプロデュースで右も左もわからなかったけれど、今日という日を迎えることができて最高です」と満面の笑み。小澤は準備稿が17稿にも及んだことに触れつつ「中野英雄のプレッシャーと監督のプレッシャーが凄かった」と激闘を口にした。

最後に、加藤は「日本ではハードボイルドやフィルムノワールの映画を作るのが難しくなっている。その中で今回のような作品が完成したのは嬉しい。このような映画がもっと支持されて、もっと作っていきたいという思いがある。多くの人に観ていただき、宣伝していただきたい」と熱い想いを語った。

『影に抱かれて眠れ』
9月6日(金)より、丸の内TOEI2、横浜ブルク13ほか全国順次公開
監督:和泉聖治
原作:北方謙三「抱影」(講談社文庫刊)
脚本:小澤和義
主題歌:クレイジーケンバンド「場末の天使」(ダブルジョイ インターナショナル/ユニバーサル シグマ)
出演:加藤雅也 中村ゆり 松本利夫 カトウシンスケ 熊切あさ美 若旦那 余貴美子 火野正平 AK-69
配給:BS-TBS

【ストーリー】 硲(はざま)冬樹(加藤雅也)は、横浜でいくつかの酒場を経営する画家。毎晩のように自転車で店を巡回し、したたかに飲む。一方、画家としての才能は内外に名を知られる存在でもあった。そんな冬樹の平凡な日常が狂い始める。ある日、冬樹を兄貴と慕う岩井信治(カトウシンスケ)が傷を負って冬樹のもとに転がり込んできた。信治は、冬樹の店を辞めた後NPOの慈善団体、“碧(みどり)の会”の一員となって、横浜の街の闇に飲み込まれた女の子たちを救い出す活動をしていた。一人の未成年の女子を救うために窮地に追い込まれていた信治に冬樹は手を貸してしまう。そんな冬樹を守ろうとする店のバーテンダー辻村(松本利夫)。男たちの抗争に巻き込まれようとする中、冬樹は純愛を貫く人妻・永井響子(中村ゆり)の余命を知らされ、響子への愛を絵に描き写したいという思いが込み上げる。仲間を守るため、愛を貫くため、冬樹が下した決断とは。冬樹の周辺の人間模様が複雑に交差するなか、果たして冬樹の人生はどんな終着点を迎えるのか…。

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