井手麻渡、師匠・仲代達矢に「『よく頑張った』と言われたのが誇り」『ある町の高い煙突』初日舞台挨拶レポート

命をかけて日立鉱山の煙害と闘った若者たちの実話を描く、昭和の文豪・新田次郎による小説の映画化となる『ある町の高い煙突』が、6月22日に全国公開初日を迎えた。それを記念して、同日に有楽町スバル座にて初日舞台挨拶が行われ、井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、城之内正明、松村克弥監督が登壇した。

この日はあいにくの雨模様となったが、劇場は大勢の観客で満員。主人公・関根三郎を演じる井手はやや緊張気味に「本日はお忙しい中、劇場まで足を運んでいただいてありがとうございます。朝早くから並んでいただいた方もいらっしゃったみたいで、本当にありがとうございます」とあいさつした。続けて日立鉱山で煙害補償を行う加屋淳平を演じた渡辺は、「こういう作品に似合うような、しっとりした天気だなと。いい意味で捉えています。短い時間ですが、皆さんとお話ができたらなと思います」と笑顔を見せた。

三郎と心を通わせる加屋の妹・千穂を演じた小島が「今日は朝早くからたくさんの方が集まっていただいてうれしいです。昨年の夏、暑い中、皆さんと頑張って撮った作品が形となって。皆さんのもとに届くことがすごくうれしいです」と続けると、村民の孫作を演じた城之内も「ステージから見ても、お客さまがこんなにもたくさん入ってくださっていて。本当にうれしいなと思います」と晴れやかな表情。城之内自身、茨城出身だということで、「茨城の日立で先行上映をやったんですけど、すぐに席が完売して。日立の人たちの興味、団結力はすごいんだなと思いました」と改めて感じることも多かったようだ。

松村監督は「ここ有楽町スバル座は、子どもの頃から来ていて。憧れの劇場でした。このステージに立つことが出来て。しかも満席で。本当にうれしいです」と感無量な様子を見せた。

井手は、名優・仲代達矢が主宰する無名塾に所属する若手俳優。劇中では、師匠とあおぐ仲代との共演シーンもあったが、「とても緊張しました。普段、一緒にお芝居をさせていただいていますが、無名塾の外でご一緒させていただく機会をいただいて感謝しております」とコメント。さらに「仲代さんからはどのような言葉が?」と尋ねられると、「よく頑張った、とおっしゃっていただいて。誇りに思っております」とまっすぐなまなざしで
付け加えた。

客席に子どもたちの姿を見つけた渡辺が「今日、うれしかったのがいろんな客層の方々が観てくださったということ。子どもも来てくれてうれしいです。なんでかというと、おそらく僕たちの世代もそうなんですけど、あまり煙突というものに触れたことがないからなんです。町からだんだんと煙突が消えていっていますが、でもこういう作品を観た後ならば、例えばおじいちゃんおばあちゃんから孫へという具合に、話が語り継がれていくと思うんです。そういう役割をこの作品が担っていると思います。映画というのはそういうもので、僕もけっこう昔の作品をやるんですが、そういう時に、祖父母から話を聞いたりしました。そういう架け橋になる作品になればいいなと思います」と会場に呼びかけた。

そして井手が「初めて映画に主演させていただきまして。撮影現場の中心にいて、スタッフがひとつひとつ丁寧に、煙突を作るように一個一個積み上げていって、作品を作っているんだなということを実感いたしました。今日改めて思いましたが、作品というものはお客さんが入って、観ていただくことで完成するんだなということを実感するとともに、皆さまに感謝しております」と晴れやかな表情を見せた。

最後に松村監督が「僕は茨城を舞台とした映画をいろいろと作ってきました。今回も茨城が舞台ではあるんですけど、100年前にエコロジーを成し遂げた、奇跡の物語でした。これは現代にも通じる映画だと思います。これから国内だけでなく、世界にも発信していきたいと思いますので、よろしくお願いします」と決意を語った。

『ある町の高い煙突』
6月14日(金)より、茨城県(ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくば)にて先行公開
6月22日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
監督・脚本:松村克弥
原作:新田次郎「ある町の高い煙突」(文春文庫刊)
脚本:渡辺善則
出演:井手麻渡 渡辺大 小島梨里杏 吉川晃司 仲代達矢 大和田伸也 小林綾子 渡辺裕之 六平直政 伊嵜充則 石井正則 螢雪次朗 斎藤洋介 遠山景織子 篠原篤 城之内正明 大和田健介 たくみ稜
ナレーション:阿川佐和子
配給:エレファントハウス Kムーブ

【ストーリー】 1910年、茨城県久慈郡入四間の裕福な地主の家に生まれ育った関根三郎(井手麻渡)はある日、隣村の日立鉱山による煙害が発生しているという話を耳にする。村の権力者である三郎の祖父・兵馬(仲代達矢)は事態を重く見て、分家の恒吉を連れて鉱山会社へ掛け合いに行くが、「補償はするが煙害は我慢してくれ」と一方的。受験を控えた三郎を心配した兵馬はある夜、30年前に村長として採掘権を許可したのは自分だと告げ、その5日後に亡くなってしまう。三郎は祖父の遺志を継ぎ、進学も外交官になる夢も捨てて、煙害と闘うことを決意する…。JXTGグループ、日立製作所、日産自動車など春光グループの源流である日立鉱山(現・JX金属)におけるCSR(企業の社会的責任)の原点となった物語。

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