井手麻渡、渡辺大らが登壇!『ある町の高い煙突』茨城・先行公開 舞台挨拶レポート

命をかけて日立鉱山の煙害と闘った若者たちの実話を描く、昭和の文豪・新田次郎による小説の映画化となる『ある町の高い煙突』が、6月14日より茨城県にて先行公開、6月22日より全国公開となる。このほど、6月15日に、先行公開された茨城県のユナイテッド・シネマ水戸にて舞台挨拶が行われ、主演の井手麻渡、渡辺大、城之内正明、松村克弥監督が登壇した。

本作で映画初主演を果たした井手は「毎日、現場の中心にいさせていただき、役者として今までにない経験をさせていただきました。監督、大さん、城之内さんをはじめ、みなさんに助けていただき何とか乗り切ることができましたし、地元・茨城のみなさん、ボランティアで協力してくださったみなさん、誰一人が欠けても、この映画はできなかったと思います」と感謝の思いを口にした。渡辺は劇中、ゲートルを巻いているが、20代前半で映画『男たちの大和/YAMATO』で年少兵を演じた頃を思い出したそうで「懐かしかったです」と、しみじみ。「僕も初めて主演を務めたのは24歳くらいの時。井手くんがこうやって主演をしていて、それを支えられる立場になったのかと思うと、無駄に歳をとったわけじゃないと証明できたのかな。今年で34歳ですが、そういう役回りになったんだな…」と感慨深げだった。劇中、吉川晃司が演じる鉱山の社主・木原と対峙する場面があるが、渡辺は「吉川さんは、セリフはあまりないけど、少ない言葉でドスンと攻めてくる。井手くんとタッグを組んで、迫力に負けないようにとガンガン攻めましたが、緊張しました」と振り返った。城之内が演じた孫作は劇中、井手演じる三郎と激しい格闘を繰り広げたかと思えば、渡辺演じる加屋には銃を突きつけるシーンも。「悪いことばっかりしてますね」と苦笑し「三郎とのシーンは(拳が)当たっているように見えず、5~6回、撮り直したんですが、最後の1回で実際に当たってしまって…」と申し訳なさそうに懺悔。井手が「まだお詫びをいただいてないですが…(笑)」とまぜっかえし、会場は笑いに包まれた。

また、公害問題や男たちの友情といった部分に加え、映画では、三郎と加屋の妹・千穂(小島梨里杏)との淡い恋模様も描かれている。このシーンについて、井手は「僕の撮影の初日が浴衣でのデートシーンで、クランクインで緊張していたんですが、僕の緊張と三郎の緊張がマッチしていればいいなと思っていました」と述懐した。松村監督は、三郎と千穂の海辺でのシーンについても言及。原作者・新田次郎の息子で「国家の品格」などのベストセラーでも知られる藤原正彦が、映画を見て「素晴らしい」とこのシーンを絶賛していたと明かし、井手は照れくさそうに笑みを浮かべていた。昭和38年生まれの松村監督は、幼い頃から東京で大気汚染などの公害を体験しており「新田さんが原作を書いたのも昭和40年代。新田さんは『日本は世界一の公害大国だ』と語り、そのアンチテーゼを込めて。100年前に公害を克服した人たちの勇気と愛を描いたんですが、これがフィクションではなく、実話だということが本当にすごいことだと思います」と熱く語った。

締めの挨拶では、井手は「映画で僕と加屋さんは、直で対話していきます。いま、直接話し合い、ぶつかり合って解決するということが希薄な現代において、メッセージ性の強い映画になっていると思います」と呼びかけた。渡辺は「村民とのやり取りで『この煙突を建ててくれたら100年、忘れることはないでしょう』というやりとりが出てきますが、それからちょうど100年が経ってこの作品ができました。100年以上経っても忘れられない物語になっていると思います」と胸を張り、城之内は「1993年に煙突が倒れて3分の1の高さになってしまい、若い世代はもう煙突のことを知らないかもしれません。知らない世代も、156メートルの煙突を知っている人たちも、全員でこの映画を発信していただけたら」と呼びかけた。そして、松村監督は「この煙突は日立であり、茨城、いや、日本の誇りだと思います。その素晴らしさをこの映画で全国、世界に広めたいし、世界の映画祭も目指したいと思います」と力強く語り、会場は温かい拍手に包まれた。

『ある町の高い煙突』
6月14日(金)より、茨城県(ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくば)にて先行公開
6月22日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
監督・脚本:松村克弥
原作:新田次郎「ある町の高い煙突」(文春文庫刊)
脚本:渡辺善則
出演:井手麻渡 渡辺大 小島梨里杏 吉川晃司 仲代達矢 大和田伸也 小林綾子 渡辺裕之 六平直政 伊嵜充則 石井正則 螢雪次朗 斎藤洋介 遠山景織子 篠原篤 城之内正明 大和田健介 たくみ稜
ナレーション:阿川佐和子
配給:エレファントハウス Kムーブ

【ストーリー】 1910年、茨城県久慈郡入四間の裕福な地主の家に生まれ育った関根三郎(井手麻渡)はある日、隣村の日立鉱山による煙害が発生しているという話を耳にする。村の権力者である三郎の祖父・兵馬(仲代達矢)は事態を重く見て、分家の恒吉を連れて鉱山会社へ掛け合いに行くが、「補償はするが煙害は我慢してくれ」と一方的。受験を控えた三郎を心配した兵馬はある夜、30年前に村長として採掘権を許可したのは自分だと告げ、その5日後に亡くなってしまう。三郎は祖父の遺志を継ぎ、進学も外交官になる夢も捨てて、煙害と闘うことを決意する…。JXTGグループ、日立製作所、日産自動車など春光グループの源流である日立鉱山(現・JX金属)におけるCSR(企業の社会的責任)の原点となった物語。

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