倍賞千恵子「本当の藤さんは優しく素敵なお父さん」『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』初日舞台挨拶レポート

西炯子の人気漫画「お父さん、チビがいなくなりました」を、倍賞千恵子、藤竜也、市川実日子共演で映画化した『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』が5月10日に公開初日を迎え、同日に新宿ピカデリーにて初日舞台挨拶が行われ、主演の倍賞千恵子、藤竜也、共演の市川実日子、小市慢太郎、西田尚美、小林聖太郎監督が登壇した。

熟年離婚を決意する妻・有喜子役の倍賞は「藤さんとは29年前にテレビドラマで夫婦をやらせてもらって、本作で再び夫婦をやらせてもらいました。無口で頑固なお父さんですが、本当の藤さんは優しく素敵なお父さんです」とニッコリ。藤が演じる亭主関白な夫・勝の靴下を有喜子が脱がして拾うというシーンでは「なかなか私が上手くいかず、何度もテストをしました。でも実生活ではあんな風になるのはイヤね~」と笑わせた。

有喜子の夫・勝役の藤は「私も50年くらい亭主稼業をやっているけれど、夫婦とは子供とは違って紙切れ一枚で赤の他人になってしまう。この映画を通して改めて考えてゾッとしました。夫婦の絆はぜい弱。油断は禁物です」と襟を正し、「(藤の妻には)俺はあんたを失いたくない、という気持ちでいます。でも普段から無口なところは役と似ているかなぁ」と照れた表情をみせた。すかさず倍賞は「藤さんは奥様に優しい。いつも“ありがとう”と仰っていて、とても素敵。私も見習わなければと思った」と愛妻ぶりを明かしていた。

次女・菜穂子役の市川は劇中の母娘像に「羨ましい親子関係」と目を細めて、「お母さんが私のトレーナーを着て“似合う?”とおどけたポーズをとるシーンが好き。関係性が表れていると思った」と見どころを挙げた。すると倍賞は「あのシーンではつい踊ってしまいました。彼女と芝居をすると自然とそういう形になる。彼女からアドバイスをもらってやってみたら、すごく上手くいった」と感謝。まさかの言葉に当の市川は「ウソッ!そんなこと私言いましたか!?」と恐縮しきりだった。

長男・雅樹役の小市は、親子水入らずですき焼きをつつくシーンをお気に入りに挙げると、長女・祥子役の西田は「短い撮影だったのに、本当の家族のような気分になった。炬燵とあの部屋の居心地が良くて。打ち上げで皆さんと再会した時は本当に“家族に再会”という感じがあった」と絆を実感。小市も「倍賞さんと藤さんがしっかり母親、父親として存在してくれたからこそ、実家感があったと思う」と敬意を込めた。

夫婦の関係に波風を起こす志津子を、昨年5月に亡くなった星由里子が演じている。倍賞&藤とは初共演。死去に倍賞は「物凄くビックリしました。撮影中もそんなことになるとは思わず…」と残念そうに語り、「撮影中はきちんと背筋を正して、折々に鏡を見たり、メイクさんにも優しくて、スターとはこうあるべきだと思わされた。お芝居をやっても噛み合うし、セリフが立ち上がっていく感じがありましたね」と人柄をしのんだ。藤も「若大将の星さんだ!と、大スターとご一緒するときはミーハーになります」と憧れの存在との初共演を喜び、「星さんの『何をそんなにカッコつけているの』というセリフは胸にきました。キャリアからくる重さを感じました」と尊敬しきり。小林監督も「体調不良ということで打ち上げには欠席されましたが、打ち上げ中にわざわざお電話をいただきました。だから“まさか…”という気持ち。まだ実感がありません」と沈痛な思いを吐露した。

最後の写真撮影では母の日にちなんで、黒猫のチビをイメージしたぬいぐるみを囲んだカーネーション入りのフラワーボックスとチビ役のりんごも登場。武井家キャストが全員揃った形で、笑顔満開で締めくくられた。

『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』
5月10日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:小林聖太郎
原作:西炯子「お父さん、チビがいなくなりました」(小学館フラワーコミックスα刊)
脚本:本調有香
出演:倍賞千恵子 藤竜也 市川実日子 佐藤流司 小林且弥 優希美青 濱田和馬 吉川友 小市慢太郎 西田尚美 星由里子
配給:クロックワークス

【ストーリー】 3人の子供が巣立ち、人生の晩年を夫婦ふたりと猫一匹で暮らしている勝(藤竜也)と有喜子(倍賞千恵子)。勝は無口、頑固、家では何もしないという絵にかいたような昭和の男。そんな勝の世話を焼く有喜子の話し相手は猫のチビだ。ある日有喜子は娘に「お父さんと別れようと思っている」と告げる。驚き、その真意を探ろうと子供たちは大騒ぎ。そんな時、有喜子の心の拠り所だった猫のチビが姿を消してしまい…妻はなぜ、離婚を言い出したのか。そして、妻の本当の気持ちを知った夫が伝える言葉とは―。

©2019西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会