目の見えない姉弟とその家族の20年間の記録 テレビ静岡制作のドキュメンタリー映画『イーちゃんの白い杖』6月公開!

テレビ静岡開局50周年を記念して、2018年11月に静岡県内3映画館で同時公開された、目の見えない姉弟とその家族の20年間を記録したドキュメンタリー『イーちゃんの白い杖』が、6月より東京・ポレポレ東中野にて公開されることが決定した。

本作は、生まれつき目が見えない“イーちゃん”こと小長谷唯織(こながやいおり)と重度の障がいを持つ2歳下の弟・息吹(いぶき)、そして二人を支える家族の20年を追ったドキュメンタリー。テレビ放送されたドキュメンタリー番組、1999年「イーちゃんの白い杖-100年目の盲学校」(8回FNSドキュメンタリー大賞特別賞)、2010年「いおりといぶき-私たちが生まれた意味」(19回FNSドキュメンタリー大賞優秀賞、世界子どもの権利賞グランプリ)を、2016年に起きた、大勢の重度障がい者が被害を受けた神奈川県相模原市の殺傷事件をきっかけに映画化した。

ナレーションを務めるのは、「笑点」の6代目司会者として知られる、静岡市出身の春風亭昇太。音楽は、ロックバンド「DATSUN320」のボーカルやCMソングライターとしても活躍している、富士市出身の川口カズヒロが担当。監督は、テレビ静岡で数多くのドキュメンタリー番組を手掛けた橋本真理子が務める。

静岡県内3館での上映は、当初は2週間の予定だったが、連日観客が絶えず、1館は6日、1館は2週間続映となった。映画館の副支配人は「上映後、自然と拍手が沸き起こる映画は、年に1本あるかないかです」とコメントしており、その後も映画館のない街のホールや保育士・教師を目指す学生を対象にした講義、中高一貫校、病院などから「自主上映会を開きたい」と申し込みが相次いでいる。

■春風亭昇太(語り) コメント
この映画は、障がいというより家族・兄弟とは何かを改めて考えさせられました。特に姉弟のシーンはダメです。自宅で映画映像を見た時からダメで、そのうち慣れるかと思いましたが慣れませんでした。ナレーションを収録している間も、そのシーンが来ると見ないようにしていました。抱えるものは人それぞれ違いますが、障がいがあろうがなかろうが、根底は変わりません。いま、核家族化で離れて暮らしている方も多いと思いますが、家族のありがたさ、つながりをこの映画で感じてもらえたらうれしいです。唯織と息吹、2人には、あまり頑張らないで、これからを楽しく生きていってほしいと心から思います。とても素敵なドキュメンタリー映画に仕上がっていますので是非、劇場に足を運んで下さい。私の声も意外と素敵です!

■川口カズヒロ(音楽) コメント
目の不自由な姉弟のドキュメンタリー映画に歌を書く。プレッシャーもありましたが、イーちゃんと橋本監督が歌をとても気に入ってくれて、作って良かったと心から思っています。漠然と前向きな詞や応援歌は、私が健常者である以上、同情や上から目線に聞こえかねないと思い、主人公の強さや自分の弱さと向き合いながら作りました。主題歌「I―あい―」は主人公「いおり」「いぶき」「生きる」「意味」の頭文字、「私」「目(eye)」「愛」…この映画の最大のテーマを一文字で表せる言葉にしました。歌詞に出てくる数字の「1」に似ているのも理由です。そして、タイトルの「 」にも「守られている」「1人ではない」という意味を込めました。映画の意味が心に届く―私の音楽がその道標になれたら本望です!

■橋本真理子監督 コメント
障がい者にカメラを向けることがタブーとされていた20年前。盲学校100周年のニュース取材中、目の前を駆け抜けたのがイーちゃんです。「この子は感性が違う」と直感し、同時に弟が重度の障がい児だと知ります。本当は1回目の番組で終わるはずでした。でも、唯織と息吹はこの先どう生きるのか、生きやすい社会になるのか心配でした。障がい児・医療的ケアが必要な子たちの教育、障がい者雇用、旧優生保護法。正直この20年で新たな課題も浮き彫りとなり、何が解決したのか、答えに苦しむのが現状です。更には、2016年、神奈川県相模原市で重度障がい者を狙った殺人事件が発生、許せませんでした。人は年をとれば目も悪くなり、歩くのも億劫になる…誰もが、障がい者になると私は思います。唯織も息吹も少し早かっただけ。2人が生きやすい社会は、私たち自身が生きやすい社会になるはずです。障がい者が隠れて生きる社会はやめにしたい。障がいがあろうがなかろうが、誰にも生まれてきた意味がある―この思いを伝えたくて映画にしました。

『イーちゃんの白い杖』
6月、東京・ポレポレ東中野にて公開 ※音声ガイド・字幕ガイド付き・UDCast対応
監督:橋本真理子
撮影:杉本真弓
音楽:川口カズヒロ(DATSUN320)
語り:春風亭昇太
配給:テレビ静岡

【作品概要】 生まれつき目が見えないイーちゃん。本名小長谷唯織(こながやいおり)さんは20年前、県立静岡盲学校で白い杖の使い方や点字など、視覚障がい者として生きる基本を学んでいた。触って、なめて、においを嗅いで。目が見えない世界は想像を超える発見があった。だが成長するにつれ「なぜ自分だけ違うのか」不思議に思うようになる。そして、大勢友達がいた地元の保育園とは違い、同級生がいないさみしさを実感する。障がいを持った者同士、分かり合えると信じ、中学生になったイーちゃんは、東京の盲学校へ進学した。しかし、ここで経験したのは、いじめ。大好きなピアノで気持ちを整理しようとするが、心が追いつかなかった。「現実から逃げないでほしい」と厳しく接する母。ピアニスト、歌手、作家…夢も破れ、何もかも嫌になった。障がいがあろうがなかろうが悩みは同じだ。「学校にいても家にいてもつらい」「死にたい」とも考えた。でも―そばにはいつも2歳下の弟・息吹(いぶき)がいた。重度の障がいで、食べることも歩くこともトイレにもいけない弟。入退院を繰り返し、手術を何度経験しても前に進む弟。イーちゃんは、自分の甘さに気づき、自殺を踏み止まる。「私の弟だから強いんだ!」障がい者が生き、働く。壁はいくつも乗り越えなければならない―しかし、乗り越えようとする強さがあれば、必ず幸せはやってくる。